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Channel: 玉ホラ日記
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映画『バレー・オブ・バイオレンス』~荒野のヘソマガリ

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原題 "IN A VALLEY OF VIOLENCE"イメージ 1
製作年度 2016年
製作国 アメリカ
製作 ブラムハウス・プロダクションズ
リリース 2017年4月21日
上映時間 104分

監督、脚本、編集、製作 タイ・ウェスト
製作総指揮 ジャネット・ブリル
    デヴィッド・L・シフ
    アレックス・テイラー
製作 ジェイソン・ブラム
    ジェイコブ・ジャフケ
    ピーター・フォク
撮影 エリック・ロビンス
音楽 ジェフ・グレース
配役 テリー・テイラー
美術 ジェイド・ヒーリー
衣装 マルゴシア・タザンスカ
出演
イーサン・ホーク:ポール
ジョン・トラヴォルタ:保安官
タイッサ・ファーミガ:メリーアン
ジェームズ・ランソン:ギリー
カレン・ギラン:エレンイメージ 2
トビー・ハス:ハリス
トミー・ノヒリー:タビー
ラリー・フェセンデン:ロイ
バーン・ゴーマン:神父

鑑賞 2017年8月18日
DVD 字幕
発売元 NBCユニバーサル・エンターテインメント・ジャパン
★★★★☆

タイ・ウェストと言えば
「帝王」イーライ・ロスもその才能に
ゾッコン惚れ込んだホラー界の逸材だけど、
この新作はなんと西部劇。
ウェストだけにウェスタン…とか、
まさかね(笑)こやつに限ってそんな
オヤジギャグをカマすはずがないわけで。

業界筋からの高評価の一方で、
この人の映画は「おそろしく退屈。」
そんな声が多いのもまた事実。
『インキーパーズ』は古ぼけたホテルを
舞台にした趣深いゴシックホラーでだったが、
ランタイム100分のうちラスト10分あたりイメージ 3
までほぼ何も起こらないというなんとも
豪気な作りであった。そしてこれは決して
やらかしてしまったわけではなく、
本人曰く「非日常というのはある時突然に
やってくる。僕らはそれを予測できないし、
起きてしまったら止めることはできない。
その落差を描きたかったんだよ」
言われてみれば分からないこともないし
面白いとも思うけど、そんなのが
考えナシにお化け屋敷のホラーを観に来た
人間にどれだけ通じるんだという話だ。
それからウィンガードの『サプライズ』に
友情出演をした時のウェストは「妙にイケ
好かない自称映像作家」という役どころ
だったけども、これが必ずしもネタとも言い
切れないスタイルをこの人は持っている。
「低俗でお決まりのホラーなんか期待しな
いでくれよな。まあ、ぼくのファンなら
分かってくれてるはずだけど。」
こんなことを平気で言う。イメージ 4
要はヘソマガリなのだ。

そんなヘソマガリが撮ったウエスタン。
『情無用のジャンゴ』とか『エル・トポ』
みたいのを狙ってんのかと思いきや、
冒頭から『夕陽のガンマン』オマージュに
モリコーネ調のスコア。
バリバリのマカロニなのだ。
まず、マカロニも元々は邪道だしね。
ウェスト監督、ホントはこういう雑なのも
好きだったのねと勝手に同胞気分。
イーサン・ホークのニヒルな佇まいが
心なしイーストウッドにカブって見える。

「暴虐の谷」にぶらりと現れた一人の男。
「よう、はぐれもん」
絡んでくる荒くれ者をはじめは相手に
しないでいたが、ゲスな輩にそんな態度がイメージ 5
癇に障らぬはずもなく、そしてこういった
手合いはとにかくしつこい。
「ケンカは相手を見て売るこった」
いったんはあっさりブチのめすが、
実はこのゲスというのが保安官のバカ息子。
そのまま大人しく引き下がるはずもなく、
夜中に不意打ちを仕掛けて、あろうことか
はぐれ者の愛犬を嬲り殺しにしてしまう。

……なんかこんな話最近もあったような。
そう、『ジョン・ウィック』。
どこぞのものとも知れないハグレ者が
実は殺人マシンでした。
『ジョン・ウィック』もワンコロ一匹
殺されて鬼と化したキアヌのヤリスギっ
ぷりが絶妙なユーモアになっていたが、
本作のイーサンにも同じ空気を感じる。
カッコいいんだけど、どこかヘンなのだ。
ズレてると言うか、偏ってると言うか。
決してボケてるんじゃないんだけど、
いまいち意思が伝わってない。
そして主人公だけじゃなく、登場人物
みんながこんな調子。
荒くれ者たちの怒りのツボとか
いちいち「え、そこ?」という感じだし、
女達のカン違いっぷりは公害レベル。イメージ 6
「うちの姉さん、バカなのよ!」
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
のネビュラ役、カレン・ギランの
迫真のバカっぷりには目を見張った。
トドメはトラボルタの悪徳保安官。
言ってることはいちいち全うなのに、
さっぱり伝わらずに蜂の巣にされてしまう。
変化球でマニアックなオマージュマカロニ
と思わせといて、ウェスト監督の狙いは
むしろコレかと。
「いや、だからそうじゃなくて(苦笑)」
どうも相手の言ってることが分からない。
言いたいことが分かってもらえない。
そんなもどかしい思いは実際の日常生活
にもままあることだが、これをあるある的に
紡いだ、なんともテンション低めなコメディ
と言える。
そしてこうしたコミュニケーションの阻害がイメージ 7
マカロニの荒涼とした空気にしっかり合って
いたりする。
やっぱりウェスト監督、タチが悪いなあ。
相変わらずヘソが曲がってると思うよ本当。

結局あの可愛らしくて芸達者なワンコだけが、主人公の気持ちを理解し、まっすぐに
愛を示す存在だった。
かく言う自分もヘソマガリだけど、
ウェスト監督の言いたいことは
それなりに分かってると思うんだけど、
どんなもんだろう。…え、ぜんぜん違う??

映画『人魚姫』~チャイニーズ・マーメイド・ストーリー

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原題 "美人魚"
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英題 "THE MERMAID"
製作年度 2016年
製作国 中国、香港
製作 アルファ・ピクチャーズ
    チャイナ・フィルムズ
    スター・オーバーシーズ他
製作予算 $60,000,000
国内配給 ツイン
日本公開 2017年1月7日
上映時間 94分

監督、脚本、製作 チャウ・シンチー
脚本 ケルビン・リー
    ホー・ミョウキ他
製作総指揮 ラ・ペイカン
製作 Y・Y・コン
    アリス・チャウ
    ビル・ボーデン他
撮影 チョイ・スンファイ
音楽 レイモンド・ウォン
    ウェンディ・チェン   
出演
ダン・チャオ:リウ
リン・ユン:シャンシャンイメージ 2
キティ・チャン:ルオラン
ショウ・ルオ:タコ兄
ツイ・ハーク:リッチ伯父さん
ジェン・ジーン:ジェン社長
ファン・シュージュン:人魚の長老
クリス・ウー:ロン

鑑賞 2017年8月22日
blu-ray 字幕(発売元:ツイン)
★★★★☆

チャウ・シンチーはアホである。
いや、言い直す。
チャウ・シンチーの映画がアホなのだ。
この人の映画は基本コメディ‐喜劇と言って
いいと思うのだけど、その笑わし方というの
が素晴らしく下らない。
臆面もない大ホラに変顔、ズッコケ、ダジャレ、
物ボケ、モノマネ、おっぱい、ちんこ、うんこ、
ハッキリ言ってどこの小学生かというレベル
である。
なのでウンザリしてしまう人も当然いると
思う。前に『少林サッカー』のDVDを後輩に
貸したら、奴は次の日にやや怒気を含んだ
様子でイメージ 3返して来た。
けば、序盤のスリラーダンスのあたりで
イヤになって停止ボタンを押したらしい。
「なんですかアレ、ふざけてんですか?」
そう、ふざけてるのだ。
ふざけて、バカになって、
とにもかくにも客を笑かそうとしてるのだ。
ふざけてるけども、手は抜いてない。
メイキング等で出演者が言うところには、
チャウ・シンチーの演出はとにかく厳しい。
コンマ数秒単位のタイミングを演者に要求し、
納得の行くまで「キューブリック並み」に
テイクを重ねるんだとか。イメージ 4
本気なのだ。
そしてやっぱり一流のプロなのだ。

甚だ私見ながら、人を感動させたり泣か
せるのはそんなに難しくない。
ビビらせたり、怒らせるのはもっと簡単。
笑わせるのが一番難しい。
笑いというのは最も人間が満たされた時に
生まれる感情だからだ。
そしてそれは誰かと繋がったことへの喜び、イメージ 5
そして安心である。だから共通項が少ない
相手には伝わりにくい。言葉やお国柄は
もちろんのこと、演者と観客の間に隔たりが
あるほど、笑わせるのは難しい。
人それぞれとは言うものの、
できるだけ多くの人を、腹の底から笑わせる。
それがチャウ・シンチーの志向する笑いなの
だと思う。

ちゃんとした笑いは人を素直にする。
常識や偏見でカチコチになった心を柔らかくイメージ 6
してくれる。
そこに自分たちが忘れていた
「本当に大事なこと」を改めて教えてくれる
のも優れた喜劇人のなせる技。
「環境問題」なんて何を今更なメッセージを、
笑って笑って、最後はホロリとして、
「水が綺麗じゃなければ、意味がない。」
全然押しつけやイヤミなしに受け入れてし
まう。
やっぱり、チャウ・シンチーは素晴らしい。

映画『シーボーグ』~宇宙から来たクソビッチ

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原題 "SHEBORG MASSACRE"イメージ 1

製作年度 2016年
製作国 オーストラリア
製作 ストロングマン・ピクチャーズ
国内配給 ブロードメディア・スタジオ
日本公開 2017年1月17日
上映時間 90分

監督、脚本、編集
製作総指揮 ダニエル・アームストロング 
製作総指揮 アンソニー・モーラン
製作補 イヴァンナ・ジェイン
    トレント・シュワルツ他
撮影 ロム・アントニス
    ブレンダン・オシェア
音楽 キッドクラッシャー
美術 ダンテ・サピエンツァ
衣装 ディーター・バリー
    ルイーズ・モニントン他
特殊メイク ゾーイ・カラバトス
    アリ・ナップトン
VFX アレクサンダー・ポール・ウォード  
出演
ホイットニー・ダフ:ディランイメージ 2
デイジー・マスターマン:エディ
エマ・ルイーズ・ウィルソン:シーボーグ
トミー・ヘルファイア:サム
ルイーズ・モニントン:ヴェルマ
マーク・ウェントウィッスル:リック
ショーン・マッキンタイア:市長

鑑賞 2017年8月31日
DVD 字幕
(発売元:ポニーキャニオン)
★★☆☆☆

半分は女エイリアンで半分はロボット、
そしてその中身はクソビッチ。
その名はシーボーグ!
宇宙に死と破壊をもたらす厄介者として
銀河警察から死刑宣告を受けたが、
大暴れして脱出、乗り込んだポッドで
降り立ったのが地球だった。
「この場所にカオスを満たしてやろう。」

一方。地球のとある田舎町に暮らす
パンク娘の二人組‐ディランとエディ。
ディランは市長の一人娘で、ただ父に
反抗したい一心の「積木くずし」状態。
エディはファッション感覚でパンクに
興じるミーハー娘。
パトカーにスプレーで落書きをして
「革命だぜイエー!」とか喜んでる。

街はずれには「動物保護センター」というイメージ 3
怪しげな施設があって。
そこでは「保護」と言いながら、
可哀そうなワンコで惨い生体実験を行って
いるともっぱらの噂になっていた。
こんなの許せねえ!とでっかい声で言って
やるんだ。それがパンク魂ってもんだぜ。
ライブハウスでヘタレのバンドマンに誘われ、
二人は保護センターへと繰り出して行く。
果たしてその奥では、「シーボーグ」の
侵略が密かに進んでいたのであった―!

