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Channel: 玉ホラ日記
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映画『ジョン・ウィック:チャプター2』~男はこうありたいね。by AMEX

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原題 "JOHN WICK : CHAPTER2"イメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ、香港、イタリア、カナダ
製作 サミット・エンターテインメント
    サンダーロード・ピクチャーズ
    87イレブン
    ライオンズゲート他
製作予算 $40,000,000
国内配給 ポニー・キャニオン
日本公開 2017年7月7日
上映時間 122分
監督 チャド・スタエルスキ
脚本 デレク・コルスタッド
製作総指揮 デヴィッド・リーチ
    キーユン・ロン
    ケヴィン・フレイクス
    ロバート・ベルナッキ他
製作 ベイジル・イワニーク
    エリカ・リー他
撮影 ダン・ローストセン
音楽 タイラー・ベイツ
    ジョエル・J・リチャード
編集 エヴァン・シーフ
配役 ジェシカ・ケリー
    スザンヌ・スミスイメージ 2
美術 ケヴィン・カヴァナー
衣装 ルカ・モスカ    
出演
キアヌ・リーヴス:ジョン・ウィック
リカルド・スカマルチョ:サンティノ
イアン・マクシェーン:ウィンストン
ルビー・ローズ:アレス
コモン:カシアン
ランス・レディック:シャロン
ローレンス・フィッシュバーン:ボウリー
フランコ・ネロ:ジュリアス

鑑賞 2017年7月11日
仙台東宝シネマズ 字幕
★★★★☆

キアヌ・リーヴスというひとは、
地下鉄で新聞読むわクツはボロボロに
なるまで履きこむわ、来日の度に
お気に入りのラーメン店をハシゴして
挙句の果てには激太りとか、
およそ大スターらしからぬ行動がツトに
知られるところ。
こうした逸話が一般庶民には好ましく
感じられ、ともすれば「カッコイイ」
とか「人間性が出来てる」とか言われイメージ 3
たりするけども、私はどちらかと言えば
只の「変わり者」じゃないかと思う。
だって、小さなケーキを買って公園の
ベンチで一人クリスマスやってたとか、
ホームレスのおっちゃんとウイスキーを
ラッパで回してたとか、
どう考えたってマトモじゃない。
私もこの役者さんは好きだし
確かにカッコイイとも思うけど、
それよりこの人はなんだか「面白い」。
偏ってて、不器用で、ちょっと抜けてて。
周りにもごくたまにいるじゃないか、
決して狙ってるわけじゃないけど、
とにかく一緒にいて飽きない人。

こここそがキアヌという大スターの強み
であって、このところは敢えてこうした
「らしくなさ」を前面に出すことで
着実に芸風を広げてきている気がする。

最初におや?と感じたのは初監督を務めた
『ファイティング・タイガー』。
『マトリックス』の時に自分のスタント
ダブルだったタイガー・チェンをスター
にしてやりたいとの思いから製作に乗りイメージ 4
出したという経緯も泣かせるが、
ふてぶてしいラスボス役の嬉々とした演じ
ぶりにはキアヌが心底芝居を楽しんでいる
感があった。
イーライ・ロスの『ノック・ノック』では
2人のエロ美女に散々振り回された挙句に
大声で泣き喚くという空前絶後に情けない
無様を晒してのけ、その後の『ネオン・
デーモン』ではエル・ファニングさんに
夜這いをかけるモーテルの管理人役。
全ての男がエル・ファニングさんの美に
ひれ伏す中、唯一人ゲスな佇まいを崩さ
ないキアヌの存在は本作における一服の
清涼剤ですらあった。

そして『ジョン・ウィック』は一時低迷
していたキアヌが復活の狼煙を上げた作品
だけども、これが格好のハマリ役となった
のは他でもない、そんなキアヌが持つ
「面白さ」がフルに活かされた役柄だから
だと思う。
斬新でコーフンもののアクションは勿論の
こと、近年のキアヌとしては目の覚めるよ
うなカッコ良い役ではあるけども、
このジョン・ウィックという男は決してイメージ 5
全うなヒーローではない。
正義とか大義とか言った本来ヒーローの
行動原理と言えるものが彼にはない。
絆とか義理とかいうものがあるにはあるが、
どちらかと言えばそんな面倒なものを
シャラくせえとばかりにブチ壊してしまう
のがジョン・ウィックだ。
そもそも前作では一匹の子犬とお気に入り
の車のためにNYのロシアンマフィアを
まるっと壊滅させ、今回は自宅を燃やされ
たことに発奮して全世界の殺し屋を片っ端
から撫で切りにして行く。
そもそも子犬は名前すら付けてもらってい
ないし、車だって本作の冒頭でスクラップ
にされている。
モノ自体にまるで執着がないのは
キアヌ本人のヘンな逸話にも相通じるが
「誰が来ようと、全員殺す」
その台詞通り、自分に刃を向けるやつは
許さねえ。それだけ。
義憤なんかじゃなく、まるっきりの私怨。
もっと言えば「我(が)」だ。
親バカが高じてパリに死体の山を築いた
リーアム・ニーソンの『96時間』も
極端だったがこちらはもっと酷い。イメージ 6
正直これでイイのかと言いたくもなるが、
でもそこが面白い。
そして行く先々でアメックスみたいな
カスタマーサービスが受けられる裏社会の
大ボラ的世界観に、この偏ったキャラが
いかにもマッチする。

先の『ファイティング・タイガー』の件も
そうだったけど、『マトリックス』製作時の
仲間には本当に感謝の気持ちが強いようで、
本作も当時のスタントマンだったチャド・
スタエルスキとデヴィッド・リーチに
成功してもらいたい一心で主役を買って
出たんだとか。
ひさびさの2ショットだったローレンス・
フィッシュバーンもやはりそういうこと
なんだろうかね。
すませんキアヌ、やっぱりいい奴だな(笑)
こうしたノリノリの人間関係が作品に
反映されるのはとてもイイことじゃないか
と思うわけで。
続く『チャプター3』が既に製作が始まっ
たとか。もちろん主要スタッフは一緒。
公開はまだ未定ながら、全く以て鉄板の
期待しかしてこない。

映画『パイレーツ・オブ・カリビアン / 呪われた海賊たち』~ヨーホー冒険の始まりだ

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原題 "PIRATES OF THE CARIBBEAN : イメージ 1
THE CURSE OF THE BLACK PEARL"

製作年度 2003年
製作国 アメリカ
製作 ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
    ジェリー・ブラッカイマー・フィルムズ
製作予算 $140,000,000
国内配給 ブエナビスタ・インターナショナル
日本公開 2003年8月2日
上映時間 143分

監督 ゴア・ヴァ―ビンスキー
脚本 テッド・エリオット
    テリー・ロッシオ
    スチュアート・ビーティー他
製作 ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮 ポール・ディースン
    ブルース・ヘンドリクス
    チャド・オマーン他
撮影 ダリウス・ウォルスキー
音楽 クラウス・バデルト
編集 スティーヴン・リフキン
    アーサー・シュミット
    クレイグ・ウッド
配役 ジェニファー・アレッシ
    ロナ・クレス
美術 ブライアン・モリスイメージ 2
衣装 ペニー・ローズ
VFX監修 ジョン・ノール(ILM)   
出演
ジョニー・デップ:ジャック・スパロウ
ジェフリー・ラッシュ:バルボッサ
オーランド・ブルーム:ウィル・ターナー
キーラ・ナイトレイ:エリザベス・スワン
ジャック・ダヴェンポート:ノリントン大尉
ジョナサン・プライス:スワン総督
ケヴィン・マクナリー:ギブス

鑑賞 2017年7月13日
Blu-ray 字幕
★★★★☆

東京ディズニーランドのアトラクション
「カリブの海賊」はゲートからワールド
バザールを潜ってすぐ左手、ちょうど
アドベンチャーランドの入口にある。
我が家もそうなのだけど、来場したら
まずここからと言う向きは多いんじゃ
なかろうか。
比較的待ち時間が少ないし、身長制限も
ほぼないから家族みんなで楽しめる。
(もっとも今みたいな映画公開時にはイメージ 3
それなりに混雑するようだけど)
そしてなんと言っても「さほど面白くも
ない」というのがミソである。
いきなり『スプラッシュマウンテン』や
『スター・ツアーズ』といった人気アト
ラクションに乗ってしまうとその後が
ツライ。それでいてナニゲにしっかり
作り込んであるので、手っ取り早く夢の
国に来た実感に浸ることが出来る。
「さあ、次はどこに行こうか?」
所謂「序の口」としては格好の
アトラクションじゃないかと思うわけで。

このシリーズ、通称「パイカリ」も
自分としてはそんな「序の口」的な位置
づけの映画である。
決してつまらなくはないけども、かと言っ
て鼻息荒くなるほど面白いわけでもない。
ヒトにも激押しはしないけど、
え、観てないの?じゃあとりあえず観と
けば?みたいな、そんな感じ。