ヤケにハズレが多い今年の「未体験ゾーン」。
まずこの映画に関しては→のタイトルロゴで
察して下さいという感じなのだけど、
ハナから地雷を踏む気で手に取った次第。
このところこうした80年代テイストの
クズ風映画がちょいちょい見られるけども、
『マンボーグ』や『ターボキッド』と言った
それなりに技術もセンスもある才人が敢えて
ヘタウマ風に模したオマージュ作品とは違い、
こちらはガチの素人仕事。
芝居からカメラワーク、編集、アクション、
VFX(と言っていいものかどうか…)など
とにもかくにもクオリティが低すぎる。
パンク娘と女サイボーグのバトル!と聞くとイメージ 4
面白そうだが、どういうわけかみんな揃いも
揃って重心の低そうなぽっちゃり体形。
ほとんどプロレスごっこみたいなもったり
ノロノロのアクションは正直見るに堪えず。
こんなのに爆音のパンクナンバーを被せて、
ノリで行っちゃえ的な感じも痛々しい。ついでに言えばオマージュのセンスも今一つ。
この筋で相当のマニアならずとも、かなり
地雷慣れした人でないとキツイと思われる。

ただなんだろ。飽くまでも自分はなんだけど、イメージ 5
不思議と退屈はしなかった。
なんだか終始作り手が楽しんで撮っている
のが伝わってきて、つい8mmで自主映画
をやっていた学生時代を思い出してしまった。
ホントにヘタクソで自己満なんだけど、
映画づくりってすごく楽しいのだ。
見ているだけだったあの映画、この映画に
ほんのちょっとだけ近づくことができた悦び。
プロになる気なんか更々ないけど、
(否、少しはあったかもしれない)
大好きなものを自分、自分達の手で作ること。
シビれたシーンをマネするために、
なけなしの金をはたいて道具を買って、
何時間も何日もひたすら練習して、
でも結局は全然うまく出来なくて、
ああ。やっぱりヘタクソだなあ、なんて
自分達の才能のなさを思い知らされてイメージ 6
愕然としたりするけども、
それでも、この映画をはじめ世界中で作られ
続ける貧乏なファンムービーは教えてくれる。
映画づくりは楽しいのだ。


人にはあんまり見せらんないけどね。

映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』~ゾンビ特急"釜山"行き

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原題 "부산행"イメージ 1
英語題 "TRAIN TO BUSAN"

製作年度 2016年
製作国 大韓民国
製作 レッドペーパー・フィルムズ
    ネクスト・エンターテインメント
製作費 KRW10,000,000,000 
国内配給 ツイン
日本公開 2017年9月1日
上映時間 118分

監督、脚本 ヨン・サンホ
脚本 パク・ジュスク
製作総指揮 キム・ウテク
製作 イ・ドンハ
   キム・ユンホ
撮影 イ・ヒュンドク
音楽 チャン・ヨンギュ
編集 ヤン・チンモ
美術 イ・モクォン
衣装 コン・ヨジン
   リム・スンヘ
VFX チョン・ファンス他   
イメージ 2
コン・ユ:ソグ
キム・スアン:スアン
チョン・ユミ:ソンギョン
マ・ドンソク:サンファ
チェ・ウシク:ヨングク
アン・ソヒ:ジニ
キム・ウィソン:ヨンソク
チェ・グイファ:ホームレス

鑑賞 2017年9月1日
チネ・ラヴィータ 字幕
★★★★★

ずいぶん前から評判になっていた、
お隣韓国のゾンビ映画。
「韓国初」とは言うものの、
確か前にも『隣りのゾンビ』というのが
あったような(未見)。
「アイアムアヒーローに匹敵」とか言うから、
それはいくらなんでも盛りすぎと言うか、
また韓国さんのアツい対抗意識と言うか、
あのド傑作に敵うわけがないじゃないのと
タカをくくって観に行ったのだけど。

主人公のソグはファンドマネージャー。イメージ 3
仕事にかまけて家族はほったらかし。
嫁とは目下別居中。
娘のスアンはおばあちゃんに任せっぱなし。
先週の授業参観も行けなかった。
さすがに不憫に思わないでもない。
明日は娘の誕生日。Wiiを買って帰ったが、
箱を開けた娘は口ポカン。
「これ…こないだの連休に貰ったじゃない」
うわあ、最低。あげたことすら忘れてた。
「それよりもわたし、ママに会いたい。
明日だけ、ママのところに行きたいの」
とは言え、嫁は今プサンにいる。
仕事も忙しいんだけどなあ。
でも、分かった。仕事は休む!
ずっと寂しい思いをさせてきた罪滅ぼしに
娘をプサンへと連れて行くことにする。
ソウル発、プサン行きの新幹線。
その時街では謎の感染症が急速に拡がっ
ており、列車の中にも感染者の一人が乗り
込んでいた―

いや。コレまた驚いた。
『アイアムアヒーロー』については
「日本でこんな立派なゾンビ映画が作られた」
というお国贔屓が少なからずあったが、イメージ 4
これについてはまるっきり贔屓目なしに
素晴らしい、堂々のクオリティ。
ゴアゴア度は幾分低めだけども、
列車という密室内で繰り広げられる
感染パニック。その緊迫感、疾走感。
幾層にも分かれた客室ごとの構造や
横幅の狭さを生かしたアクション、
トンネルや駅舎などのシークエンスも
アイディア満載で終始飽きさせない。

そして新幹線の中なので当然たくさんの人が
乗っているのだけど、主要キャラの描きこみ
が思いのほかに素晴らしく。
主人公の父娘に、
ガチムチの輩風と大きなお腹を抱えたヨメ、
可愛らしい野球青年とマネージャ―女子、
いかにも韓国らしいオモニの姉妹、
めちゃめちゃ怪しいホームレスおやじに
お約束の私利私欲系クソオヤジ。
それぞれの喜怒哀楽をてんこ盛りにして、
観客の感情をガクガク揺さぶる力技は
まさに韓国映画ならでは。
殊に、寂しい目をした小さな女の子と
その様子に心を痛めるダメパパ。
ちょ、これって一番ダメなやつじゃん!イメージ 5
序盤の早々に気付いたのだけどもう遅い。
そうそう、そうなんだよねえ…(シンミリ)
ダメパパはこちとら五十男の共感のツボを
確実に押して行き、ストーリーが佳境に
入る前に既に涙腺は崩壊。
後半なんかほとんどずっと泣いてた気がする。

それでいてゾンビを単にハチの巣にされる
死体のバケモノなんかではなく、
「人間の腐ったなれの果て」
風刺と皮肉を交えて描いてあるのは
ロメロの精神を汲んだ「正統」の証。
他人のことなんか知ったこっちゃない。
自分だけが良ければいい。
現代人を蝕む醜い利己主義、それがゾンビだ。
そんな中、いつも人の世話ばっかり焼いて、
自分は年がら年中汗をかいて笑ってる―
うっとうしくてお節介な韓国オモニの姿が
しみじみ胸を打つ。
こんな風に、その地、その時代ならではの
背景が如実に現れるのもロメロ流。

ラスト。トンネルの向こうに銃口を向ける兵士。
" Good shot  "イメージ 6
あああ、そんなのやめてよう…
いつものロメロの語り口を知ってるだけに
本気で祈るような気持ちで見守っていたら、
まさかまさかの大反則!
全米ならぬ、全劇場が泣いた。いやマジで。
やっぱり、韓国映画はハンパじゃない。

全米最新映画ランキング 2017年9月1-4日

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BOX OFFICE TOP 10
weekend of September1-4, 2017イメージ 1


1. 『ヒットマンズ・ボディガード』
(3週目 週末興収$13.3M 総興収$58.0M)
ライアン・レイノルズ+サミュエル・L・ジャクソンのアクションコメディ。メンツだけ見るとすごく面白そうだけど、評価はそこそこ。

2. 『アナベル 死霊人形の誕生』
(4週目 週末興収$9.2M 総興収$90.9M)
なんだかんだ本家に迫るメガヒット。早く観たい!

3. 『ウィンド・リバー / WIND RIVER』
(5週目 週末興収$7.8M 総興収$20.3M)

4. 『フェリシーと夢のトウシューズ』
(2週目 週末興収$6.3M 総興収$12.8M)
おフランス製アニメーション。

5. 『ダンケルク』
(7週目 週末興収$5.6M 総興収$180.2M)

6. 『ローガン・ラッキー』
(3週目 週末興収$5.5M 総興収$22.5M)イメージ 2

スティーヴン・ソダーバーグ作品

7. 『スパイダーマン:ホームカミング』
(9週目 週末興収$4.7M 総興収$325.1M)

8.  "THE EMOJI MOVIE"
(6週目 週末興収$3.3M 興収計$81.1M)

9. 『怪盗グルーとミニオン大脱走』
(10週目 週末興収$3.3M 総興収$258.8M)

10.  『ガールズ・トリップ』
(7週目 週末興収$2.8M 総興収$112.1M)



ちなみに14位に『未知との遭遇(40周年アニバーサリー)』がランクイン。日本での公開はないんだろか。。。

映画『哭声 / コクソン』~國村隼にダマされるな!

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原題 "곡성(哭聲)"イメージ 1

英語題 "THE WAILING"
製作年度 2016年
製作国 大韓民国、アメリカ
製作 フォックス・インターナショナル
    アイバンホー・ピクチャーズ
    サイド・ミラー
国内配給 クロックワークス
日本公開 2017年3月11日
上映時間 156分

監督、脚本 ナ・ホンジン
製作総指揮 ジョン・ペノッティ
    ロバート・フリードランド
製作 ヒョン・スドン
    キム・ホサン
撮影 ホン・ギョンビョ
音楽 ダルパラン
    チャン・ヨンギュ
編集 キム・スンミン
美術 イ・フギュン
衣装 チェ・ギョンハ   
出演イメージ 2

クァク・ドウォン:ジョング
ファン・ジョンミン:イルグァン
チョン・ウヒ:ムヒョン
キム・ファニ:ヒョジン
ソン・カングク:ソンボク
キム・ドユン:イサム
國村隼:日本人

鑑賞 2017年9月8日
DVD 字幕(発売元:キングレコード)
★★★★★

『チェイサー』、『哀しき獣』で世界のド肝を抜
いた韓国の鬼才ナ・ホンジンひさびさの新作。

舞台は谷城(コクソン)なる韓国の田舎町。
ちなみに「コッソン」が正解で、ホンジン監督
が幼少期実際に暮らした町なんだそうな。
いつの頃か。そんな辺鄙な田舎町に
得体のしれない疫病が広がる。
身体中に焼けただれたような湿疹ができ、
精神に著しく異常をきたしイメージ 3
やがては周りの人間に襲い掛かる。
主人公はそんな田舎町に暮らす駐在さん。
臆病で、だらしなくて、正義感なんかミリも
ないダメ人間。周りの住民も似たり寄ったり。
のんきで、明るくて、人懐っこくて、
良くも悪くもすごく人間臭い人たち。
あっけらかんとした笑いを交えながら、
『ショーン・オブ・ザ・デッド』や
『ゾンビランド』のような
罪のないゾンビコメディの如くに序盤は進む。

が。その街はずれに、一人でひっそりと
暮らす日本人がいて。
その人こそが國村隼。
日本人から見てもえらく訳アリ気な人相な
のに、韓国人からしたらこんなのが近所に
いておっかなくないはずがない。
しかも人里離れた一軒家で真っ黒な大型犬
と暮らし、時折家の中から妙なお祈りが聞こ
えて来たりする。
近隣の娘さんが犯されたとか。
森の中でシカの生肉を食ってたとか。
誰が見たとも知れず、様々な噂が村中を
覆っていた。そして、
「疫病もあの日本人の仕業に違えねえ。」イメージ 4
いきり立った村人たちが斧や鍬を手に取り
日本人の家に押し込んで行くまで、
そう時間はかからなかった。

ナ・ホンジンの名を全世界に知らしめた
デビュー作『チェイサー』はいかにも
韓国映画らしい容赦のなさが際立った
バイオレンス映画であったが、それ以上に
見事な「怒りのエンターテインメント」で
あった。
「まさかそれはやらないよね…?」という
観客の良心を一つづつ丹念に踏みにじり、
ハラワタをとことん煮えくり返らせることで
「ああ、久しぶりにこんな怒ったよ!」
ある種倒錯的なカタルシスを生み出したん
である。
韓国の人たちはやたらとキレやすく、
また気が狂ったように喜んだと思えば
世界の終わりが来たみたいに泣き喚く。
甚だ勝手なイメージながら、そんな感情の
起伏が豊かな国民性ゆえか、あちらの映画
の作り手はとにかく観客の喜怒哀楽を操る
のに長けている。

ナ・ホンジンの前2作は所謂「サスペンス
映画」であり、怒涛の流れに観客を呑み込イメージ 5
んでしまうドライブ感が身上であったが、
今回は一転ゆったりとした展開。
一見現在ハリウッドを席巻する、パラノー
マル仕立てのオカルトホラーに迎合した
格好とも取れる。
が、それでいてその挑発的なスタンスには
一片の翳りも見られず、その持ち前の映画
腕力で観客の感情そのものを右往左往させ
てくる。
フリードキンの『エクソシスト』は言う
までもないオカルト映画の金字塔だが、
その実は悪魔そのものの恐怖を描いた
わけではなく、人間が何を以て邪悪と
感じるのかを巧みに操ってみせた
「心理スリラー」でもあった。

あなたが今見ているものは本当に悪魔なん
だろうか。なぜ、そう思ったのか?
あなたは「それ」を確かに見たのか?
誰かの受け売りや刷り込みじゃないのか?
勝手な思い込みや勘違いでそう見えてしま
っているだけじゃないのか?

劇中の愚かな人々だけじゃなく、
ナ・ホンジンはウソとも真とも分からない魔の
存在を画面に示し、私達観客を翻弄する。イメージ 6
ふんどし一丁で生肉を貪ったり、
滝に打たれて呪文を唱える國村隼は
確かに怪しくておっかないけど、
だからと言って果たして「悪魔」という
ことになるんだろうか?
増してや自分が見ている國村隼の映像が
本当に本物と言い切れるのか?
誰かの「妄想」を映像にして見せてるだけ
かもしれないのに…?