安心安全のディズニー・ブランド。
そして毎度きっちりお腹いっぱいに
してくれる安定のブラッカイマー印。イメージ 4
最新作『最後の海賊』を観る前に
オサライをしておこうとBDボックスを
手に取ってみたのだけど、
改めて感じたのはエンタメ大作としての
バランスの良さ。
ハイバジェットではあるけども決して
大味ではなく、かなりマニアックな
ファンタジーのツクリコミ。
アトラクションの再現度も去ることながら、
台詞の随所に差し挟まれた蘊蓄の数々はイメージ 5
海賊に造詣が深いという脚本家スチュアー
ト・ビーティによる成果であろうし、
有象無象の端役にまでいちいち意匠を施し
たキャラクターの魅力はヴァ―ビンスキー
作品の大きな特徴でもある。(反面ムダに
長いというのもまた然り)

というわけでしかと「序の口」に立ってイメージ 6
しまったので、ここからずんずんと奥へ
進んで行って、『最後の海賊』に駆けこ
もうと考えている次第。
いつのまにか「海の藻屑」にハマって
しまってたらどうしよう(汗)


それと、おサルが可愛すぎる件

George A. Romero "The Lord of the Dead"

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どうぞ天国に行かれますように
地獄はもういっぱいですよ

映画『パイレーツ・オブ・カリビアン / デッドマンズ・チェスト』~タコ船長と愉快な仲間たち

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原題 "PIRATES OF THE CARIBBEAN :イメージ 1
 DEAD MAN'S CHEST"

製作年度 2006年
製作国 アメリカ
製作 ウォルトディズニー・ピクチャーズ
    ジェリー・ブラッカイマー・フィルムズ
    セカンド・メイト・プロダクションズ
製作予算 $225,000,000
国内配給 ウォルトディズニー・ピクチャーズ
日本公開 2006年7月22日
上映時間 151分

監督 ゴア・ヴァ―ビンスキー
脚本 テッド・エリオット
    テリー・ロッシオ
製作 ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮 ブルース・ヘンドリクス
    エリック・マクロード
    チャド・オマーン
    マイク・ステンソン
撮影 ダリウス・ウォルスキー
音楽 ハンス・ジマー
編集 スティーヴン・リフキン
    クレイグ・ウッド
配役 デニース・チャミアン
美術 リック・ハインリクスイメージ 2
衣装 ペニー・ローズ
VFX監修 ジョン・ノール(ILM)      
出演
ジョニー・デップ:ジャック・スパロウ
オーランド・ブルーム:ウィル・ターナー
キーラ・ナイトレイ:エリザベス・スワン
ジャック・デイヴンポート:ノリントン
ビル・ナイ:デイヴィ・ジョーンズ
ステラン・スカルスガルド:靴ひものビル
トム・ホランダー:ベケット卿
ネイオミ・ハリス:ティア・ダルマ

鑑賞 2017年7月15日
Blu-ray 字幕
★★★★☆

引き続きおさらい。
「海賊映画は売れない。」という大方
のジンクスを覆し、世界的なメガヒット
となった1作目『呪われた海賊たち』。
『ロード・オブ・ザ・リング』あたり
に端を発したか、こらイケるぞ。となる
と安易に「3部作」をブチ上げる風潮が
この辺りから蔓延しだしたが、(ここ数年
は幾つもの物語を包括的にクロスオーバーイメージ 3
させる「シネマティック・ユニヴァース」
がこれに替わりつつあるが)本作もそんな
「3部作」の第2作として作られたもの。
3部作の2作目というのは所謂「中継ぎ」。
1作目の世界観を引き継ぎながらも更に
風呂敷を大きく広げ、来たる大団円に
繋げなきゃならない。
1作目を観てない人はまず論外だし、
続いて観に来た人は「乞うご期待!」と
お預けを食らい、なんとも中途半端な思
いで劇場を後にする。
これ一本で完結する前提になってないのだ。

それでも、私は「パイカリ」シリーズで
この2作目が1番好きだ。
フェイバリットと言ってもいい。
この2作目だけDVDを所持していて、
これだけ何回も繰り返し観たりしてる。
それは他でもない悪役のタコ船長、
デイヴィ・ジョーンズのカッコよさ。
丁度CG映画に辟易してた頃だったのだ
けど、これには正直ぶったまげた。
顔からヒゲみたいに生えてる無数の
タコ足がずっとウネウネ蠢いてて、更に
これでグランドオルガン弾いちゃったり。
後頭部の袋?がフカフカしてたり、
ほっぺの横の「漏斗」からパイプの煙を
ふかーっ!と吐き出す辺りも萌えポイント。
そしてフラれてハートブレイクした自分
の心臓をラブレターと一緒に箱に詰めてイメージ 5
南の島の砂浜に埋めるとか、乙女か(笑)

ちなみにデイヴィ・ジョーンズはこの
2作目から登場するキャラクターだけど、
1作目でもその名前は何回も出ている。
例えばウィル・ターナーがバルボッサに
「娘を離さなければ、自分はデイヴィ・ジ
ョーンズの監獄に行くぞ」と脅す件がある。
デイヴィ・ジョーンズとは船乗りの間に
伝えられる海の悪魔のことで、
"DAVI JONES' LOCKER"イメージ 4
(デイヴィ・ジョーンズの監獄)に行くと
いうのは、船が沈没したり溺れたりして
「海の藻屑になる」ことを意味するのだそう。
つまり民間伝承でオナジミだった海の悪魔を
CGモンスターにしちゃったのが
このデイヴィ・ジョーンズというわけだ。

このタコ船長を筆頭に、亡霊船フライング
・ダッチマンのクルーたちがどれもこれも
素晴らしいツラ構えで。
ハンマーヘッドにノコギリエイ、イメージ 6
カニやらエビやら深海魚やら、
いちいち作り込まれたザコキャラの数々は
モンスター好きとしては眼福の至り。
ディズニーだというのに中途半端なデフォ
ルメに留まらず、海底のスエた磯臭さが
漂ってきそうな汚しっぷりもアッパレ。
そう言えばこの亡霊船クルーの中でも
重要な役柄「靴ひものビル」を
北欧の名優ステラン・スカルスガルドが
演じているのだけど、
実は外国人の顔認識能力に欠ける私はイメージ 7
この人とジェフリー・ラッシュの見分けが
付かない。なもんで、ほっぺにヒトデを
貼り付けてコンブのワンレンというイデ
タチの「靴ひものビル」が出て来た時は、
バルボッサがオバケになって出て来たかと
勘違いをしてしまった。
ついでに言うとタコ船長の中のヒト、
ビル・ナイも素の顔だとジョン・ハート
あたりと間違える。困ったもんだ。

映画『パイレーツ・オブ・カリビアン / ワールド・エンド』~ジョニーデップの穴

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原題 "PIRATES OF THE CARIBBEANイメージ 1
 : AT WORLD'S END"

製作年度 2007年
製作国 アメリカ
製作 ウォルトディズニー・ピクチャーズ
    ジェリー・ブラッカイマー・フィルムズ
    セカンドメイト・プロダクションズ
製作予算 $300,000,000
国内配給 ブエナビスタ・インターナショナル
日本公開 2007年5月25日
上映時間 169分

監督 ゴア・ヴァ―ビンスキー
脚本 テッド・エリオット
    テリー・ロッシオ
製作 ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮 ブルース・ヘンドリクス
    エリック・マクロード
    チャド・オマーン
    マイク・ステンソン
撮影 ダリウス・ウォルスキー
音楽 ハンス・ジマー
編集 クレイグ・ウッド
    スティーヴン・リフキン
配役 デニース・チャミアンイメージ 2
美術 リック・ハインリクス
衣装 ペニー・ローズ
VFX監修 ジョン・ノール他(ILM)      
出演
ジョニー・デップ:ジャック・スパロウ
ジェフリー・ラッシュ:バルボッサ
オーランド・ブルーム:ウィル・ターナー
キーラ・ナイトレイ:エリザベス・スワン
ビル・ナイ:デイヴィ・ジョーンズ
トム・ホランダー:ベケット卿
ステラン・スカルスガルド:靴ひものビル
ネイオミ・ハリス:ティア・ダルマ
チョウ・ユンファ:サオ・フェン

鑑賞 2017年7月18日
Blu-ray 字幕
★★★☆☆

シリーズおさらい3作目。
実は。この3作目にはあまりいい
イメージが無い。
封切当時、
第2作『デッドマンズ・チェスト』が
私的にはすこぶる面白かったんで
かなり期待して観に行ったのだけど、イメージ 3
正直期待外れもいいとこで。
まずは私の愛するタコ船長デイヴィ・
ジョーンズの扱いがあまりに酷過ぎる。
前作ではあんなにラスボス感満載だっ
たのに、宝箱の中の心臓を握られると
逆らえないというチョロい設定のせいで、
縦ロールの貴族やらその子分やらに
アゴで使われ放題のザコっぷり。
自然、出番は少ないし影も薄い。
最終兵器のクラーケンもいつの間にか
廃棄処分になってるし。
いくらキャラが増えすぎたからって、
大活躍した好敵手にこんなその他大勢
みたいな扱いはないんじゃないか。
ドラゴンボールじゃないんだから。