物語を追えば追うほどに混乱は増す一方。
なにが悪魔なのか。神なのか。
そもそもそんなものが本当にいるのか。
何を信じるべきなのかも分からなくなる。
真相は最後まで明らかにされない。
いや、真相などはじめからないのかも。
が、ラスト。見るに堪えない「真実」が
容赦なく私たちの前に突き付けられる。
ほんとお前ら、アホだよなあ(笑)
またもやナ・ホンジンという映画の悪魔に
してやられていたことに気付く。
ああ。まったくもって、腹が立つ。
シーバイセッキャー!!



(※ネタバレ)わしの解釈

監督の言う通り、主人公と一緒に観る人それぞれが迷い、疑い、解釈を施すべき作品かと。なので現時点での自分の解釈をここで試みることにする。また「いや、わしはこう思った!」という皆様の解釈を聞かせていただけるとこれ幸い。

・國村隼は悪魔なのか?

否。ただの日本人。民俗学かなんかの研究者で、学術的見地からコクソン古来のシャーマニズムに興味を持ちやって来た。居宅の一室に怪しい祭壇を設けて祈祷をしたりしているが、これも研究の一環であろうと思われる。感染症は無関係。ただやがて「実践的な」研究を進めるうちに、原因不明の悪疫を払うことができる、と勝手に思い込んでいたかもしれない。が、疑心暗鬼が高じて暴徒と化した地元民の襲撃から逃れる途中に崖から転落、更に車に跳ねられて死亡。その後に洞窟の奥で見習い神父が見た奇怪な姿は、復活した國村隼などではない。「あいつが悪魔に違いない」という観念に囚われてしまった未熟なキリスト教徒が見た幻影であり、悪魔を探して洞窟に潜った行為自体が恐らくは神父の脳内の出来事である。

・謎の女の正体は?
コクソンの廃墟に佇む白衣の女。悪魔とも神とも取れるが、善悪を超越したコクソンの精霊といった存在。その力は万能であり、國村隼やインチキ霊媒師などの祈祷の及ぶところではない。感染症はあくまでも自然発生的なものと思われるが、この女が人間たちを試すために課した災厄であったかもしれない。…という、人智を超えた絶対の存在がこの世の摂理を守っているに違いないという主人公ジョングの愚かな思い込みが投影されたものに過ぎない。その証拠に、この女の姿はジョングにしか見えていない。

・霊媒師は本物なのか?
完璧にカネの亡者と化したインチキ霊媒師。力もクソもない。なので、白衣の女という「本物」を前にすれば血反吐を吐いて退散するしかない。こいつの祈祷で國村隼が苦しんでいた「画」はナ・ホンジンが観客を惑わすための「フェイク」である。シャーマニズムをビジネスとして商うこの男にとって、國村隼は素材を買ってくれる大事な顧客であったに過ぎない。

・娘はホントに悪霊に憑かれていたのか?
正直ツラい解釈なのだけど、この子はその前から病んでいた。悪霊も感染症も関係ない。警察署での外ヅラを見れば一目瞭然、この子は立派なサイコパス予備軍だ。父親はおろか、母も祖母もあらゆる大人を小馬鹿にし、恐らくは同じ人間と認識していない。原因は定かじゃないけども、子供にとってダメな父親というのは大人に対する畏敬の念を損なわせ、ひいてはあらゆる他者への不信に繋がる。ダメな父親に悪態を突きながらもセックスをする母親も、ベタベタ甘やかして世話を焼くおばあちゃんにもウンザリする。ピンクのヘアピンを買ってもらって喜ぶ姿は可愛らしいが、その後床に落ちていたヘアピンこそが真の内面である。落ちたのではない、捨てたのだ。一見無邪気な少女の身に起きた信じがたい変容。これを「悪霊」のせいにしたがる大人の都合は、かの『エクソシスト』にも同様である。

映画『お嬢さん』~エロスは下ネタよりエラいのか?

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原題 "아가씨"イメージ 1

英語題 "THE HANDMAIDEN"
製作年度 2016年
製作国 大韓民国
製作 ヨン・フィルム
    モホ・フィルムズ
製作費 KRW10,000,000,000
国内配給 ファントム・フィルム
日本公開 2017年3月3日
上映時間 144分

監督、脚本、製作 パク・チャヌク
脚本 チョン・ソギョン
原作 サラ・ウォルタース「茨の城」
製作総指揮 マイキー・リー
製作 シド・リム他
撮影 チャン・チャンフン
音楽 ヨ・ヨンウォク
編集 キム・ジェブン
    キム・サンボム
美術 リュ・ソンヘ
衣装 ヨ・サンギョン
出演
キム・ミニ:秀子お嬢様イメージ 2
キム・テリ:スッキ
ハ・ジョンウ:藤原伯爵
ヨ・ジンウン:上月
キム・ヘスク:佐々木
ムン・ソリ:叔母様

鑑賞 2017年9月11日
DVD 字幕(発売元:TCエンタテインメント)
★★★★☆

まず。私は下ネタが好きではない。
スナックとかオカマバーなんかで飲んでいて、
「勃った」とか「濡れた」とかあられもない
エロトークに花が咲くと帰りたくなる。
もちろん自分はホモなんかじゃないし、
性欲だって人並み以上にある。
別につまらないとか思ってるわけじゃない。
興味はあるのだ。すごく、本当は。
ただ、いくら酒の入った席とは言え、
人前で―増してや女性の前でエロな言葉や
下心まる出しの態度を晒すことにすごく
抵抗、罪悪感を感じる。
そして、さほど興味もないフリをしてしまう。イメージ 3

さて、『お嬢さん』。
もうタイトルからしてインビな響きがして
しまうのだけど、韓国映画随一のムッツリ
スケベ、パク・チャヌクの作品。

1930年代、日本統治時代の韓国。
日本貴族のお屋敷に新しい召使として
やって来た田舎娘のスッキ。
屋敷のお嬢様は秀子といい、蒐集家であった
父の書物に囲まれて一見優雅な暮らしを送っ
ていたが、厳格な叔父「上月」がその後見人
となっていた。
ふん。世間知らずの日本人なんてチョロイわ。
手っ取り早く売り飛ばして、後はサヨナラ。
スッキは純朴な田舎娘なんかじゃなかった。
名うての盗賊団の一味で、日本人の貴族に
成りすました詐欺師と組んで秀子を結婚詐欺
にかけ、その莫大な遺産をまるっと頂戴しよ
うという魂胆だったんである。
が。秀子と寝食を共にするうちに、この家に
はただならぬ秘密があることを知る。
それにつれてスッキの心の中にも、秀子に
対するただならぬ想いが芽生え始める―

え、エロいんだよお!イメージ 4

『オールド・ボーイ』や『渇き』など、
これまでも赤裸々で生々しいドエロ趣味を
炸裂させていたチャヌク監督。
ハリウッド資本の『イノセント・ガーデン』
も直接的な性描写こそ無かったが、少女が
オンナへと化けていくピアノ連弾のシーン
なんかもう直視できないくらいエロかった。
本作に至ってはほぼ全編倒錯的エロの世界。
「奥歯が口の中に引っかかっちゃうの。」
「私が削って差し上げます。はい、あーん…」
なんだこれ。なんだこれ。ほとんどエロビ
じゃないか。しかも結構な変態さん向け。
韓国映画は基本一人でDVD鑑賞が常だけ
ど、今回は特にそれで良かったと思った。
もしヨメなんかと観てたら軽く地獄だった。
なんともヤらしいのだ。ねちっこいのだ。
これこそチャヌク監督の主軸と言っていい
んだろうけども、凄まじいまでの執念で
描きこまれた映像に溶け込ませることで、
下世話なエロも「耽美」なアートになる。
日頃しかめっ面を決める評論家さん達も
「ブラボー!」とか惜しみのない拍手をイメージ 5
送るんである。
対して、エロをハナから隠そうともしない
オッサンの性はどこまでも醜い。
うら若き乙女に放送禁止用語を連呼させて
含み笑うゲスおやじの姿は今現在でも
日常的な光景と言っていいと思うが、
ごく当たり前な存在だけに甚だしい軽視
蔑視の対象である。
公衆の面前でしょうもない下トークに興じ、
酸っぱい香りをまき散らす男子学生達も
また然り。

ここで私はひとつ疑問がある。
抑圧されたエロスは芸術になり得るが、
アケスケな下ネタはバカ扱い。
果たして下ネタはエロスに劣るのか。
例えば、「てめーち〇こ付いてんのか!」
などと罵声を発して高笑いするドS美女は
やっぱりカッコいいが、満員電車の中で
女性のお尻につい触れて顔を赤らめて
しまったオッサンは即車掌室送りである。
不公平とは言えまいか。
スケベなオッサンにだって人権がある。
だから。冷たい地下の奥底で黒々としたイメージ 6
ド変態にのめり込む「上月」のオッサン
の気持ちも私には良く分かる。
恥ずかしいけど。こういう風にしか
自分の中にモヤつく気持ちを発散できない。
素直な気持ちを表現できないのだ。
そんな性癖をこの年になって変えること
なんかできないし、変えるつもりもない。
「変態」と。
人がそういうのなら、それでも構わない。

映画『ワンダーウーマン』~仁義なきシネマティックユニヴァース・女帝逆襲篇

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原題 "WONDER WOMAN"イメージ 1

製作年度 2017年
製作国 アメリカ、中国、イギリス他
製作 ワーナー・ブラザース
  アトラス・エンターテインメント
  クルエル&アンユージュアル・フィルムズ
  DCエンターテインメント他
製作費 $149,000,000
国内配給 ワーナー・ブラザース
日本公開 2017年8月25日
上映時間 141分

監督 パティ・ジェンキンス
脚本 アラン・ハインバーグ
原作 ウィリアム・モルトン・マーストン
製作総指揮 スティーヴン・ジョーンズ
    ジェフ・ジョンズ
    ジョン・バーグ他
製作 チャールズ・ローヴェン
    デボラ・スナイダー
    ザック・スナイダー
    リチャード・サックル
撮影 マシュー・ジェンセン
音楽 ルパート・グレッグソン=ウィリアムスイメージ 2
編集 マーティン・ウォルシュ
配役 クリスティ・カールスン
    ローラ・ケネディ他
美術 アリーネ・ボネット
衣装 リンディ・ヘミング
出演
ガル・ガドット:ダイアナ
クリス・パイン:スティーヴ
サイード・タグマウイ:サミーア
ユエン・ブレムナー:チャーリー
ユージン・ブレイヴ・ロック:酋長
ルーシー・デイヴィス:エッタ
ロビン・ライト:アンティオペ
ダニー・ヒューストン:ルーデンドルフ総監
エレナ・アナヤ:マル博士
デヴィッド・シューリス:モーガン卿

鑑賞 2017年9月15日
仙台東宝シネマズ 字幕
★★★★☆

マーベル一家を呑み込んだディズニー組が
牛耳っていたアメコミ映画界隈に、古豪の
DC・ワーナー連合が乗り込む格好で始まったイメージ 3
「シネマティック・ユニヴァース」抗争。
DC陣営はバットマンにスーパーマンという
強力な2枚看板を擁しながらもノーラン会長
のあまりにダークなシノギが災いして
興収、評価ともにボロクソ。
圧倒的な物量で攻勢を畳みかけるマーベル
陣営にまるで歯が立たない。
ヤケッパチ気味にマイナー悪党の寄せ集め
『スーサイド・スクワッド』を投入するも、
これも敢えなく玉砕。
もはや大勢は決したかと思われたが、
ここで唯一光明が差し込んでいたのが
ハーレイ・クインという鮮烈な「ヒロイン」
の存在であった。その年のハロウィンには
ハーレイ・クインのコスプレで溢れかえっ
ていたことも記憶に新しい。
そう言えば『バットマンvs.スーパーマン』
も映画秘宝では年間トホホに輝いたが、
「ここだけはテンションぶちアゲ!」と
衆目の一致を見たのがワンダーウーマンの
登場シーンであった。

もしやDCを救うのはこの女ではあるまいか。
そんな仄かな期待を背負いながらこの夏に
公開された『ワンダーウーマン』。イメージ 4
蓋を開ければ『パイレーツ・オブ・カリビアン』、
『トランスフォーマー』、『ザ・マミー』など
並み居るビッグタイトルを蹴散らし、
サマーシーズンぶっちぎりのメガヒット。
高評価に沸いたマーベルの『スパイダーマン』
もこの快進撃の前には完全に霞む。
すっかり敗色濃厚であったDCの、文字通り
救世主となったんである。

思えばDC印のヒーロー映画というのは
えらく辛気臭くて、内向的で、ネガティブで、
私なんかはそこがとにかく嫌いだった。
面白くない。カッコよくないのだ。
『ダークナイト』や『ウォッチメン』の頃は
まだそういうのが新鮮だったし、世相的にも
娯楽として受け入れられる余地があった。
が、今となってはダメ。
世界がクソだとか、救う価値もないとか、
そんなのヒーローがわざわざ言わなくとも
分かりきってるわけで。
今更そんなことを言ってほしくて僕らは
ヒーローを見るわけじゃない。
ホント気が滅入ることばかりの世の中だけど。
それでも、やるしかないんだ。
先陣切って突き進んでいく姿を見たいから、イメージ 5
そして勇気を与えてほしいから、
ヒーローを夢見るわけで。

『ワンダーウーマン』は昨今のヒーロー映画
に欠けていたヒロイズムを存分に感じさせて
くれる会心の一本だったと思う。
"MAN"が忘れてしまったヒロイズムを
"WOMAN"が取り戻したと言えば
なんとも皮肉に感じられるがそうではない。
ワンダーウーマンは確かに完璧な美貌を持つ
「女性」であるが、性別の違いを殊更ギャッ
プとして利用しているわけではない。
コスチュームは露出こそ多いが、無闇に
胸元やボディラインを強調するでもなく、
セクシャルなものをまるで感じさせない。
それでいて女性ならではの優しさ、繊細さ、
可愛らしさをも十分に備えていて、
それがヒーローとしての強みにもなっている。
DCには過去にも『スーパーガール』があったが、これはスーパーマンの飽くまでも下位
互換的な「女性版」であった。
が、ワンダーウーマンは違う。誰よりも強く、
誰よりも先に前に進んで行く。
正義や理想を追い求めるのに、
男も女もない。イメージ 6
ここに至ってヒーロー映画は漸く男女同権に
立ったと言っていいかもしれない。

これもひとえにパティ・ジェンキンスという
勇気ある女性監督の力に負うものかと。
聞けば。本作はご承知の通りに大ヒットを
したが同程度の興収を上げた男性の監督―
つまりはザック・スナイダーなんかと比べると
ギャラが格段に少なかったらしく、
「相応のギャラを払わなければ、続編は引き
受けない」と製作会社と揉めまくった挙句、
見事1000万ドル+出来高という高額を
勝ち取ったらしい。
カッコいいなあ。
この人こそ真の意味で「ワンダーウーマン」
と言えるのかも。

映画『オクジャ / okja』~くいものの歌を聴け

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原題 "옥자"イメージ 1
英語題 "OKJA"
製作年度 2017年
製作国 大韓民国、アメリカ
製作 プランB・エンターテインメント
    ケイト・ストリート・ピクチャー・
    カンパニー
    ルイス・ピクチャーズ
配給 Netflix
製作費 $50,000,000
配信開始日 2017年6月28日
上映時間 120分

監督、脚本、製作 ポン・ジュノ
脚本 ジョン・ロンソン
製作総指揮 コリン・クライトン
    サラ・エスバーグ
    ブラッド・ピット他
製作 チェ・ドゥホ
    ディデ・ガードナー
    ジェレミー・クライナー他
撮影 ダリウス・コンジ
音楽 ジェマ・バーンズ
    ユン・ジェイル
編集 ヤン・チンモイメージ 2
    ハン・ミヨン
配役 ジェニー・ユー
美術 イ・ハジュン
    ケヴィン・トンプソン
衣装 チョ・セヨン
    キャスリーン・ジョージ  
出演
アン・ソヒョン:ミジャ
ティルダ・スウィントン:ルーシー・ミランド
ポール・ダノ:ジェイ
ジェイク・ギレンホール:ウィルコックス
ビョン・ヒボン:おじいちゃん
スティーヴン・ユアン:ケイ
リリー・コリンズ:レッド

鑑賞 2017年9月16日
ネット配信(Netflix) 字幕
★★★★☆

昨年は日本映画が思いのほかに面白かっ
たが、今年はお隣韓国に風が吹いている
らしい。
というわけで韓国随一のヒットメイカー、イメージ 3
ポン・ジュノの最新作はVFX仕立ての
モンスター映画。

ソウルからずっと離れた山奥で、
山のように大きなブタと暮らす少女がいた。
その名はミジャ。
そしてブタの名はオクジャ。
朝起きて寝床に入るまで、いつも一緒。
ミジャにとってオクジャは
かけがえのない友であり、兄弟でもあり、イメージ 4
そして父であり、母だった―

大自然に囲まれてのんびり暮らす少女と
もふもふの大ブタ。ごろりと横になった
ブタの腹の上ですやすや眠る少女の姿は
明らかに『となりのトトロ』へのオマージュ。
日本のサブカルにも精通するポン・ジュノ
らしく、いかにも可愛らしいファンタジーを
志向するかと思いきやさにあらず。
そもそも宮崎アニメ自体が「可愛らしい」
内容なんかでは決してなかったわけで。

オクジャはただのブタなんかじゃない。
ミランド社が世界的な食糧問題に対応す
べく、品種改良を重ねて作り出した新種の
食用ブタ。その名も「スーパーピッグ」。
少ないエサで大きく育ち、
物静かでおとなしく、フンも少ない。
地球に優しく、そして「おいしい」。
ミランダ社はプロトタイプとして作った
26匹の子ブタを世界各国の優秀な畜産業
者に預け、どの飼育法が最も適しているの
かを調べるためにコンペを行っていた。
―その一匹がオクジャだったのだ。

ブタはお肉になるために飼われるもの。イメージ 5
ミジャだって農家の娘、そんなことは
しかと分かってる。でも。ちっちゃなころから
ずっと一緒だったオクジャと別れるなんて、
考えられない。絶対にイヤだ。
「大丈夫。オクジャはウチで買い取った」
おじいちゃんはそう言っていたのだが、
なんとオクジャはコンペで優勝をしてしまい
ミランダ社の人間に連れて行かれてしまう。

どなどなどーな、どーなー♫
私ぐらいの年代ならパブ犬的に涙がにじんで
しまう童謡「ドナドナ」だが、
韓国のドナドナは可哀そうな家畜が売られて
行くのを健気に見送ったりはしない。
トラックを追いかけて屋根に飛び乗り、
強化ガラスを叩き割り、警備員を蹴飛ばし、
とにもかくにもオクジャを取り戻そうと
奮闘の限りを尽くす。
やがてオクジャは本社のあるニューヨークへ
と送られ、ミジャもまたこれを追う。
大都会にやって来た少女と野獣、となれば
言うまでもなく『キング・コング』、
もっと言えば『猿人ジョーヤング』という
モンスター映画の基本テンプレなわけだが、
ここで少女たちの目を介して
近年の食品産業を皮肉っているあたりがイメージ 6
いかにもポン・ジュノらしい。
生産性、利益を優先するあまりに品質や
安全性がないがしろにされてしまっている
現在の食品業界。
安くて当たり前、おいしくて当たり前、
ちょっと手を伸ばせばすぐに食べ物が手に
入る大量消費社会は、食べることの大切さ、
そして食べられることへの有難みを
すっかり麻痺させてしまった。

粉飾極まりない「大企業」が醜悪なのは
言うまでもないが、猜疑の視線はこれに
留まらない。
「生命を奪って食すのは罪深きもの。
だから私たちは肉を食べない。肉のために
動物を殺すことを断じて許さない」
もっともらしいイデオロギーを掲げ、
牧場や屠畜場、動物園等でテロ行為を働く
「活動家」の人々。作中の「動物解放戦線」
というのは実際にある団体なんだそうで。
一見少女に味方をする正義の人々のように
も見えるが、底意地の悪いポン・ジュノは
こちらにも懐疑的な視線を向ける。
否定して。駄々をこねて。邪魔をして。
たくさんの人が傷ついて、物が壊れて。イメージ 7
これほどの足掻きでいったいどれほどの
動物たちが救われるというのか。
今回はたったの1匹…いや、2匹か。
しかも最終的には金がモノを言った。
確かに食肉は人間の都合だけど、果たして
「食わない」のが正義なのか。美徳なのか。
「肉を食いたくない」のはいいが、その信念
を誰彼にも押し付けるのはお門違い。
肉があるお陰で生きていられる人、
キリストさんがどうこう言う前から
ずっと肉を食って生きてきた人々がいる。
こんなのは大義じゃない。自己満足だと。
(逃走中の活動家が障害者から杖を奪い、
ドアに閂をするくだりはさり気ないが
えらく恣意的なシーンである)

食べるというのは当たり前のことじゃない。
増してや、義務でも罪でもない。
食べるのは楽しくて、嬉しくて、
とてもありがたい特別な行為。
食べるために捧げられた生命、
それらを育ててくれた農家の人々、
料理を作ってくれた職人さんやお母ちゃん、
そして今日もおいしくご飯を食べられる
ことに感謝をして、「いただきます。」とイメージ 8
手を合わせる気持ちが大事なんじゃない
かなと。

ラスト。もしゃもしゃ、ぱりぱり…
暗闇に響く「くいもの」の音が耳に残る。

映画『アシュラ』~オブ・ザ・鬼畜、バイ・ザ・鬼畜、フォア・ザ・鬼畜

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題 "아수라"イメージ 1
英語題 "ASURA:THE CITY OF MADNESS"
製作年度 2016年
製作国 大韓民国
製作 サナイ・ピクチャーズ
国内配給 CJエンターテインメント・ジャパン
日本公開 2017年3月4日
上映時間 136分

監督、脚本 キム・ソンス
製作 ハン・ジェドク
    カン・ヒュン
    キム・ジョンミン
撮影 イ・モゲ
音楽 イ・チェジン
編集 キム・チェブン
    キム・サンボム
美術 チャン・グニョン
武術指導 ホ・ミョンヘン
出演
チョン・ウソン:ハン・ドギョン
ハン・ジョンミン:パク・ソンベ
チュ・ジフン:スンモ
クァク・ドウォン:キム検事
チョン・マンシク:ト係長
キム・ヘゴン:テ・ビョンジョ
キム・ジョンス:ウン・チョンホ

鑑賞 2017年9月20日
DVD 字幕(発売元:ポニー・キャニオン)イメージ 2
★★★★☆

やっぱり、今年は韓国映画が面白い!
ということでこれも随分と評判になっていた
一本。

舞台はアンナムなる架空の地方都市。
市長のパク・ソンベは都市開発の利権を
独占して賄賂を取り、裏社会と通じて
薬物の売買や殺人、恐喝に手を染める
ほとんどヤクザ…いや、強力な権力を握っ
てる分ヤクザよりもずっとタチが悪い。
そしてそんな極道市長の下で証拠の揉消し
や裏工作を働くクズ刑事のドギュンがいた。
ドギュンには重い病に侵された妻がいて、
その医療費を賄うために手を汚す覚悟を
決めた。
間違っているのは分かっている。
全ては、妻のため。そう思ってた。
イメージ 3
が、今はどれも過去の話。正義も。愛も。
市長が極道なら、その向かいには悪魔の
ような検察がいる。
不正を糺すとかご立派な大義よりも
いかに悪人をでっち上げ、そして牢屋に
ブチ込むかに血道をあげる人々。
かねてから「大物」として市長に目を付け
ていた検察のお役人は、その懐刀である
ドギュンに接触を試みる。
汚職や不貞などドギュンの弱みを巧みに
チラつかせ、市長がワルである証拠を差し
出すよう要求するが―

まずいかにも韓国映画といった感じの
バイオレンス映画。
韓国のエンタメ映画は総じてレベルが高いが、
まるで躊躇のない暴力表現や血のりの量、
荒々しい言葉遣いや演者たちの熱量など、
韓国映画ならではの醍醐味が味わえる
ジャンルと言えるんじゃないだろか。
痛覚がマヒしそうな拷問シーンや床一面
まっかっか!のクライマックスも凄かったが、
中盤のカーチェイスには目を見張った。イメージ 4
とにかく徹頭徹尾、悪党しか出てこない。
淫行オヤジを恐喝するヤク中のチンピラと、
チンピラから金をネコババするクズ刑事、
クズ刑事を殺してしまったのをチンピラに
なすりつけ、素知らぬ顔を決め込む主人公。
さながら悪党の食物連鎖といった趣だ。

極道市長役のファン・ジョンミンは
この前の『コクソン』でも霊媒師という
役どころだったけども、こういうもっとも
らしい顔しながらインチキ臭ぷんぷんの
役を演らすとこの人は本当によくハマる。
自分の中ではピーター・ストーメアと
並んで2大インチキ役者に位置する人です。
そしてとにもかくにも主演のチョン・ウソン
に尽きる。正直あんまり知らなくてそんじょ
そこらのイケメン程度な印象だったのだけど、
鬼気迫るとはまさにこのこと。
端正な男前がどんどん傷だらけのボコボコに
なり、果てしなく荒んだ形相に言葉を失う。
表向きは権力の間で右往左往する「負け犬」
なんだけど、それでいながら隙を見ては
喉笛に食らいつきそうな不敵な闘志が
滾っていて。こういうやつが一番怖いのだ。
そして怖いんだけど、えらくシビれた。イメージ 5