そしてなにより尺が長い!
168分て、ほとんど3時間(笑)
ゴア・ヴァ―ビンスキーはディテールに
凝る人だから長めになるのは分かるのだ
けど、明らかにストーリーが捻り過ぎ、
回り込み過ぎ、そしてムダなプロットの
詰め込み過ぎ。開幕20分あたりで
早々に「中だるみ」がやって来て、
それがほぼクライマックスまで続く。イメージ 4
そう言えば初見時に劇場で寝オチして
しまったのを思い出した。
そもそも砂浜でジョニー・デップが
延々一人芝居やってるクダリとか
なんとかならなかったんだろか。
まずはある意味「ジョニデ様」の
映画なわけで、ヴァ―ビンスキーも
スパイク・ジョーンズみたいのを
やりたかったのかも知れないけど、
正直なとこ自己満のパフォーマンスを
見せられてる感じしかしなかった。

「9人の海賊」の件もずいぶんと尺を
取った割には盛り上がらなかったな。
ホントだったらジャックとバルボッサが
喧々諤々やりながら七つの海を渡り歩き、
世界の海賊たちを説き伏せたり
時には刃を交えたりしながら、
最後に力を合わせて帝国主義を打ち倒す
…というのがアツい展開だったんじゃな
いかと思うのだけど(まずこれをやった
ら4時間でも収まるはずがないが)、
結局はただおっきな渦潮を起こしただけ…
って、あまりに下らなくないですか。

まずもっとも、イメージ 5
大道具さん乙!スタントマンさん乙!
といった感じのチャンバラと大海戦は
本シリーズ共通の見どころだけども、
(実際ホントに大変な思いをしてるの
はCG製作班なのかもしらんけど)
この3作目のそれはやはりクライマック
スに相応しい完成度。
これに諸々のロマンスやら親子の絆や
大団円やらをブチ込んで、「3部作」を
きっちり〆てみせた点は流石と言える。

ここまで通しで観終わって、
「やり切ったぜ…」みたいな達成感
(と若干の徒労感)があったけども、
恐らくは作り手のほとんどもそんな思い
であったことかと。
この4年後にまさかの「第4作」が
ジョニデ以外のキャスト、スタッフを
ほぼ一新して作られたけども、
私もまるで観に行こうとは思わなかった。

映画『パイレーツ・オブ・カリビアン / 生命の泉』(2011)~ジョニデ危機一髪

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原題 "PIRATES OF THE CARIBBEANイメージ 1
 : ON STRANGER TIDES"
製作年度 2011年
製作国 アメリカ、イギリス
製作 ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
    ジェリー・ブラッカイマー・フィルムズ
    ムービングピクチャー・カンパニー
製作予算 $250,000,000
国内配給 ウォルト・ディズニー・スタジオズ
日本公開 2011年5月20日
上映時間 136分

監督 ロブ・マーシャル
脚本 テッド・エリオット
    テリー・ロッシオ
原作 ティム・カーンズ 「幻影の航海」
製作 ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮 ジョン・ドルーカ
    チャド・オマーン
    マイク・ステンソン
    バリー・ウォルドマン他
撮影 ダリウス・ウォルスキー
音楽 ハンス・ジマー
編集 デヴィッド・ブレナーイメージ 2
    ワイアット・スミス
配役 ルーシー・ビヴァン
    キャシー・ドリスコル他
美術 ジョン・ミーア
衣装 ペニー・ローズ
    マシミリアーノ・アミクッチ(帽子)
VFX監修 チャールズ・ギブソン他    
出演
ジョニー・デップ:ジャック・スパロウ
ペネロペ・クルス:アンジェリカ
ジェフリー・ラッシュ:バルボッサ
イアン・マクシェーン:黒ひげ
ケヴィン・マクナリー:ギブス
サム・クラフリン:フィリップ
アストリッド・べルジュ・フリスベ:シレーナ
スティーヴン・グラハム:スクラム

鑑賞 2017年7月20日
Blu-ray 字幕
★★★☆☆

実は初見。所謂「3部作」でもうお腹
いっぱいで、この4作目に至っては
正直「またやるの…?」と言った感じで
完璧スルーしちゃってたのだ。(もっともイメージ 3
封切は震災直後の真っただ中。ぶっちゃけ
それどころじゃなかったわけだが)
そして作り手側としても恐らくは同じ
思いであったかと思われ。
プロデューサーのブラッカイマーは元より、
スタッフ、キャストはみんな3本で終わり
のつもりであったらしい。
ただやはり当代随一のヒットシリーズ。
会心のアタリ役を離したくないジョニデと
更にドル箱を重ねたいディズニー首脳陣の
ゴリ押しで「4作目」にゴーが掛かって
しまったんだとか。

監督ゴア・ヴァ―ビンスキーが続投を拒否、
ジョニデと並んでの3枚看板だった
オーランド・ブルームも
キーラ・ナイトレイも出ないというのは
こうした経緯もあってのことかと。
ただだからと言ってジョニデを筆頭とする
残留組としてはただ濡れ手に粟と言うでも
なく、彼らなりに新たな仕切り直しを図っ
ていたんではないかと思われ。
ガチャガチャしたチャンバラや撃ち合いは
ほどほどに。ウィットに富んだ会話の妙と
コミカルな掛け合い。そしてロマンス。イメージ 4
大航海時代のエキゾチックな異国情緒を
背景にしたオトナのアドベンチャー。
元々アクション俳優のガラでもない
ジョニデの「オレ様映画」としても、
これは意図したシフトであったかと思う。
3部作が『インディ・ジョーンズ』とすれば、
こちらは『ロマンシング・ストーン』の趣だ。
まるで畑違いと思われたロブ・マーシャルの
起用も、この狙いからすると逆に適役であっ
たのかもしれない。

ただこの仕切り直しが上手く行ったかと
言えば決してそうではなく。
ホンが相変わらずとっ散らかってるので
作劇のクオリティが上がった感じがせず、
見せ場のトーンを抑えた分
かえって「盛りが少なく」なった印象。
ペネロペ・クルス相手に嬉々として下ネタに
興じるジョニデはオトナの余裕と言うよりは
高田純次のノリに近い。
のらりくらりと掴みどころが無いキャラは
毎度のことだが、今回に至ってはまるで
ストーリーを引っ張ってない。
ジャック・スパロウがいなくともイメージ 5
オハナシが成り立ってしまうテキトーぶり。
これじゃ完全に狂言回しだ。
新しいと言えばそうかもしれないけど、
5500万ドルものギャラ(総製作費の1/5)
を貰っといてこれはないんじゃないの。

悪役の方も大好きなタコ船長はお役御免。
代わりに出て来たのは「黒ひげ」なる海賊の
大親分。黒ひげとか言うから、てっきり樽に
剣をブスブス刺したりするのかと思ったら
そんな件はまるでなし(当たり前)。
なんでも18世紀にカリブ沿岸で大暴れした
実在の海賊なんだそうで。
扮するイアン・マクシェーンは
『ジョン・ウィック』で裏社会専用ホテルの
支配人をやってた人。
貫録十分、なんとも渋いワルの似合う役者さん
なのに、不思議とこれも影が薄い。
ロープを自在に操るヘンな超能力みたいのを
使わせたのが逆に良くなかった気もする。
そんな中、すっかりレギュラー化した
バルボッサ役ジェフリー・ラッシュの続投が
唯一の救いだった。
ねずみ男のごとくに日和見を決めながらもイメージ 6
胸の奥にアツいものを秘め、最後もこの男
がキッチリ締めてみせた。
ジョニデの相方ぶりもこなれたもんで、
この人がいたからジョニデも体面を保てた
ようなもん。いやむしろこの人が事実上の
主役だったと言って差し支えない。

まずなんだかんだ言いながらも、
こうやってキャラや世界観にどっぷり浸か
りながら観るのがシリーズものの醍醐味。
さっそくこの足で最新作『最後の海賊』を
観に行くとしよう=3

映画『パイレーツ・オブ・カリビアン / 最後の海賊』(2017)~死人にリセットなし

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原題 "PIRATES OF THE CARIBBEANイメージ 1
 : DEAD MEN TELL NO TALES"
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 ディズニー
    ジェリー・ブラッカイマー・フィルムズ
    インフィニタム・ニヒル
製作予算 $230,000,000
国内配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
日本公開 2017年7月1日
上映時間 129分

監督 ヨアヒム・ローニング
    エスペン・サンドベリ
脚本 ジェフ・ネイザンソン
製作 ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮 チャド・オマーン
    テリー・ロッシオ
    マイク・ステンソン他
撮影 ポール・キャメロン
音楽 ジェフ・ザネリ
編集 ロジャー・バートン
    リー・フォルソム・ボイド
配役 ニッキ・バレットイメージ 2
    スージー・フィギス他
美術 ナイジェル・フェルプス
衣装 ペニー・ローズ     
出演
ジョニー・デップ:ジャック・スパロウ
ハビエル・バルデム:サラザール
ジェフリー・ラッシュ:バルボッサ
ブレントン・スウェイツ:ヘンリー・ターナー
カヤ・スコデラリオ:カリーナ
ケヴィン・マクナリー:ギブス
ゴルシフテ・ファラハニ:シャンサ
デヴィッド・ウェナム:スカフィールド
スティーヴン・グラハム:スクラム

鑑賞 2017年7月22日
仙台東宝シネマズ 字幕 IMAX
★★★★☆

やっと観に行ってきました。
さてどこで観ようと案じたのだけど、
個人的には「4DX」がどうもソソらず。
(揺れとか水とか来ると逆に覚めてしまう
のです。遊園地みたいに「遊び」に行く
つもりなら構わないんだけど)イメージ 3
新システムの「スクリーンX」にいたく
惹かれたのだけど、まだ日本ではお台場の
1ヵ所にしか設置されていない模様。
じゃあ。と、いつもの駅前東宝のIMAX
上映をチョイス。
3D抜きのIMAXは昨年の『シン・ゴジラ』
以来だったけど、自分的にはこれが一番
しっくり来るなあ。
3Dも体感もぶっちゃけ要らないっス。
スクリーンが大きくて音響が良ければ
それで十分。
にしても、4DXの劇場って水浸しに
なったりポップコーン散乱してたり、
掃除がおそろしく大変そう。
自分も若い頃に映画館のバイトをしたこ
とあるから分かるけど、ハイシーズンの
4DX上映館では絶対働きたくない。

さて最新作。
直前にシリーズのイッキ観をしたのも
あって、非常に楽しめましたです。
もちろんこれ単体で観ても可とは思うけど、
ウィル・ターナーの呪いの件とかイメージ 4
瓶詰めのブラックパールとか、
前のを観てないといまひとつ「?」という
感じのところも少なくない。
そしてやはり、アトラクションから飛び出
してきたような親しみやすいキャラクター
たちがこのシリーズの肝。
レギュラー級はもちろんのこと、途中から
出て来るやつや逆に退場するやつも含め、
「あ、あんときのお前か」と馴染みの顔に
なってこそフルに楽しめる類のものかと。
そもそもシリーズとはそういうものだけど、
この「パイカリ」は特にその性質が強い
シリーズかと思う。

だからこそ4作目では欠番だった
ウィル・ターナーとエリザベスのチョイ見
せがサプライズになりえたわけだが、
さすがに老けた。というのが正直なところ。
思えば1作目からもう14年も経つわけで、
仕方ないと言えばそうなのだけど。
もっとも鬼ディズニーはこの後もこの2人
をコキ使うつもりのようだけども、
今後はその「次世代」をメインに据えて
SWのハン・ソロとかレイアみたいな扱いイメージ 5
になるんだろうかね。くわばらくわばら。
そしてなんと言ってもジョニデ。
御年54歳。往年のメイクと衣装で
ドタバタ大立ち回りに奮闘する様はまさに
「老骨に鞭打って」といった感で痛々しい
が、この人ばかりは替えが効かない。
モーキャプではなく、他の役者を使って
「若かりし日のジャック」をフィーチャー
してきたのはもしやその布石だろうか。
一方、やっぱり最後は「あの男」が
ガッサリおいしいとこを持って行った感。
「うう。おめえってやつは…」
もっとも『ガーディアンズ・オブ・ギャラ
クシー』のヨンドゥと違って、
『パイカリ』は一端死んでしまっても
呪いを解けばリセットされちゃうので、
ぜんぜん泣けはしなかったけど。

存在感抜群の悪党とそのザコ軍団の
バリエーション豊かなツクリコミも
本シリーズの見どころ。
今回のボスキャラはスペインの名優
ハビエル・バルデム扮する
キャプテン・サラザール。イメージ 6
かつては無敵を誇ったスペイン艦隊の
艦長で、魔の三角海域に引きずり込まれ
無念の亡霊と化した「海の処刑人」。
髪の毛をユラユラ空に漂わせ(実体はまだ
海の底なので)、頭の後ろ半分も失われ、
ドス黒い血を吐きながらゼイゼイ喋る。
「よう、スパロロウ。」
スペイン訛りの巻き舌がまたキモい。
死亡当時そのままの姿で化けて出る『呪怨』
スタイルはシリーズ屈指のエグさで、
「PG13」(※保護者同伴により13歳
以上鑑賞可)のレイティングはいささか
甘いと思われるほど。
そう言えばいつもはキラキラ夜空の
ディズニーのオープニングロゴが
今回に限ってはドンヨリと薄暗い仕様に
なっていた。
もしや「ダーク・ユニヴァース」ならぬ
「ダーク・ディズニー」みたいなのを
仕掛けようとしてるんだろうか。
魔女やゴーストなど、実はホラー方面の
コンテンツも豊富に抱えるディズニー。
日頃は「ディズニーなんか…」と
小馬鹿にしがちなスレッカラシのホラー
マニアとしても期待を寄せたいところ。

全米最新映画ランキング 2017年7月21-23日

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BOX OFFICE TOP 10イメージ 1
weekend of July21-23, 2017


1. 『ダンケルク』
(1週目 興収計$50.5M)
クリストファー・ノーランの戦争映画。たぶん観ない

2. 『ガールズ・トリップ』
(1週目 興収計$31.2M)
下世話系ガールズコメディ。こういうの相変わらず強いね

3. 『スパイダーマン:ホームカミング』
(3週目 興収計$251.9M)

4. 『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
(2週目 興収計$98.2M)
シリーズ3作目。監督は引き続きマット・リーヴス。

5.  "VALERIAN AND THE CITY OF A THOUSAND PLANETS"
(1週目 興収計$17.0M)イメージ 2
リュック・ベッソンが懲りずに放つSFアドベンチャー大作。主演はデイン・デハーン。

6.  『怪盗グル―のミニオン大脱走』
(4週目 興収計$213.6M)

7. 『ベイビードライバー』
(4週目 興収計$84.3M)

8.  "THE BIG SICK"
(5週目 興収計$24.5M)

9. 『ワンダーウーマン』
(8週目 興収計$389.0M)
蓋を開けたらメガヒット。今度は期待してよさそうだね

10. "WISH UPON"
(2週目 興収計$10.5M)
犠牲と引き換えに願いをかなえる不思議な箱のオハナシ。監督は『アナベル/死霊館の人形』のジョン・レオネッティ。評判はなかなか悪いです。


こうしてみると、「全米ナンバーワンヒット!!!」とかって毎週変わるんだね


映画『WE GO ON - 死霊の証明 -』(2016)~ガチ悪霊vs.親バカママゴン

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原題 "WE GO ON"イメージ 1
製作年度 2016年
製作国 アメリカ
製作 フィルムド・イマジネーション
国内配給 ブロードメディア・スタジオ
日本公開 2017年2月7日
(2017未体験ゾーンの映画たち)
上映時間 89分

監督、脚本、編集 アンディ・ミットン
    ジェシー・ホーランド
製作総指揮 ハンク・アボット
    マリウス・ホーガン
    ローラ・レスター
製作 ローガン・ブラウン
    リチャード・W・キング
    アイリーナ・ポポフ
撮影 ジェフリー・ウォルドロン
音楽 アンディ・ミットン
美術 イ・ヨンオク    
出演
クラーク・フリーマン:マイルズ
アネット・オトゥール:シャーロット
ジョヴァンナ・ザカリアス:ジョセフィーナ
ジェイ・ダン:ネルソンイメージ 2
ローラ・ハイスラー:アリス
ジョン・グローヴァ―:エリスン博士

鑑賞 2017年7月25日
DVD 字幕
★★★★☆

どことなくスティーヴン・キング似の
青年マイルズは父親が死んでからというもの、
日々死への恐怖に怯えながら暮らしていた。
高いところ。尖ったもの。飛行機。船。
壊れそうなものや腐ったものを見るのもダメ。
とりわけ車の運転が怖い。
父親が自動車事故で死んだからだ。
なぜ「死」が怖いんだろう?
得体が知れないからだ。死んだあとどうなる
のか、皆目見当が付かないからだ。
じゃあ。「死んだあとはこうなる。」と
白黒ハッキリさせることが出来れば、
死は怖いものじゃなくなるんじゃないか。
そしてそれを証明できる人がきっとどこかに
いるはず。そう考えたマイルズは新聞に
こんな広告を貼りだした。

死後の存在を証明できた方に3万ドルイメージ 3
幽霊、天使、生まれ変わり等なんでも結構。
まずは情報をお寄せ下さい。
その中から私が信用できると思える方と
"We go on" お話を進めさせて頂きたく。