酒の席で検察の強面係長にケンカを売られ、
腕まくりして立ち上がった刹那の不敵な笑
みにゾクゾク来た。

自分はケンカなんか物心ついてから
とんとした覚えがないし、
まずそういうシチュエーションになる前に
真っ先に逃げを打つタイプなのだけど、
こういう映画を観て恐怖や嫌悪感を感じつつ、
その一方で腹の底にぐらぐらと熱いなにかが
滾っているのを感じたりもする。
こんな自分にもちっさな獣がいるんだろな、
たぶん。
まず、コップを食ったりはしませんが。

映画『群盗』~辛・荒野の替天行道

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原題 "군도: 민란의 시대"イメージ 1
英語題 "KUNDO:AGE OF THE RAMPANT"
製作年度 2014年
製作国 大韓民国
製作 ムーンライト・フィルム
    ショウボックス
製作費 KRW16,000,000,000
国内配給 ツイン
日本公開 2015年4月25日
上映時間 137分

監督、製作 ユン・ジョンビン
脚本 チョン・チョルホン
製作総指揮 ユ・チョンフン
製作 ハン・チェドゥク
    カン・ヒュン
撮影 チェ・チャンミン
音楽 チョ・ヨンウク
編集 キム・チェボム
    キム・サンボム
美術 パク・エルヘン
衣装 チョ・サンギョン
出演
ハ・ジョンウ:「屠畜人」トチ
カン・ドンウォン:チョ・ユン
イ・ギョンヨン:「生臭坊主」テンチュイメージ 2
イ・ソンミン:「頭領」デホ
チョ・ジヌン:「戦略士」テギ
マ・ドンソク:「怪力」チョンボ
ユン・ジヘ:「弓撃手」マヒャン
キム・ジェヨン:「瞬殺者」クムサン

鑑賞 2017年9月22日
blu-ray 字幕(発売元:ソニーピクチャーズ・エンターテインメント)

★★★★★

ひさびさ韓国映画にドハマり中ということで、
新作じゃないけど前々から気になってた
本作をピックアップ。

once upon a time in Korea.
むかしむかしの朝鮮で。
横暴で能無しのお上に反旗を翻し、
民の
ため、大義のために戦った盗賊団のお話。
盗賊団「智異山チュソル」というのは
実在の賊がモデルになっているとかで、
私腹を肥やす役人の屋敷を襲っては奪ったイメージ 3
物資を民にバラまく、まるで石川五右衛門の
ような「義賊」である。
威風堂々たる「頭領」に、
参謀役の「生臭坊主」。
舌先三寸で戦況を動かす「戦略士」。
鉄球を振り回し敵陣を突破する「怪力」。
男勝りの女傑「弓撃手」と軽業師の「瞬殺者」。
そして悪徳領主に騙されて家も家族も失い、
復讐に燃える「屠畜人」トチ。
異相異能の好漢達が見得を切るオープニン
グに「水滸伝」大好きな自分はジャストミート。
と言うか作り手が「水滸伝」の梁山泊を意識
していたのは明白だけども、とりわけ「北方
水滸伝」を参考にしてたんじゃないだろか。
そして颯爽と砂塵を駆け抜ける馬群のバッ
クに流れるメロディはなぜか『怒りの荒野』。
こんな極東の地でなぜに「ウエスタン」なの
か意味がよく分からないが、これが不思議と
マッチする。
キム・ジウンの『グッド・バッド・ウィアード』
もそうだったが、マカロニのあっけらかんとし
たケレン味が、かの地のナチュラルな荒くれ
気風に馴染んでしまうのかもしれない。
それにつけても我が国の「スキヤキウエスイメージ 4
タン」と比べれば、その絶望的なセンスの
差に悲しくなる。

主人公のトチに扮するはハ・ジョンウ。
『チェイサー』の冷酷極まりない殺人鬼役が
強烈だったが、その後の『哀しき獣』では
無様に逃げ惑う逃亡者、最近の『お嬢さん』
ではゲス極まりない詐欺師と、業界内でも
「カメレオン俳優」と言われているようで、
見る度に「本当に同じ人か?」と驚くほどに
多彩な顔を見せてくれる。本作でも主役では
あるものの通り一遍のヒーローでは全くなく、
頭はちと足りないが人並み外れた肝っ玉を
持つ不屈のリベンジャーを愛嬌たっぷりに
好演。(ちなみに「水滸伝」で言えば黒旋風
の李逵に相当するだろか。またお役人にハ
メられて「やむを得ず」」賊に身を落とすの
は「水滸伝」の多くの好漢に共通する鉄板
パターンだ)

この手のピカレスク(悪漢)ものというのは
主役が盗みや殺人など犯罪を生業とする
悪党たちだが、それに対峙するお役人な
んかが「更に輪をかけてゲス」だからこそイメージ 5
成り立つわけで。
法を守り、民衆の見方であるべき奴らが
全然アテにならんから、力ない市井の人々
はこうしたアウトサイダーの破天荒な活躍に
共感を覚え、快哉を叫ぶんである。
ここで悪徳領主に扮するのがカン・ドンウォ
ン。正直ただのイケメンアイドルと思って
いたのだけど、もうそのイケメンぶりが既に
反則レベル。こんなのウチのカカ様に見せ
たらソッコー惚れる。間違いない。
そしてそのイケメンを逆手に取ってというか
しっかりフル活用してのクソ野郎ぶり。イメージ 6
おまけに武芸百般を修めた最強の武人とい
う役どころで、好漢たちが束になってかかっ
ていっても瞬時に蹴散らされてしまう。
ハッキリ言って、全世界男子の敵なわけで。
あまりに強くてカッコよくて、そしてやること
なすこと全てがゲスで卑怯で人でなしで、
もう!誰かこのクソ野郎をギャフン(死語)
と言わせてやってくれ!というところまで
はらわたがグラグラ煮立ったところに
我らがドン底ヒーロー、トチのご登場。
そして高らかに鳴り響くマカロニサウンド!
いよお待ってました!大統領!
これで背中に電気が走らない男はいない。
「あの武器」にドン引きした人もいたよう
だけど、マカロニを嗜む身としてはもう
お約束みたいなもん。
まあイイじゃないか、楽しいんだから。
最後の皮肉な「決着」も良かったな。
悪役に肩入れしすぎとの意見もあるようだ
けど、なにも勧善懲悪だからイイってもん
でもない。
韓国映画としては比較的ストレートな活劇で
はあるが、その場しのぎの無責任な正義への
賛美ではなく、紛れもない「世の中への怒り」
に韓流エンタメの本気を見た。イメージ 7

そう言えば歴史の授業で、
朝鮮の国では「両班(ヤンバン)」という
特権階級が好き放題に搾取をした時代が
長く続き、国がすさまじく荒廃してしまったと
教えられたのを思い出した。
長い抑圧の歴史が、あんな叛骨的な気風を
生み出したんだろうか。彼らは本能的に
支配者というのを信用していない。
それは多分、今も。
昨年大統領が解任されたのも記憶に新しい。
「北」の人たちは今、何を感じているんだろう。
まず、Jアラートを耳にしても呆然とするしか
ない私たちにはまるで考えの他だけども。

映画『ファンハウス / 惨劇の館』~神様はよくまちがえる

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原題 "THE FUNHOUSE"イメージ 1
製作年度 1981年
製作国 アメリカ
製作 ユニヴァーサル・ピクチャーズ
    メイス・ニューフェルド・プロダクションズ
国内配給 CIC
日本公開 1981年6月20日
上映時間 96分

監督 トビー・フーパー
脚本 ローレンス・ブロック
製作総指揮 マーク・L・レスター
    メイス・ニューフェルド
製作 スティーヴン・バーンハート
    デレク・パワー
撮影 アンドリュー・ラズロ
音楽 ジョン・ビール
編集 ジャック・ホフストラ
配役 パメラ・バスカー
    ファーン・チャンピオン
美術 モートン・ラビノウィッツ
特殊メイク リック・ベイカー
    クレイグ・リアドン   
出演
エリザベス・ベリッジ:エイミーイメージ 2
クーパー・ハッカビー:バズ
ラーゴ・ウッドラフ:リズ
マイルズ・チャピン:リッチー
ケヴィン・コンウェイ:呼込みのオヤジ
シルヴィア・マイルズ:マダム・ジーナ
ウェイン・ドーバ:化物

鑑賞 2017年9月26日
DVD 字幕(発売元:キングレコード)
★★★☆☆

ロメロ御大に続いて、
今度はフーパ―師匠が亡くなってしまった。
8月26日没、享年74歳。
自分もいい加減トシだから、かつてのスター
やヒーローの死にいちいち反応してては
キリがないのだけど、それにしても
喪失感のデカい今年の夏でありました。

というわけで、追悼の意を込めてこの映画。

とある田舎町にカーニバルがやって来た。イメージ 3
「カーニバルには行くんじゃないよ。
こないだも人が死んだとかいう噂だから」
親に言われても、行きたいものは行きたい。
「大丈夫、映画に行くだけだから」
ウブな女学生のエイミーは親にウソをつき、
友人達と4人でカーニバルに出かけて行く。
色とりどりの乗り物やゲーム、お菓子に
群がる子供たちの黄色い笑い声。
そしてそこはまたお化け屋敷に見世物小屋、
占いババアやストリップなど、胡散臭くて
猥雑な魅惑の世界。
マリファナをキメて、テントの陰でいちゃ
付いて、ちょっとだけオトナの世界に足を
踏み入れた気分に浸る4人の若者達。
「そうだ。今晩はこのお化け屋敷の中で
一夜を明かそう。なに、営業時間が終われ
ば誰もいなくなる。後はお楽しみのし放題…」
が、そのお化け屋敷「ファンハウス」には
本物の闇が隠されていた。スカスカになった
床板の隙間から、彼らは恐ろしい事件を目撃
してしまう―

トビー・フーパーと言えばなんと言っても
『悪魔のいけにえ』なわけで、
この奇跡としか言いようのないデビュー作でイメージ 4
一躍名を上げたが、続く『悪魔の沼』は
セルフパロディの域を出ず、
またスティーヴン・キング原作の
テレフィーチャ―『死霊伝説』もいまひとつ
ウリの見出せない凡作に終わり、
やはりアレはマグレだったのかなあ…と、
そんな評価が定まりつつあった頃。
折しもその時期は『ハロウィン』と続く
『13日の金曜日』の大ヒットにより、
「スラッシャー」ブームが到来。
『プロムナイト』、『血のバレンタイン』、
『テラートレイン』、『バーニング』等々
マスクで顔を覆った殺人鬼がアフォな若者を
次々と血祭りにあげる映画がボコボコと
雨後の筍の如くに大量生産された。
それまでこうした下賤な映画はインディーズ
の主戦場だったが、万年ネタ不足に喘ぐ
ハリウッドのメジャーも続々とブームに
乗って参入してきた。監督には安上がりな
若手やロートルの職人監督なんかがよく選ば
れたが、そんな中クラシックホラーで名高い
ユニヴァーサル社が白羽の矢を立てたのが、
この「テキサスの鬼才」だったわけである。

出来合いとしては、スラッシャーとしてはイメージ 5
血の噴出量も切株描写も至って控えめ。
メジャー製作だけにレイティングへの配慮も
大いにあったかと思われるが、同時期に
乱発されたスラッシャー群と比べれば
かなり物足りないと言わざるを得ない。
インディーズの鬼才がハリウッドに飼われて
大人しくなった、そんな典型例として評価
されるのが本作であろうかと。
が、『悪魔のいけにえ』は確かに桁外れに
衝撃的な作品であったけども、流血や人体
の損壊といった血生臭い描写は意外にない。
予算の都合はあったものの、そうした即物
的な画を見せることなしに、あれだけの
猟奇性を醸成していたのだ。
この後にスピルバーグに招かれた『ポルター
ガイスト』でスピ流のSFXスペクタクルを
無難にこなし、キャノングループのお抱え
として『スペース・バンパイア』や『スペ
ース・インベーダー』など堅実な職人ぶり
を発揮したのはご周知のとおり。イメージ 6
フーパ―師匠は牙を抜かれて堕落した鬼才
なんかではない。どんなに金がなくとも
ダメな企画でもしっかり仕上げて見せる、
所謂「出来る子」だったんだと私は思う。

『ハロウィン』と『サイコ』を
小馬鹿にしたオープニングからして
「猿マネなんかやってられっか。」
フーパ―師匠の不敵な余裕が窺える。
そしていま改めて観ると、大ユニヴァーサル
に敬意を表してか、紛れもない「怪奇映画」
を志向していたことに気付く。
禍々しいカラクリ人形やカーニバルの
怪しい佇まい、とってつけたような日常の
裏に蠢く「異形」のものたち。
毒々しい色合いで捉えた名手アンドリュー
・ラズロのカメラが素晴らしい。