「2017未体験ゾーンの映画たち」の
ラインナップから。
こんなタイトルなもんだから
やや変則のゾンビ映画かと思ったら、
かなり真面目でリアル志向の
スピリチュアルホラーでありました。

「ガチ」な霊体験あったら言ってみい。
そんなのを呼び掛けたもんだから、
ネットや手紙で世界中から凄まじい量の
霊体験が寄せられて来る。
実際「ホントにあった!」系の製作局には
連日段ボールで何箱という投書が送られて
くるらしい。
もっともご周知の通り、そのほとんどが
捏造や妄想、宗教がらみ、悪フザケの類。
そんな中からマイルズは「これは。」と
思った者3人をピックアップする。
一人は科学的に霊障を証明することがイメージ 4
出来るという学者先生。
一人はえらく俗っ気のない女霊媒師。
そして世界中を訪ね歩き、遂にヘルレイ
ザーの箱みたいなのをゲットしたという
会社社長。

この3人に順繰りに会いに行くマイルズ。
車は乗れないから、バスに乗って…と
思ったらそこに母親が訪ねて来て、
「じゃあ私が乗せてってあげるわよ。
あんたが騙されるのを見逃すわけにも
いかないし」
というわけで、保護者同伴で心霊巡りに
繰り出して行く。
この母親役がアネット・オトゥール。
『スーパーマンⅢ』や『IT/イット』等で
ヒロインを務めたクール系の美人女優。
さすがに往年の美貌は見る影もないが、
このかーちゃんぶりがとてもイイ感じで。
目を離さずにはいられない。
世話を焼かずにはいられない。
もう、いい加減オトナなのは分かってる
んだけど。
過保護とか子離れできないとか言うけど、イメージ 5
やっぱり母親ってそういうもんかなと。
「あの女が死ねばいいのね?
分かった、ママが殺ったげる!」
息子のためなら鬼にでもなんでもなる。
どんな動物でも卵や仔を抱いたメスが
最も攻撃的で凶暴になる。
子を守る世の母親たちに比べれば、
あの世の恐ろしさなんか取るに足らない
ということか。

その気持ちはホントに心強いしイメージ 6
とても有難いんだけど、
それでも「お袋、もうイイから…」と
ついその手を払ってしまうのはなぜだろう。
死ぬのは怖い。病気になるのも怖い。
騙されたり。失業したり。年を取ったり。
この世はいろんなリスクでいっぱいだ。
でも「あっち行っちゃダメ」
「こんなことしちゃダメ」と
あらゆるリスクを取り払って、
安全なところでヌクヌク暮らすのが
果たして正解なんだろうか。イメージ 7
ある人が云う。
私達の人生は快楽や充足のためではない。
冒険-adventure-のためなのだ。
死やさまざまな境界から目を背けず、
自分がどこまで行けるのか。
どこまで世界を切り拓いて行けるのか。
だから、もう少しスピードを上げてみよう。
父さんが行ったよりも、もっと先まで。

監督のアンディ・ミットンと
ジェシー・ホーランドはイメージ 8
ホラーオムニバス『5フィアーズ』で
締めのエピソードを担当していた2人。
この時はヤケにトリッキーな手法に
偏った作り手という印象だったのだけど、
今作は一転、非常に丁寧な人物描写と
ストーリー展開の巧みさ、そして
スピリチュアルな世界の蘊蓄も深く、
しっかりしたドラマを紡ぐことも出来る
んだなあと認識を改めさせられた。
かなり地味で退屈なところもあるけども、
今年の「未体験」枠では随一の掘り出し
物と言っていいんじゃないだろか。

映画『ダゲレオタイプの女』(2016)~オゲレツタイプの男

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原題 "LA FEMME DE LA PLAQUE ARGENTIQUE"
製作年度 2016年イメージ 1
製作国 フランス、ベルギー、日本
製作 フィルムイン・エボリューション
    バルサザール・プロダクションズ
    フレイカス・プロダクションズ
    アルテ・フランス・シネマ
国内配給 ビターズ・エンド
日本公開 2016年10月15日
上映時間 131分

監督、脚本 黒沢清 
製作 ジェロム・ドプフェール
    吉武美知子他
撮影 アレジ・カヴュルシーヌ
音楽 グレゴワール・エツェル
編集 ヴェロニク・ランジュ
配役 アントワネット・ブーラ
美術 パスカル・コンシニュ
    セバスティアン・ダノ
衣装 エリザベト・メーウ
出演
タハール・ラヒム:ジャン
コンスタンス・ルソー:マリー
オリヴィエ・グルメ:ステファン
マチュー・アマルリック:ヴァンサン
マリク・ジディ:トマイメージ 2
ヴァレリ・シビラ:ドゥニーズ
ジャック・コラール:ルイ

鑑賞 2017年7月27日
DVD 字幕
★★★★☆

黒沢清監督が単身フランスに乗り込み、
ほぼオールフランス人キャスト、
スタッフで撮った作品。-とか聞くと、
偏屈で狭量なホラーオヤジとしては
「な~にがおフランスだよ!気取りや
がってええ」みたいなことをコップ酒
片手に言ってしまったりするのだけど、
まずそれはさて置き黒沢清さんと言えば
かつてはJホラーの第一人者として
鳴らした「世界のクロサワ」。
近作『クリーピー/偽りの隣人』も
なかなかエッジの効いた怪作であった。
監督的には再び「ノリノリ」の時期が
来ているのかと思い、手に取ってみた
のだけど。

「ダゲレオタイプ」とは-イメージ 6
18世紀にフランスで開発された、
ごく初期の写真撮影技術。
日本語では「銀板写真」とも呼ばれ、
長時間の露光を必要とするため
被写体は数十分から数時間ものあいだ
身動きをしないために専用の固定具で
身体を固定されなければならなかった。
現在の写真と異なってポジティヴ画像を
直接に得る撮影方法であり、つまりは
ダゲレオタイプで撮影された写真が
この世に1枚しか存在しないことをイメージ 5
意味する。

青年ジャンは高名な写真家ステファンの
アシスタントに応募をし、その場で
即採用となる。
ステファンはパリ郊外の古い屋敷に
スタジオを構え、そこで現在は使われな
くなった古の撮影技術「ダゲレオタイプ」
の再現を試みていた。
「これこそが本物の写真なのだ。
真の姿を銀板の中に映し込む。
そしてこの中で生き続けるのだ。永遠に」イメージ 3

屋敷にはもうひとり、ステファンの
一人娘マリーがいた。
父の撮影のモデルとして長時間拘束され、
その傍らで亡き母が大事にしていた
植物園の世話をする毎日。
でも。自分もそろそろ年頃。
外に出て、他の町で自由な生活を送りたい。
そう願っていた。
そんなマリーにジャンは惹かれて行く。イメージ 4
そして、外に出してやれないかと考える。

やっぱり生粋のホラー屋である黒沢監督。
ヌーベルヴァーグを気取るかと思いきや、
パリのオサレな街並みを捉えながらも、
淡い色遣いのそっけない画作りは
クローネンバーグの趣き。
(「固定具」のエロくて禍々しい感じ
なんかいかにもだった)
屋敷内の歪な空間設計やライティングにも
マリオ・バーヴァへの蘊蓄が窺えたり。イメージ 7
そんな中、
すうっ…と階段の上に消えて行く女の姿。
音もなく開いたドアの向こう側。
はためくカーテンの隙間、曇ったガラスの
向こうに「なにか」が見える。
紛れもない「J」の文法に鳥肌が立つ。
狙ってやったのか、ついこうなっちゃった
のかは判らないけども、欧米のクラシカル
なゴシックホラーに日本古来の「怪談」を
再構築してみせたあたりがとても面白く。
ひと頃ハリウッドでJホラーのリメイクが
流行ったけど、『呪怨』なんかこの手法だ
ったらもっと面白かったんじゃないかな。

終盤からの変調が陳腐なサイコスリラーに
墜ちた感じでいかにも残念だったけど、
これはこれでナシとも言いきれない。
「彼女」はいつ死んでいたのか。
「父」に彼女は見えていたのか。
「母」と「彼女」の関係は。
「彼」はいつ彼女に恋をしたのか。
"The Woman in the Silver Plate"
鑑賞後にあれこれ思いを巡らしてみるのも
また一興。

映画『ザ・マミー / 呪われた砂漠の王女』~ユニヴァーサル魂はどこ行った?

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原題 "THE MUMMY"イメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 ユニヴァーサル・ピクチャーズ
    ショーン・ダニエル・カンパニー
    シークレット・ハイドアウト
製作予算 $125,000,000
国内配給 東宝東和
日本公開 2017年7月28日
上映時間 110分

監督、原案、製作 アレックス・カーツマン
脚本 デヴィッド・コープ
    クリストファー・マクアリー
    ディラン・カスマン
原案 ジョン・スパイツ
    ジェニー・ルメット
製作総指揮 ジェブ・ブロディ
    ロベルト・オーチ
製作 サラ・ブラッドショウ
    ショーン・ダニエル
    クリス・モーガン
撮影 ベン・セレシン
音楽 ブライアン・タイラー
編集 ポール・ハーシュ
    ジーナ・ハーシュ他イメージ 2
配役 ルシンダ・サイスン
美術 ジョン・ハットマン
    ドミニク・ワトキンス
衣装 ペニー・ローズ
出演
トム・クルーズ:ニック・モートン
ラッセル・クロウ:ヘンリー・ジキル
アナベル・ウォーリス:ジェニー
ソフィア・ブテラ:アマネット
ジェイク・ジョンソン:ヴェイル
コートニー・B・ヴァンス:グリーンウェイ

鑑賞 2017年7月29日
仙台東宝シネマズ 字幕
★★★☆☆

評価筋は笑っちゃうくらいボロクソだし、
興業トップ10からも早々に消えてしまうし、
正直微妙な予感しかしてなかったのだけど。
どうにも気になってしまって仕方が無く、
週末のレイトショウに駆け込んだ。
DVDなんか出る頃にはすっかり観る気
失くしてるような気もしたし。
それだけ「ダーク・ユニヴァース」にはイメージ 3
期待してたということなんだけどね。

果たして劇場に行ってみると、
客の入りは半分以下といったところ。
仙台では一番客が入る駅前の劇場で、
初週の週末レイトでこの入りというのは
かなり厳しい。
ちなみに先週末に行った「パイカリ」は
3週目というのにほぼ満席だった。
ちょっと気になったのが、
週末の夜と言うのにアベツク層が少なく、
お一人様率が異様に高い。
大抵はわしらのような偏り型の映画ヲタク
だが、普段は一人で来なさそうな妙齢の
女性もチラホラいる。
やはりトム様の御威光なんだろうか。

果たして観てみたらば、そんなに「酷い」
というほどのもんでもない。
ごくありきたりな大量生産型のブロック
バスター。
見せ場はそこそこハデで楽しめるし、
トム様は相変わらず若手芸人みたいに
身体を張ってがんばってる。
尺の長さも手頃。
そしてお話はペラペラもいいところ。
「ちょっと映画でも行ってくっか」
そんな感じで観るには打ってつけの一本イメージ 4
かもしれない。

製作陣も恐らくはこうした
週末に繰り出すライト層をターゲットに
「ダーク・ユニヴァース」を構想したの
だろうが、残念ながら彼らは『アベンジ
ャーズ』のようには食いつかなかった。
ドラキュラやフランケンシュタインと
いったホラーのアイコンを
今風のダークヒーローに仕立て直し、
マーベルよりも暗めで、DCよりも軽
めな路線を狙ったのかと思われるが、
そもそも今回は「ミイラ男」をイントロ
デュースすることに失敗している。
共に埋葬された王女との因縁が
伝統的な「ミイラ男」のセオリーだが、
今回は王女の人外ぶりばかりを露出して
しまい、単なるCGホラーとして認識さ
れてしまった感がある。(実際ほとんど
『スペースバンパイア』だったし)
トム様はあくまでもトム様。
が、いつものカッコいいトム様が実は…!
というサプライズにしたかったのは分か
るのだけど、それが完全に裏目に出た。

そしてなにより「ダーク・ユニヴァース」イメージ 5
の構築を優先し過ぎ。
マーベルもそうだけど、
あんなのエンドロールの後にちょっと
カマす程度、それこそ後付けでも十分
繋がるオハナシなわけで。
ラッセル・クロウもチョイ見せ程度で
「私の名はジキル…」とか
ワケありを含ませとけばイイのに、あそこ
まで見せちゃったら興醒めもいいとこ。
このせいでさほど複雑でもないお話の軸が
ブレてしまい、劇的な中だるみを起こした
のは確かなところ。

トム様のファンはそれなりに満足なの
かも分からないけど、わしら
スレッカラシのホラーファンとしては
「ユニヴァーサル魂はどこに行った?」
と言ってやりたい。
古のクラシックモンスターをコラージュ
した当初のティーザーを目にした時に
思い描いた「暗黒の共有世界」は
ここには微塵もない。
とりあえず全世界興収では
ノルマをクリアしたみたいだし、
次作「フランケンシュタインの花嫁」も
(監督がビル・コンドン…)製作が決まイメージ 6
ったけども、ここから続けるんであれば
早急にコンセプトの見直しを図るべきかと。
まずはトム様みたいな大スターじゃなくて
ちゃんとハマる役者を起用して欲しい。
(なので、ジョニデの『透明人間』には
ちょっと期待してたりする)
個人的にはウィレム・デフォーとか、
ルトガー・ハウアーとか、渋い脇役が
揃ってたりすると尚嬉しい。
そして無名の中から現代ならではの
「怪奇スター」を仕立てるくらいの
気概が欲しいところ。
監督もデルトロとか、サム・ライミとか
ティム・バートンなんかが来れば素晴ら
しいと思うのだけど、
あ。そんなの儲かりませんかそうですか。

映画『ロスト・バケーション』~母なる海はスパルタ式

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原題 "THE SHALLOWS"イメージ 1
製作年度 2016年
製作国 アメリカ
製作 コロンビア・ピクチャーズ
    ウェイマラナー・リパブリック・ピクチャーズ
    オンブラ・フィルムズ
製作予算 $17,000,000
国内配給 ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント
日本公開 2016年7月23日
上映時間 86分

監督 ジャウム・コレット=セラ
脚本 アンソニー・ジャスウィンスキー
製作総指揮 ダグ・メリフィールド
    ジャウム・コレット=セラ
製作 リン・ハリス
    マッティ・レシェム
撮影 フラヴィオ・ラビアーノ
音楽 マルコ・ベルトラミ
編集 ジョエル・ネグロン
配役 ベン・パーキンスン
美術 ヒュー・ベイタップ
衣装 キム・バレットイメージ 2
出演
ブレイク・ライヴリー:ナンシー
オスカル・ハエナーダ:カルロス
アンジェロ・コルゾ:サーファー
ホセ・マヌエル・サラス:サーファー
ブレット・カレン:パパ
セドナ・レッジ:クロエ
ジャネール・ベイリー:ママ
パブロ・カルヴァ:少年

鑑賞 2017年7月31日
Blu-ray 字幕
★★★★☆

甚だ私見ながら、「サメ映画」を観るなら
夏場に限ると決めている。
ピーカンに晴れ上がった青空の下、
澄み渡った海がごぼごぼと深紅に染まる。
「やっぱ海行くのやめとこ…」
浮かれたレジャー気分に釘を刺す、
原始的大型軟骨魚類の恐怖。
だからこの映画も評判を聞いてはいたの
だけどDVDが出た時分にはすっかり
肌寒くなってたんで、次の夏まで観るのをイメージ 3
取っておいたのだ。

原題"THE SHALLOWS"(浅瀬)

ナンシーはメキシコのとあるビーチにやっ
て来た。ママのお気に入りだった秘密の
ビーチだ。ママが癌で死んでからというもの、
どこか投げやりになってしまっていた。
家のことも。医者になる夢も。なにもかも。
いくら頑張ったって、どうしようもないこと
がある。叶わない希望なんか、いっそ持たな
い方がマシってもの-
ヤサグレ気分で波に揺られていたところに
突如人喰いザメが襲来、肉付きのいい太腿をがっつり噛まれてしまう。
命からがら近くの浅瀬に這い上がって難を
逃れるも、孤立無援の状況。
砂浜はすぐ近くに見える。速攻で泳いで
行けそうなものだけど、行けない。
さっきのサメが血の匂いを嗅ぎつけて、
浅瀬の周りをぐるぐる回っているのだ。
地元民も名前を知らない穴場のビーチ。
助けを呼ぼうにも滅多に人が通らない。
ケータイも砂浜に置いて来ちゃった。
夏の日差しがじりじりと容赦なく照りつける。
夜になれば一転グッと気温が下がる。イメージ 4
噛まれた傷からは血が流れ続け、体力は消耗して行く一方。
そしてなんといってもこの場所は浅瀬。
12時間後には潮が満ちて海の中に沈んで
しまう。そこでタイムアップだ。
まさに絶体絶命。さあアタシ、諦めるのか?
諸手を上げてぱくっと喰われるのか?
-そう、ママみたいに…?