それでいて、フーパ―師匠が当初から
描いてきた不敵なメッセージが
ここでも通底していることに気付く。
この世は出来損ないで溢れている。
この世は不合理なこと、間違いばっかり。
神が全能なもんか。もしそうなら、
どうしてこの牛には頭が二つあるんだ。
見せかけだけの平和、上っ面だけの正義にイメージ 7
騙されるな。
プロの映画屋として立派な技量を備えながら、
常にシニカルな批判精神を忘れなかった
フーパ―師匠。
ロメ爺は地獄がいっぱいで天国に行ったけど、この人はVIP待遇で地獄行きだろうな。
ご冥福をお祈りします。

映画『悪魔の沼』~キチガイとクズの踊り食い

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原題 "EATEN ALIVE"イメージ 1
製作年度 1976年
製作国 アメリカ
製作 マーズ・プロダクションズ
製作費 $520,000
国内配給 日本ヘラルド映画
日本公開 1976年12月25日
上映時間 91分

監督、音楽 トビー・フーパー
脚本 アルヴィン・L・ファスト
    マルディ・ラスタム
脚色 キム・ヘンケル
製作総指揮 マルディ・ラスタム
製作補 ラリー・ヒューリー
    ロバート・カンター
    サミール・ラスタム 
撮影 ロバート・カラミコ
音楽 ウェイン・ベル
編集 マイケル・ブラウン
配役 エディ・モース
美術 マーシャル・リード
出演
ネヴィル・ブランド:ジャド
メル・ファーラー:ハーヴェイイメージ 2
キャロリン・ジョーンズ:ハッティ夫人
マリリン・バーンズ:フェイ
ウィリアム・フィンレイ:ロイ
スチュアート・ホイットマン:保安官
ロバート・イングランド:バック

鑑賞 2017年9月28日
DVD 字幕
(発売元:デックス・エンターテインメント)
★★★★☆

フーパ―師匠を偲んで、もう一本。
『悪魔のいけにえ』の大反響を受けて、
全世界の期待やら怖いもの見たさを背負って
作られた長編第2作。
『悪魔のいけにえ』は実在のシリアルキラー、
エド・ゲインをモデルとしていたが、
今回は「エレメンドルフの屠殺者」の名で
知られる連続殺人鬼ジョー・ボールがモデル。
裏庭の沼にワニを飼っているモーテルの
オヤジがいて、何も知らずに訪れた宿泊客
をドでかい鎌で切り刻んではワニのエサに
してしまう。

もっとも『悪魔のいけにえ』でフーパ―はイメージ 3
エド・ゲイン事件の「真実」を語るつもり
など更々なく、幼少期に聞かされたコワい
話を物語に取り入れたに過ぎなかったが、
「この映画は真実である」という冒頭の
ハッタリは効果絶大だった。
本作もまた同様に実在ベースを敢えて取り
入れたが、メイキングの解説によれば
ジョー・ボールというのは「民間伝承」
の域を出ておらず、恋愛関係のもつれで
数人の女性を手に掛けはしたものの、
その肉をワニに食わせたとか、増してや
宿泊客を無差別に殺したなどという記録は
一切ないらしい。

ただ、そんな「些事」をフーパ―師匠は
まるで気にも留めていない。
戦争後遺症だとか、痴情のもつれだとか、
幼少期のトラウマとか気の毒な生い立ちとか、
「ホントはそんなことをする人じゃない」
とでもいうような生半可な情状酌量を
この人は決して認めない。
殺しは殺しなのだ。理由なんかない。
人は理由もなく、当たり前に人を殺す。
それは本能なのだ。まるで、ワニのように。
だから因果応報もクソもない。
悪人だろうが善人だろうが、淫売も盗人もイメージ 4
老人も子供も、腹に入ってしまえばどれも
同じなんだから。

メジャーの資本が投入(それでも$50万)
され、オールセット撮影で製作された本作。
ドぎつい色合いのライティングや役者陣の
充実ぶりなど、前作よりも格段にウェル
メイドな作りが施された印象。
もっともそんな手を掛けたあたりが、
粗削りでキョーレツ至極だった『いけにえ』
に比べなんともヌルく、中途半端に感じら
れてしまうのは否めない。
それでも予算が増えたお陰で、
ウィリアム・フィンレイやメル・ファラー、
ロバート・イングランドといった大物、曲者
役者を大量投入し、気持ち悪くてヘンな映画
としての体面はしっかり保たれていたかと。
殊に主演ネヴィル・ブランドの堂々たる
キチっぷりは圧巻至極。ナニゲにおっぱい
多めなのも高ポイント。

唯。さほど金もないくせに作り物のワニに
力を入れたのは如何なる了見だったのか。
がばーっ!とか飛び出してくるハリボテのイメージ 5
ワニがなんとも残念。
どうせだったら本物のワニを使って、肉片
をぼちゃぼちゃ食わせる程度にしといた方が
よりドラスティックになったと思うんだけど。
もしやフーパ―師匠、ガチのアニマルパニッ
クでもやりたかったんだろか。
そう言えば『ジョーズ』が公開されたのが
この前年。この時点でブロックバスターへの
意欲を垣間見せていたのかも。
フーパ―師匠の秘められた野望に、合掌。

映画『デス・レース2050』~一周回ってやっぱりバカ

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原題 "DEATH RACE 2050"イメージ 1

製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 ニュー・ホライゾンズ・ピクチャー
   ユニヴァーサル1440エンターテインメント
リリース日 2017年6月7日
上映時間 90分

監督、脚本、編集 G・J・エクターンカンプ
脚本 マット・ヤマシタ
製作総指揮 ジュリー・コーマン
製作 ロジャー・コーマン
音楽 ショーン・ファーナルド他
配役 ジャン・グレイザー 
出演
マヌー・ベネット:フランケンシュタイン
マルコム・マクドウェル:会長
マーシー・ミラー:アニー
バート・グリンステッド:パーフェクタス
フォレイク・オロウフォイェク:ミネルヴァ
アネッサ・ラムジー:タミー
ヤンシー・バトラー:アレクシス

鑑賞 2017年9月29日
blu-ray 字幕(発売元:NBCユニヴァーサル・
エンターテインメント・ジャパン)
★★☆☆☆

「B級映画の帝王」ロジャー・コーマン製作の
伝説のバカ映画『デス・レース2000年』が
装いも新たに蘇った!イメージ 2

「2050年」ということで最新版にアップデー
トされた未来世界!ドローン飛ばしたり
バーチャルリアリティやら人工知能…って、
それ全然「未来」じゃないんですけど。
予算も随分と増やしたらしく(※額は非公表)、
CGなんかのクオリティもそこそこ見れるのだ
けど、その割に衣装やカーデザインは相変わ
らず小学生の落書きレベル。
狂った世界観や不謹慎な悪フザケは前作の
時代にはまだキツめな笑いとして機能し得たイメージ 3
けども、すっかり世知辛くなってしまった現代
ではナニを今更感が漂う。
マルコム・マクダウェル扮する暴虐の為政者
「会長」はドナルド・トランプそのもの。
ヘンな髪形イジリも馬鹿の一つ覚えで面白く
もなんともない。そもそもこの手のバカ映画
で露骨な世相風刺なんてのはイタいことこの
上ないわけで。
正直リブートと言うよりは焼き直しに近い。
「2050」というのもブレードランナーの
『2049』に乗っかっただけの話じゃある
まいか。パクリ、便乗をモットーとするイメージ 4
コーマン先生なら十分にあり得る話である。

それでも、これは帝王ロジャー・コーマンの
映画である。「エクスプロイテーション」=
「搾取」される映画なんである。
つまらないとか、安っぽいとか、
ある!と言ってたはずのシーンがないとか、
そんな文句が来ることはハナから百も承知。
下世話なキャッチコピーや派手な看板で客を
呼び寄せ、木戸銭を払わせればザッツオール。
顧客満足度なんかここには無縁。
もっとも昔は「ああ…ロジャー・コーマンだ
ったんだ」と後から知って「やっぱりな」とイメージ 5
うなだれるパターンだったのだけど、
近年はすっかりブランド化してしまって
「ロジャー・コーマン製作」の冠が堂々と
前に出てくる。
なのでアサイラムなんかと同様に、
チープでバカでつまらないのを承知の上で
手に取るのが粋な楽しみ方なんでしょう。
映画自体は確かにしょうもないのだけど、
現実を忘れるでも、何かを得るわけでもなく、
「ああ、つまんなかった。」と無為に時間をイメージ 6
浪費するのも悪くはないと思うわけで。

また、ショッピングセンターに隣接したシネ
コンでしか映画館が成り立たない現状の
中で、こうした低予算映画がテレビムービ
ーに活路を見出さざるを得ないということ
でもあろうかと。
何年か前にもメジャー製作で
ジェイソン・ステイサム主演のリメイクが
あったが、最新のVFXを駆使してガチの
エンタメアクションを打ち出したものの、
監督ポール・ダメな方の・アンダーソンの
スカスカなガジェット感覚が炸裂してしまいイメージ 7
「実写版マリオカート」とでも言うような
ウスラバカ映画に仕上がっていた。
こういった勘違いしたメジャーがやらかした
バカ映画に比べれば、コーマン先生の狙った
バカ映画には救いがある。
莫大な予算をかけて、とにもかくにも観客を
お腹いっぱいにさせて、3Dやらノベルティ
やらで金を遣わせて回収を図らなければなら
ない昨今の映画業界を思うにつけ、こうした
敷居の低い映画のありようも一考の余地が
あると思うわけで。

ただやっぱり自分もいい加減トシなので、
極力時間の無駄遣いは避けたいと思う今日
この頃。

ああ、ホントにつまんなかった。。

映画『Death Note / デスノート』~ファイナル・デッド配信サービス

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原題 "DEATH NOTE"イメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 リン・ピクチャーズ
    ヴァーティゴ・エンターテインメント
配給 ワーナー・ブラザース
配信開始日 2017年8月25日
上映時間 101分

監督 アダム・ウィンガード
脚本 シャーリー・パラパニデス
    ヴラス・パラパニデス
    ジェレミー・スレイター
原作 大場つぐみ、小畑健
    「DEATH NOTE」
製作総指揮 ジョナサン・エルリッヒ
    ブレンダン・ファーガソン
    ポーリン・フィッシャー他
製作 ロイ・リー
    ダン・リン
    マシ・オカ他
撮影 デヴィッド・タターソール
音楽 アティカス・ロス
    レオポルド・ロス
編集 ルイス・シオッフィ
配役 ラレイ・メイフィールド
    ジュリー・シューバートイメージ 2
美術 トム・ハモック
衣装 エマ・ポッター
出演
ナット・ウルフ:ライト・ターナー
ラキース・スタンフィールド:L
マーガレット・クアリー:ニア
シェア・ウィガム:ターナー警部
ウィレム・デフォー:リューク(声)
ジェイソン・ライルズ:リューク
ポール・ナカウチ:ワタリ

鑑賞 2017年10月2日イメージ 3
Netflix 字幕
★★☆☆☆

原作、読んでません。
映画もテレビもアニメも観てません。
なので原作と比べてどうとか、
その辺りはなんとも言いようがないのだけど、
それでもこの映画が所謂「やっちまった」類
のものであることは容易に察しが付く。
あの『ドラゴンボール・レボリューション』並
みにファンは怒り狂ってるんじゃなかろうか。

まずオハナシが壊滅的に酷い。
主人公は典型的なアメリカのアフォなヤング
だし、カノジョは底意地の悪いクソビッチ、
謎の名探偵「L」とやらも単に中二病をこじ
らせた黒んぼにしか見えない。
そして全編に漂う、ただならぬバカくささ。
そもそも「ノートに名前書かれたやつみんな
死ね」とか小学生の妄想みたいだけども、
原作からしてこんなウスラバカなお話だった
のか?よく知らんけど。
まずは「少年ジャンプ」だから成り立ったんだ
ろうし、そんなガキまる出しな基本プロットに
は留まらない「なにか」があったからこそ、イメージ 4
ここまで絶大な支持を得るに至ったんだろう
と思うわけで。

にしてもアダム・ウィンガード、
ナニやってんだよう(涙)
『サプライズ』、『V/H/S』シリーズ、
『ザ・ギフト』とあまりに鮮烈なセンスで
ホラー界の未来を嘱望されていた逸材が
こういうことをやってちゃいかんのだよ。
単に興行的な失敗ならまだしも、その作家性
すら疑われかねないカン違いぶり。
昨年の『ブレアウィッチ』からして足取りが
怪しかったが(面白かったけど)、この次が
『悪魔を見た』のリメイク、そしてなんと
モンスターバース『ゴジラvs.コング』で
メガホンを執ることが決まってしまった。
ハッキリ言って迷走もいいところ。
イケそうな予感がまるでしない。
『サプライズ』や『ザ・ギフト』のユーモア
感覚やマニアックなサンプリングのセンス、
そして『ビューティフル・ダイ』の一転
センシティヴな世界観にアツくなった身と
しては、いま一度「初心」に帰ってほしいと
いうのが正直なところ。