評判通り、面白かったなあ。
もっとも「サメパニック」というよりは
シチュエーションスリラー。イメージ 5
舞台は小ぢんまりとしたビーチ限定。
出てくるのは普通のサメ一匹。
安全地帯は時間限定のちっさな浅瀬と
ちょっと離れたところに浮いてるブイ、
そして腐りかけのクジラの死骸。
泳いで渡ろうとすると、脚の傷から漏れる
血に速攻サメが寄って来る。
「早く早く!あともうちょっと!」
シンプルで分かり易いハラハラドキドキが
十二分に堪能できる。
尺も短く、その中で巧みに緩急を織り込み
緊張感を保ち続けた辺りは見事の一言。
『ジョーズ』以来の傑作という評も
決して過言ではない。
『アンノウン』や『フライトゲーム』で
堂々のサスペンス演出に冴えを見せた
ジャウム・コレット=セラの鉄板ぶりを
再認識。
ほぼ失点のない良作と言っていいと思う
のだけど、最後の決着はちょっとご都合が
過ぎたかも。それからサメのデカさの割に
足の咬み痕が小さいのも気になった。
まず致命傷になってはお話しにならないし、
一応サメ映画として「盛りたい」キモチはイメージ 6
重々分かるけど、あんなにデカくなくとも
十分だったとは思う。

まるでサーフィンのイメージビデオの
ような、序盤のカラフルで幻想的な海の
画もそれ自体一見の価値ありだったが、
これが一転無慈悲な本来の海に姿を変える、その対比がまた◎。
海は広いな大きいな。
楽しくて、美しくて、あったかくて。
そして海は厳しくて怖いもの。
塩辛くて、生臭くて、荒々しくて。
少しでもナメた態度で臨めば
海はいとも簡単に私達の命を奪って行く。
毎年首を傾げるような水難事故が多発する
この時期。
「みなはん、きをつけなはれや。」
そういうことである。
もっとも過保護で育った自分はこんな映画
観なくとも、海には行かんけどね。

映画『ジョーズ』~サメを食い物にする人々

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原題 "JAWS"イメージ 1
製作年度 1975年
製作国 アメリカ
製作 ザナック=ブラウン・プロダクション
    ユニヴァーサル・ピクチャーズ
製作予算 $8,000,000
国内配給 CIC
日本公開 1975年12月6日
上映時間 124分

監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 ピーター・ベンチリー
    カール・ゴットリーブ
原作 ピーター・ベンチリー
    「ジョーズ」
製作 デヴィッド・ブラウン
    リチャード・D・ザナック
撮影 ビル・バトラー
音楽 ジョン・ウィリアムズ
編集 ヴァーナ・フィールズ
美術 ジョー・アルヴェス・Jr.
特殊効果 ロバート・A・マッティ
出演
ロイ・シャイダー:ブロディ署長
ロバート・ショウ:クイント
リチャード・ドレイファス:フーパーイメージ 2
ロレイン・ゲイリー:エレン
マーレイ・ハミルトン:ヴォーン市長
ジェフリー・クレイマー:ヘンドリクス

鑑賞 2017年8月2日
DVD 字幕
★★★★★

私は海に行くのが好きじゃない。
正確に言えば、浜辺でビールを飲んだり
花火をやったりするのは楽しいが、
海の水に入るのがイヤなのだ。
水かさが足首あたりの波打ち際でキャッ
キャ言ってるうちはまだイイのだけど、
膝から上になるともうダメ。
怖くて一刻も早く陸に上がりたくなる。
小さい頃はそうでもなかったが、
『ジョーズ』が封切になったのが
1975年の冬。もっとも実際に観たのは
それから6年後のテレビ放映だったが、
それでも水着ギャルの真下からドでかい
サメが口を開けて迫るポスターは、
当時小学生だった自分にとてつもない
恐怖を植えつけた。
海にはこんな奴がいるんだぞ、と。
それからは海水浴は当然のことイメージ 5
学校のプールにも行きたくなく、
家の浴槽に浸かることすら抵抗を感じる
時期があった。

そして私と同じ年代の人には、この映画の
せいで海、そしてサメという存在に初めて
恐怖を覚えた人は多いと思う。
それほどの影響をこの映画はもたらした。
本作の大ヒットを受けてピラニア、ワニ、
クマ、シャチ、カエル、ミミズなどなど、
様々な動物たちが人間様に牙を剥いて
襲いかかる映画が作られた。
そんな中でもサメは海のモンスターとして
すっかり定着し、数多の模倣品やパロディ
を粗製乱造しながらもひとつのジャンルを
形成するに至るのはご周知の通り。
笑っちゃうくらいにデカいやつとか、
タコと合体しちゃったやつとか、
どういうわけか空から降って来るやつとか、
粗いCGでヤケクソ気味なアイディアを
乱発するサメ映画の数々はそのほとんどが
クズ映画だが、それでも毎年手を変え品を
変え新作が製作されるのは需要が絶えないイメージ 3
ことの証かと。10年後にもサメ映画という
のは相変わらず作られ続けてるんじゃない
だろか。むしろこのところ急激に少なくな
ったゾンビ映画よりもポテンシャルを秘め
ているようにも思う。

尤も。サメという大きくて獰猛な「魚」の
ことは古来より認識されてはいたんだろ
うが、その危険性についてはさほどクロー
ズアップされていなかったとか。
「噛まれっから、あぶねえど!」
トーホグ弁で言えばそんな程度の認識だっ
たはず。
実際にここ30年で世界中で報告された
ホホジロザメの襲撃事件は200件ちょい。
うち死亡に至ったケースは60件。
まず死者やケガ人が出ることなので気を
つけなきゃいけないのは確かだけども、
1年間に起きる飛行機事故や殺人事件なん
かと比べれば微々たる数字と言える。
一方、この映画の影響ですっかり忌み嫌わ
れる存在になってしまったサメはスポーツ
フィッシングの格好の標的となり、沿岸に
迷い込んだりすればそれが人を襲う種で
なくとも問答無用で射殺のちに吊るし上げ。
食材や物資としても結構使えるもんだからイメージ 4
乱獲は進む一方。ホホジロザメをはじめ
多くの種が絶滅の危機に瀕しているとか。
それでも全く問題にされない。
そりゃそうだ。「サメを助けよう!」とか
言ったって、誰も同情なんかしない。
ちなみに自分の地元の宮城県はフカヒレが
特産で、気仙沼の港でも無造作に積まれた
サメの山を見たことがある。
そう考えると、サメは怖いがそれ以上に
人間がサメにとって怖い存在と言えるん
じゃないだろうか。

そもそもサメは人間を襲うために生まれた
「モンスター」ではない。
鋭利な三角の歯は人間の腕や足をチョン切
るためではなく、あらゆる動物から肉の塊
をしっかり削ぎ取るためにああいうカタチ
になっているのだ。
腹を空かせた時に目の前に人間がいたら
そりゃ喰いつく。が、そうでもなければ
見向きもしない。むしろ初めて人間に
出くわした場合などビビって逃げて行くイメージ 6
ケースもあるとか。
サメ映画の定石として、陸に上がれば
ノーサイド。喰われる心配はない。
(最近はそうじゃないのが主流だが)
人間は陸地にいれば十分生きて行けるのに、サメの棲む海にわざわざ出張って行く
からトラブルになるのだ。
サメは海でしか生きられない。
海でエサを探し、食って、生きている。
そこに人間様が海水浴とかサーフィンとか
ウニやらアワビやらを食いたいからとか
手前勝手な都合で海に乗り込んできて、イメージ 7
それでサメを邪魔者扱いするなんて
なんとも理不尽な話じゃないか。

原作者のピーター・ベンチリーは自分の書
いた作品がサメのイメージに甚大な悪影響
を及ぼした責任を痛感し、その後の作品で
「人喰いザメ」とは人間の勝手なイメージ
の産物であると訴えた。
晩年のテレフィーチャー作品『海棲獣』は
人喰いザメによる被害と思われていた事件が、その真犯人は軍が作り出したサメのミュータントであったという話。
しかも混入された人間のDNAが「殺意」
を生んでいたという、なんとも意味深な
寓意を孕んだ一本だった。
元々テレビのミニシリーズなので通しで
観るとちょっと長いが、スタン・ウィンストン
製作のクリーチャーがカッコいいモンスター
映画の佳作。まずはご参考まで。

映画『トランスフォーマー / 最後の騎士王』~機械はつらいよ

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原題 "TRANSFORMERSイメージ 1
 : THE LAST KNIGHT"
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 パラマウント・ピクチャーズ
    ハズブロ
    ディ・ボナヴェンチュラ・ピクチャーズ
    フアフア・メディア他
製作予算 $217,000,000
国内配給 東和ピクチャーズ
日本公開 2017年8月4日
上映時間 149分

監督、製作総指揮 マイケル・ベイ
脚本 アート・マーカム
    マット・ホロウェイ
    ケン・ノーラン
製作総指揮 ブライアン・ゴールドナー
    マーク・ヴァーラディアン
    スティーヴン・スピルバーグ
製作 イアン・ブライス
    トム・デサント
    ロレンゾ・ディ・ボナヴェンチュラ
    ドン・マーフィ
撮影 ジョナサン・セライメージ 2
音楽 スティーヴ・ジャブロンスキ―
編集 ロジャー・バートン
    アダム・ガーステル他
配役 デニース・チャミアン
美術 ジェフリー・ビークロフト
衣装 リサ・ロヴァース     
出演
マーク・ウォールバーグ:ケイド
ローラ・ハドック:ヴィヴィアン
イザベラ・モナー:イザベラ
ジョシュ・デュアメル:レノックス
サンティアゴ・カブレラ:サントス
アンソニー・ホプキンス:バートン
スタンリー・トゥッチ:マーリン
ジョン・タトゥーロ:シモンズ

鑑賞 2017年8月4日
仙台東宝シネマズ 字幕 IMAX-3D
★★★☆☆

映画好きなマスターの店で酒を飲んでいて、
「トランスフォーマーを観に行く」と言ったら
マスターはグラスを洗っていた手を止め
「アレって面白い?…と言うか、
本気で面白いと思って観に行くの?」

ものすごい真顔で言われてしまった。
私も気弱なもんだからイメージ 3
「まあ、甥っ子が見たいっつうから(笑)」
とか言って適当に流したのだけど、
実は一人で観に行くんだから当然ノリノリ
なわけで(そもそも甥っ子なんかいない)。
まずこういう言われようは慣れっこだし、
マスターも完璧カルト寄りの人だから
しょうがないのだけど、改めて自答して
みれば否定しきれないものもあり。
果たしてオレは本気でこんなのを面白いと
思って観に行ってんだろうか?