もっともウィンガード本人としてはコアな
ホラー作家に甘んじるつもりは毛頭なく、イメージ 5
よりメインストリームなエンターテインメ
ントを志向してはいるんでしょう。
本作についても「しくじった」んでは決して
なく、敢えて「開き直った」感がなくもない。
カルトな日本製コミックをそのまま忠実に
映像化するんではなく、『スクリーム』や
『ファイナル・デスティネーション』など、
アメリカの伝統的な「ティーンズスラッシャー」
にアダプトした風にも見える。
キッチュな色合いを活かした画の作り込みや
80sをフィーチャーした選曲のセンスなど、
相変わらずの「らしさ」が随所に活かされて
もいたと思うわけで。
あと、リューク役のウィレム・デフォーはさすが
だったけど、これモーションキャプチャーじゃ
なくて素で良かったんじゃないか。

そして特に留意しておくべきは、本作が
「NETFLIXオリジナル作品」というところ。
劇場公開なし。DVDも出ない。
観たければNETFLIXに入会して、自分ちの
PCで観るしかないのだ。
映画はやっぱり映画館で観るのが一番と思
うし、劇場で観れないにしてもできるだけ画質
音質のイメージ 6いい環境で観たいと思うので、PC
のディスプレイで映画を観るというのに
ずっと抵抗を感じていたのだけど、昨年
マイク・フラナガンの『サイレンス』が観たく
てお試し入会をした。
で、観てみたらば意外に悪くない。自宅鑑賞
は基本的にヘッドフォンなのだけど、音質は
ブルーレイと比べても遜色は感じられず、
画質も確かに黒レベルが甘いが興を削ぐほ
どでもない。現在のDVD鑑賞レベルとあまり
変わらないのだ。
唯、その時は見たいコンテンツがあまりなか
ったのでお試し期間が終わって一度退会したイメージ 7
が、このところポン・ジュノの『オクジャ』や
マイク・フラナガンの『ジェラルドのゲーム』、
アナ・L・アミールポアーの『マッドタウン』、
ジョー・リンチの『ジョン・ディーの魔導書』
など、ここでしか見られないコンテンツを大量
投下して来た。つい最近ヒットを飛ばした
『ヒットマンズ・ボディガード』が封切と
「同時配信」で観れてしまうというのもド肝を
抜かれた。映画だけじゃもったいないと思っ
て『ウォーキング・デッド』を見始めたらがっ
つりハマってしまい、息抜きに携帯で観たり
してる。毎週ものすごい本数の映画がエントイメージ 8
リーしてきて、その中には「え。これDVD化さ
れてないよね?」というのも少なくない。
「ああ、あの映画のオープニングだけ見たい
んだよなあ」なんてのも気軽にできてしまう。
スタンダードなプランが月額950円。
当面はディスカスと併用になるけども、
これで普通に新作のリリースがDVD並みになったらもうレンタルはいらなくなる気がする。


全米最新映画ランキング 2017年9月29日‐10月1日

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BOX OFFICE TOP 10イメージ 1
weekend of September29‐October1,2017

1. 『キングスマン:ゴールデン・サークル』
(2週目 週末興収$16.9M 総興収$66.6M)
めちゃめちゃ高評価だった『キングスマン』のパート2。監督はマシュー・ヴォーンが続投。1作目まだ見てねんだよなあ。

2. 『IT / イット"それ"が見えたら、終わり。』
(4週目 週末興収$16.9M 総興収$290.7M)
スティーヴン・キングの集大成的大著の長編映画化。累計興収2億越えはホラー映画史上でも類を見ない猛ヒット。監督は『MAMA』のアンドレス・ムスキエティ。キングの再ブームが確実に来ております。

3. 『バリー・シール/アメリカをはめた男』
(1週目 週末興収$16.7M 総興収$16.7M)
トム様主演のクライムスリラー。監督はボーンシリーズのダグ・リーマン。

4. 『レゴⓇニンジャゴー・ザ・ムービー』
(2週目 週末興収$11.6M 総興収$35.2M)

5. 『フラットライナーズ』イメージ 2
(1週目 週末興収$6.5M 総興収$6.5M)
リメイク。主演はエレン・ペイジ、監督はデンマークだかの新人。案の定評価はボロクソ。

6. 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ(原題)』
(2週目 週末興収$3.4M 総興収$4.1M)
相変わらずやってはるエマ・ストーン主演のスポーツ・コメディ。

7. 『アメリカン・アサシン(原題)』
(3週目 週末興収$3.3M 総興収$31.8M)

8.  『ホーム・アゲイン(原題)』
(4週目 週末興収$1.7M 興収計$25.1M)
これまたリース・ウィザースプーンが相変わらずやってはる恋愛コメディ。

9. 『TIL DEATH DO US PART(原題)』
(1週目 週末興収$1.5M 総興収$1.5M)
DVテーマの下世話サスペンスだってさ。

10.  『mother / マザー!』
(3週目 週末興収$1.3M 総興収$16.3M)
ダーレン・アロノフスキー監督作品。

映画『ジェラルドのゲーム』~バイアグラ100ml男の悪夢

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原題 "GERARLD'S GAME"イメージ 1
製作年度 2017年
製作 イントレピッド・ピクチャーズ
配給 Netflix
配信開始 2017年9月29日
上映時間 103分

監督、脚本、編集 マイク・フラナガン
脚本 ジェフ・ハワード
原作 スティーヴン・キング
製作総指揮 イアン・ブリック
    マット・レヴィン
    D・スコット・ランプキン
製作 トレヴァー・メイシー
撮影 マイケル・フィモナリ
音楽 ザ・ニュートン・ブラザース
配役 アン・マッカーシー
    ケリー・ロイ
美術 パトリック・M・サリヴァンJr.
衣装 リネット・メイヤー
出演
カーラ・グギーノ:ジェシー
ブルース・グリーンウッド:ジェラルド
ヘンリー・トーマス:トム
カレル・ストライケン:ムーンライトマン
ケイト・シーゲル:サリー
キアラ・オーレリア:ジェシー(少女時代)イメージ 2

鑑賞 2017年10月6日
ネット配信(Netflix) 字幕
★★★★☆

今月はさほど観に行きたい映画もなく。
この際だからネットフリックスのオリジナルを
あれこれ見倒してやろうかと思いますよ。

というわけで本作『ジェラルドのゲーム』は
『人食いトンネル』、『オキュラス 怨霊鏡』
でシーンに躍り出た新世代ホラーの新鋭
マイク・フラナガンの新作。
どちらかと言えば当世流行のジェームズ・ワ
ン式ネオオカルトホラーの担い手という印象
だったが、本作はスーパーナチュラルな要素
をほぼ持たないサスペンススリラー。
実はフラナガンは昨年にも『サイレンス』と
いう作品をネットフリックス・オリジナルで
撮っているが、聴覚障害を持つ女性宅に殺人
鬼が侵入するというストレート至極のシチュ
エーションスリラーであった。おそらくは
「ネット配信」という媒体の特性を鑑みた上
で企画を選んでいるのだろうと思う。イメージ 3
こちらも並々ならぬ快作なので、ネトフリに
加入された方はこの機会に是非合わせて
てみられたし。

舞台は森の奥に佇む一軒のコテージ。
そこに一組の夫婦がやって来る。
どちらも相応の年齢を重ねた熟年夫婦なの
だが、今日は妙に鼻息が荒い。
着くや否やオッサンはカバンからおもむろに
手錠を取り出し、下着姿でベッドに横たわっ
たオバハンを繋いでしまう。
どうだ、動けないだろう。
「本物」の手錠だからね。イメージ 4
こうした非日常のプレイで夫婦間のマンネリ
を払拭しようとしていたのだ。
山奥の一軒家、大きな声を出しても誰にも
聞こえない。さあ、始めようか。
が、キモチばかり若いオッサンはいつにな
く張り切りすぎ、三角の青い錠剤を少しば
かり多めに飲んでしまっていた。
いざ。という段になってオッサンは苦悶の
表情を浮かべ、胸を掻きむしりながら
オバハンの上に倒れ込む―

手錠で繋がれたまま相手が腹上死! イメージ 5
まさにm9(^Д^)といった感じなのだけど、
実は私も昔とあるスジのお店で似たような
シチュエーションに置かれたことがある。
今この状態で大地震とか火事になったら、
一巻の終わりだな。つかこのまま誰かに
見つけられても一巻の終わりだけど(笑)
さあ俺、どうすんの?どうすんの?
と言われてもどうすることも出来ない。
手は繋がれてるし動けないし、大声出して
も誰も気づかない。要するに「詰み」の
状態なわけで。イメージ 6

正直オバハンがひたすら寝っ転がってる状
況からどうお話が面白くなるのかと言うとこ
ろだと思うのだけど、
本作の原作はかのスティーヴン・キング
ご存知モダンホラーの帝王様である。
絵面は至って地味ながら、ここから全く
一筋縄では行かない展開が待っている。
ハラハラドキドキのサスペンススリラーと
趣は異なるけども、ひたすら底意地の悪い
疑心暗鬼系の心理スリラーの傑作と相成
った。『ローズマリーの赤ちゃん』や『ババ
ドック』なんかが好きな人にはかなりハマる
オハナシかと思う。
一瞬で説明のつく日常の裂け目から、
ああでもないこうでもないと無限に広がる
悪夢にキングの真骨頂を見る思いがした。
にしても「映画向き」と常々言われながら、
キング独特の芳醇な語り口をこれほどまで
見事に置き替えた映画は未だかつてなかっ
たんじゃないだろか。
『デッドゾーン』も『スタンド・バイ・ミー』
も『グリーンマイル』も(そして『シャイニ
ング』も!)才能ある監督による優れた映画
ではあったが、キング小説の香りが存分に
堪能できる「映画化」ではなかった。
いやむしろフラナガンが当初より描いてきたイメージ 7
世界観自体がキング作品の影響の元に育
まれたものと推察される。
フラナガンの『オキュラス』を観たキングが
是非にと、本作の監督に推したという逸話も
納得。改めて、幼少期よりキングのベストセ
ラーに親しんできた世代の台頭を感じる。
現在巷では『IT/イット』が『死霊館』を
すっ飛ばして『エクソシスト』にも迫る
ホラー映画史上空前の大ヒットを飛ばし、
サマーシーズンにも『ダークタワー』が
トップを飾ったばかり。もしやキング映画のイメージ 8
再ブームがすぐそこまで来てるんだろうか。
個人的には誰かに「ファイアスターター」と
「ランニングマン」を「ちゃんと」撮り直し
て欲しいのだけど。
あと、『地獄のデビルトラック』と(笑)

最後に。主人公のオバハンに扮するは
カーラ・グギーノ。御年46歳。
『スパイキッズ』のおかーちゃん役や
『ナイト・ミュージアム』の根暗な司書さん役
が有名なところだけど、近年では
『ウォッチメン』や『エンジェル・ウォーズ』イメージ 9
といったザック・スナイダー作品での
妖しい美魔女ぶりが印象的。
中年女性ならではの据えた色気とミステリ
アスな雰囲気を纏わせながら、それでいて
だらしない生活臭と言うか親しみやすさと
言うか、なんともクセになる魅力を持った
女優さんで、ジェシー役はこの上ない適役
じゃないかと思う。かくいう自分も『人食
い人魚伝説』の頃からのファンでした。

映画『ヒットマンズ・ボディガード』~I always love you, motherfucker!

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原題 "THE HITMAN'S BODYGUARD"イメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ、中国、オランダ他
製作 ボディガード・プロダクションズ
    ミレニアム・フィルムズ
    クリスタル・ピクチャーズ他
製作費 $30,000,000
国内配給 Netflix
配信開始日 2017年8月25日
上映時間 118分

監督 パトリック・ヒューズ
脚本 トム・オコナー
製作総指揮 ジェイソン・ブルーム
    クリスタ・キャンベル
    ボーズ・デヴィッドソン他
製作 デヴィッド・エリスン
    マーク・ギル
    ダナ・ゴールドバーグ他
撮影 ジュールズ・オラフリン
音楽 アトリ・オルヴァーソン
編集 ジェイク・ロバーツ
配役 エレイン・グレンジャー
    マリアヌ・スタニシェワ
美術 ラッセル・デ・ロザリオ
衣装 ステファニー・コリーイメージ 2
出演
ライアン・レイノルズ:ブライス
サミュエル・L・ジャクソン:キンケイド
ゲイリー・オールドマン:ドゥコビッチ
エロディ・ユン:アメリア
サルマ・ハエック:ソニア
ジョアキム・デ・アルメイダ:副局長
ディネ・ヤウストラ:局長

鑑賞 2017年10月11日
ネット配信(Netflix) 字幕版
★★★★☆

Netflix強化月間実施中。
今更ながら、そのあまりな便利さと手軽さに
驚くことしきり。
このまま行けば「DVDレンタル」なんかは
近い将来になくなってしまうだろうと思う。
ネットの繋げられる大型のディスプレイを
導入しようかとか本気で考え中。
あ、決してネトフリの回し者ではないので
念のため。

さて本作もNetflixのオリジナル作品。
アメリカ本国ではサマーシーズンにイメージ 3
劇場公開と同時にネット配信も開始と言う
大胆な趣向で話題になった。
だって、劇場で大ヒットを飛ばしてる最新の
映画が自分の家で即観れてしまうのだ。
そりゃ普通の映画ファンなら「入ってみよう
かなあ」とか思わないはずがないわけで。
特に本作、日本ではNetflixオンリーの取り
扱い。DVDも当然出ない。
だからTSUTAYAに走ってもありませんよ。
バッタもんの『ヒットマン・ボディガード』
はあるけど(爆)
普段この手のB級アクション映画は基本
スルーなんだけど、「たまにはこういうのも
観てみるか」という気分も乗り、クリック一発。

ポスターの絵面からお察しの通り、
あの『ボディガード』を能天気にパロった
アクションコメディ。
「オレちゃん」ライアン・レイノルズが
腕利きのボディガード役なのだけど、
その守る相手がホイットニーじゃなくて
サミュエル・L・ジャクソンなんである。
絶世の歌姫ならぬ、伝説の殺し屋ダリウス・
キンケイドという役どころ。
暴虐の限りを尽くした東欧の独裁君主の罪
問うために、この殺し屋が司法取引に応じ
証言をすることになる。イメージ 4
もちろん独裁君主も並みの悪党ではない
から、国元から手練れをわんさと送り込んで
キンケイドを消しにかかる。
そしてこの厄介極まりないマルタイを引き受
けることになってしまったトリプルA級の
ボディガード、マイケル・ブライス。
収監されるマンチェスターから国際裁判が行
われるオランダはハーグまで「伝説の殺し屋」
を無事送り届けろ!…というオハナシ。

いや、面白かったなあ。正直このテンプレで
ハズす方がどうかとも思うけど、王道至極の
お気軽お手軽バディムービー。
『48時間』や『ミッドナイト・ラン』あたり
には勿論遠く及ばないけども、それでも万人
に無難におススメできる一本。
「今日はナニみようかなあ」と
ネトフリのトップページの前で迷ったら、
とりあえずコレ行っとけと言いたい。
とにもかくにもサミュエル兄貴の魅力が
大爆発。
「がっでえむまざふぁか!!」
この前の『キングコング』では途中までしか
言わせてもらえなかったけど、スラングを捲し
立てながら人をバリバリぶっ殺す、怒涛の
イメージ 5ミュエル節が存分に堪能できますよ。
これに始終迷惑そうな顔でツッコミを入れる
ライアンの相方ぶりもジャストフィット。
独裁者役ゲイリー・オールドマンも安定の
クソっぷりだったけども、やはり圧巻は
サミュエル嫁に扮したサルマ・ハエック。
これまでもロドリゲス作品なんかで気が強く
てエロなラテン女を演じていたけども、
そのイメージをフルに活かした弾けっぷり。
アレは惚れるよ。一緒にいたくはないけど。

肝心のアクションはさすがにアクション畑の
監督さんだけあって、ガンファイトからカース
タント、ビル内の接近戦など、手を変え品を
変えしっかりと作り込まれた見せ場の連続で
飽きさせない。ただやはりスケール重視とい
うよりはスピード感、限られた画面の中での
動きに特化した作りで、これもネット配信と
いう視聴環境を念頭に置いた上での狙い
であったかと。
こうしたデスクトップで楽しめるエンターテイ
ンメントというのは今後より一層増えて行くん
だろうし、それは中規模予算で作られるSFや
ホラーのジャンルにも可能性が広がる話じ
ゃないかと思う一方、どこか一抹の不安を
感じないでもない。

映画『リトルデビル』~ヨメの連れ子がダミアンだった件

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原題 "LITTLE EVIL"イメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 マンダレイ・ピクチャーズ
    ブルーグラス・フィルムズ
配給 Netflix
配信開始日 2017年9月1日
上映時間 95分

監督、脚本 イーライ・クレイグ
製作総指揮 イアン・ブリック
    マーク・モラン
製作 ジェイソン・マイケル・バーマン
    ニコラス・デヴィッド・ネスビット
    スコット・ステューバー
撮影 マシュー・クラーク
音楽 マルコ・ベルトラミ
    ブランドン・ロバーツ
    マーカス・トランプ
編集 ティア・ノーラン
配役 アンジェラ・ボーム
    メアリー・ヴァーニュー他
美術 メヘール・アーマッド
衣装 リン・ファルコナー
出演
アダム・スコット:ゲイリー
エヴァンジェリン・リリー:サマンサ
オーウェン・アトラス:ルーカス
ブリジット・エヴァレット:アル
カイル・ボーンハイマー:ヴィクター
クランシー・ブラウン:ゴスペル師
サリー・フィールド:ミス・シャイロック

鑑賞 2017年10月13日イメージ 2
ネット配信(Netflix) 字幕
★★★★☆

またまたNetflixオリジナルからのセレクト。

不動産仲介業に勤める中年男ゲイリーは
エルフ顔の美女サマンサと結婚するが、
彼女にはルーカスという連れ子がいて、
それがちょっと…というか
かなりダークな雰囲気の男の子。イメージ 3
ロクに目を合わせず、口も聞いてくれない。
継父と連れ子なんてのはデリケートな間柄。
まだ小さいしムリもない話ではあるのだけど、
それにしても…
夜中に真っ暗な部屋でテレビの砂の嵐を眺
めてたから、「もう寝ろよ」と注意したら
いつも右手に付けている黒ヤギのパペット
に「俺の部屋から出ていけ!」と
ドスの利いた声で怒鳴られた。
昨日も学校の先生に「地獄に落ちろ!」と
罵声を発したらしく、先生は突発的に窓から
飛び降りて鉄柵に串刺しになってしまった。
思えば結婚式も散々だった。神父がいきなり
ラテン語で喚き散らし、巻き起こった大嵐でイメージ 4
式場はめちゃくちゃ。その間この子は涼しい
顔で微動だにしてなかった。
聞けば妻はこれまで何度も再婚をしていて
その夫はことごとく不慮の死を遂げているが、
この子の本当の父親はよく分からない。
なんでも妻は若かりし頃カルトにハマった時
期があったらしく、とある儀式の際に祭壇の
上で赤いペンキ(それ、たぶん血…)をぶっ
かけられた次の日にこの子を身籠ったんだ
とか。もうすぐこの子の誕生日。
6月6日。6歳になる。テレビで誰かが言っイメージ 5
ていた。「終末の日は近い」。
もしや。いや、もしかしなくともそう思う。
自分はまさに「グレゴリー・ペック」になって
しまったんじゃないだろうか…?

ヨメの連れ子が悪魔の子だった!

無垢な子供が禍々しい惨劇を引き起こす、
昔よくあった類のオカルトホラーと思いきや
監督は『タッカーとデイル』の
イーライ・クレイグ。
『タッカーとデイル』は山小屋スラッシャー、
ド田舎ホラーのあるあるネタが満載のメタ
コメディだったが、本作もまさにそれ。
『オーメン』、『エクソシスト』から
近年の『死霊館』等に通じるオカルト映画、
ポゼッション系をネタにしているのだけど、
「分かる人には分かる」と言った風な
所謂「マニア落ち」では決してなく、
このジャンルに対する一般的なイメージの
範囲内でしっかり笑わせてくれるのが
この監督のイイところ。
終始微笑ましい小ネタで引っ張りながら
ちょっとイイ話で締めるあたりなんかはイメージ 6
エドガー・ライトにも相通じるが、
イギリス人のあちらより幾分ギャグの
エッジは丸めで毒も少ない。
モノ足りない人もいるかとは思うけど、
アダム・サンドラーのちょっぴりビターな
ファミリーコメディみたいな仕上がりで
自分は好き。

自分は経験したことないけども、義理の
子供ってやっぱり「他人」なんだよな。
いくらヨメさんの「一部」と言ったって、
自分とはまるっと別の人間。
父親はどこの誰とも知れない馬の骨。
すぐに愛情を感じろという方が厳しい話だ。
あっちからすれば尚のこと、
まるで知らんオッサンに「今日からパパだよ」
とか言われても、ハイそうですかと受け入れ
られるはずなんかないわけで。
むしろ受け入れたくない、違うパパなんか
いらないと思う方が全然普通なわけで。
そして妻は自分の「妻」であるよりも
この子の「母」であることを優先する。
この子が心を閉ざすのは他でもない、
「貴方の愛が足りない」からだと。イメージ 7
道理は重々分かってても、血も通わず、
まるで言うことを聞かない「他人の子供」が
ふと悪魔に見えてしまうというのは決して
笑い話ではないのかもしれない。
義理の父親に継子が無慈悲な虐待を受け、
命を落とす話がなんと多いことか。
タイトルの"LITTLE EVIL"(小さな悪魔)は
そんな憎らしい他人の子供のみを指している
わけではない。狭量で不寛容な自分の心が
生み出した、ちっさな悪魔。
劇中のように、そんな悪魔の存在に悩み苦イメージ 8
しむ義理のお父さん達のセラピーが本当に
あると聞く。

ちなみに主人公と同じセラピーに通う義理
パパ仲間の一人を女性が演じている。
劇中では特に明言しておらず、見ようによっ
ては男に見えないこともないのだけど、
これはそもそも女性という設定なんだろう。
性同一性障害かなんかのジェンダー女性が、
ある女性と結婚して「義理の父親」となった。イメージ 9
そんな義理の父親が「いろいろあるけど」、
そんないろいろを取っ払って遂に「最高の
パパ」賞を貰うに至る、というなんとも
最高のエピソードになっていたわけで。
例の「ホモ尾田ホモ夫」について
「差別だあ!」と顔真っ赤にして怒った人も
「所詮お笑いじゃん」とか流した人も、
この「お笑い」を少し参考にされるべきかと。

映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』~モンキーパニック!ミュータント殺人猿大襲来

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原題 "RISE OF THE  PLANET OF THE APES"イメージ 1
製作年度 2011年
製作国 アメリカ、イギリス、カナダ
製作 20世紀フォックス
    デューン・エンターテインメント
    チャーニン・エンターテインメント他
製作費 $93,000,000
国内配給 20世紀フォックス
日本公開 2011年10月7日
上映時間 105分

監督 ルパート・ワイアット
脚本 リック・ジャファ
    アマンダ・シルヴァー
製作総指揮 トーマス・M・ハメル
製作 ピーター・チャーニン
    ディラン・クラーク
    リック・ジャファ他
撮影 アンドリュー・レスニー
音楽 パトリック・ドイル
編集 コンラッド・バフ
    マーク・ゴールドブラット
配役 デブラ・ゼイン
美術 クロード・パレ
衣装 レネ・エイプリル
VFX WETAデジタルイメージ 2
出演
アンディ・サーキス:シーザー
ジェームズ・フランコ:ウィル
フリーダ・ピント:キャロライン
ジョン・リスゴー:チャールズ
ブライアン・コックス:ランドン
タイラー・ラビーン:フランクリン
デヴィッド・オイェロウォ:ジェイコブズ

鑑賞 2017年10月16日
Blu-ray 字幕
(発売元:20世紀フォックス・ホームエンターテインメント・ジャパン)
★★★★☆

絶賛公開中(!?)『猿の惑星:聖戦記』
を観る前に、予習ということで再見。

改めて、「安い」。
おサルのCGは今の目でなくともクオリティ
低めだし、お話の方もすさまじく穴だらけで
ツッコミどころ満載。
そもそも新薬の影響で驚異的な知能を得た
変異ザルが人間様に襲い掛かる
とか、
一体どこのB級アニマルパニックですか?とイメージ 3
言った感じなわけで。
アサイラムやロジャー・コーマンのやっすい
CGバカ映画と大差ない。
シネコンで堂々拡大ロードショーというより
かは地上波放送の深夜枠なんかの方が
むしろしっくり来てしまう。

もう少しなんとかならなかったのかなあ。
ロメロのリビングデッドもそうだったけど、
猿が人間に取って代わる能力を得るに至っ
た「理由」を殊更語って聞かせる必要はなか
ったと思うし、じゃないにしても遺伝学方面の
ウンチクや黙示録的な意味合いで観客を
納得させることだって十分出来たと思うの
だけど。
クスリとか(失笑)放射能とか(泣笑)、
くだらないにも程がある。
最後に新薬からパンデミックとか蛇足の
極み。『バイオハザード』じゃないんだから。
まずこんな「スペクタクル大作のフリして
B級のホラ話」という屈託のなさが
『猿の惑星』という企画のイイとこなわけで、
あまり上段に構えなければソツなく仕上がっ
た優良作と言えないこともない。
$1億を切る中規模予算で、そして100分イメージ 4
というタイトな尺の中にこれだけのスケール
感やサーガ性を盛り込んでみせた製作陣を
賞賛すべきか。

果たしてここからどうやって自由の女神に
持って行くのか。
『グレートウォー』に向けて逸る気持ちを
抑えつつ、第2作『ライジング』へと続く。
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