にしてもこれで5作目。
しかも毎回きっちりとヒットをしてる。
そして1作目からずっとマイケル・ベイが
メガホンを握ってる。こういうパターンも
なかなか珍しいんじゃないだろか。
普通1、2本ヒットさせたら後は若手に
任せて、自分は製作総指揮に回ったりする
ところだと思うのだけど。
もしやベイさん、これをライフワークに
しようとしてるのか。
それともギネス狙いとか(笑)
シリーズ43作、浪速の恋のオプティマス。

そんなベイさんが「絶対3Dで観てくれ!」
って言うから、そうしましたよ。
正直このところは平らな画面で十分とかイメージ 4
思ってたのだけど、観てみたらやっぱり!
言うだけあって流石の出来栄え。
3Dと言っても客単価の底上げありきな
バカチョン3Dが多い中、このシリーズは
3作目『ダークサイド・ムーン』の頃から
ベイさん自らジェームズ・キャメロンに
指導を請い、3Dならではの見せ方に特化
して来た。しかも今回はIMAX専用のカメラ
で撮影をしたらしく、臨場感がハンパない。
すぐ目の前でロボットがガチャガチャ変形
したり空飛んだりガラガラと破壊の限りを
尽くす様は見ていて楽しいことこの上なく。
マイケル・ベイと言えば「世界で最も車を
カッコよく撮る男」として有名だけども、
今回はカーアクションがいつにも増して
素晴らしかった。ベイさん的にはIMAX
推奨だけど、ここは4DXも面白そう。
いずれにせよ「DVDでいいや」とかケチな
ことを言わず、設備の整った劇場で観るべき
ものかとツトに思う。

ただやっぱり毎回感じるのだけど、
この映画を観るのは疲れる。すごく。
トシなのかな。そうなんだろうな。
あまりに情報が多くて処理しきれないのだ。
決して退屈というわけではないのだけど、イメージ 5
ふとしたタイミングで集中力がぶっつり
切れてしまう。
アレ…今なんの話してましたっけ??
そんな感じ。トランスフォームの様子が
ガチャガチャしてさっぱり分からないとか
よく言われるが、それと同じだ。
いろんなロボットが次から次へと出てくる
けども、ほとんど見分けが付かない。
オプティマスとバンブルビーくらいは分かる
けど、あとは全然。
ヘタすると敵か味方かすら分からない。
ストーリーもスカスカというわけじゃなく
むしろ詰め込み気味なのだけど、えらく雑然
としてるもんだからさっぱり頭に入らない。
特に『3』からは地球の歴史にトランスフォ
ーマーが深く関わっていたという筋立てで
そのアイディア自体は面白いのだけど、
ちょっとナニ言ってるか分からない(苦笑)
レベルで。
あとオプティマス、毎度毎度バカすぎるよね?
機械だからしゃあないけど。

とどのつまりはキッズ向け、というか
キッズ並みの精神年齢に向けた映画だから、
細かいヤボはさて置いて派手なアクションイメージ 6
やらブッこわしやらを打ち上げ花火みたいに
楽しむのが正しい観方かと。
なのでマスター、次のも出来たら観に行く
ことになりそうかと。たぶんノリノリで。
噂では12本分の脚本が既に上がってて、
中にはバンブルビーのスピンオフなんかも
あるんだとか。…マジかw

映画『ホーンテッド・サイト』~鬼畜の盛り合わせ(並)

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原題 "ABATTOIR"イメージ 1
製作年度 2016年
製作国 アメリカ
製作 ダーク・ウェブ・プロダクションズ
    レ・ザンファン・テリブレ
    ルミナリー・エンターテインメント
    パシフィック・ブリッジ・ピクチャーズ
国内配給 ハピネット
日本公開 2017年3月5日
(2017未体験ゾーンの映画たち)
上映時間 98分

監督 ダーレン・リン・バウズマン
脚本 クリストファー・モンフェット
製作総指揮 ロブ・ケイン
    クリス・コントグリス
    ヨエル・ダハン他
製作 ジェシー・バーガー
    ブレント・ジョンソン
撮影 マイケル・フィモナリ
音楽 マーク・セイフリッツ
編集 ブライアン・スミス
配役 ミーガン・ルイス
美術 ジェニファー・スペンス
衣装 ダナ・エンブリーイメージ 2
出演
ジェシカ・ラウンズ:ジュリア
ジョー・アンダースン:グレイディ
デイトン・キャリー:クローン
リン・シェイ:アリー
ジョン・マコーネル:マクダーモット
ブライアン・バット:チェスター
マイケル・パレ:レンショウ

鑑賞 2017年8月7日
DVD 字幕

★★☆☆☆

美しく野心旺盛な新聞記者ジュリア。
所属が不動産部門なもんだから
たいした記事を書かせてもらえない。
やんぬる哉。地価情報の記事なんかで
ピューリッツァ賞は貰えない。
そんなことないよ、あなたは価値のある
仕事をしてるんだから。実直にやり続け
ていればきっと夢に繋がるはず。
そう言って励ましてくれる姉夫婦と
可愛い甥っ子がいた。
が、その姉夫婦達が謎の不審者によって
惨殺されてしまう。イメージ 3
悲嘆に暮れるジュリア。と、程なくして
姉夫婦の家を購入した者がいたことを知る。
事件から数日も経っていないのに、
あんな事故物件を好き好んで買うなんて。
なにかあると踏んだジュリアは姉夫婦の
家に出向いて行く。すると驚いたことに
事件現場となった甥っ子の部屋だけが
家屋からそっくりと抜き取られていた―
ダーレン・リン・バウズマンという人は
かつてゼロ年代の鬼畜ホラーの旗手として
「スプラットパック」の一人に名を連ねた人。
他の面子はアレクサンドル・アジャ、
イーライ・ロス、ロブ・ゾンビ、
ジェームズ・ワン&リー・ワネル、
グレッグ・マクリーン、ニール・マーシャル
と、錚々たる顔ぶれ。
『ソウ』は言うまでもなく
ジェームズ・ワン&リー・ワネルの
鮮烈なデビューを飾った
シチュエーションスリラーの傑作だったが、
猟奇的な描写は非常に限定的であり、
トリッキーな謎解きと心理描写に
重きを置いた作品であった。
そして彼らは決して凡庸な一発屋では
なかった。イメージ 4
飽くまでもアイディア1発勝負であった
『ソウ』を、なんぼヒットしたからと
言ってダラダラ続けるつもりなど
さらさら無かったのだ。
そこに「SAWサイコー!!」とばかりに
インスパイアを受けて新たなストーリー
を組みあげたのがバウズマンである。
フィンチャーの『セブン』をフェイバリット
に挙げるバウズマンは『ソウ』のデスゲーム
仕様に連続猟奇殺人の要素を取り入れ、
主犯ジグソウにある種カリスマ的な人格を
与えることで世界観に広がりを持たせた。
また「足首ゴリゴリ」は前作における
クライマックスであったが、
これを質量ともにショーアップすることで
観客が身悶えするようなドM的快感を生み
出した。つまりは『ソウ』をおなじみの
「グロくてエグくて胸糞の悪い」シリーズに
仕立て上げたのはこのバウズマンと言える。
そんなバウズマンさんも
『ソウⅣ』でシリーズを降板してから
ほとんど鳴かず飛ばず。
『Ⅳ』を蹴ってまで臨んだミュージカル
『レポ!』は未公開(どういうわけかDVDイメージ 5
化すらされない。観たいんだけどなあ!)、
リメイク『マザーズデー』も
ブラムハウス風オカルトホラー
『11:11:11』、『デビルズフォレスト』も
えらく評価が悪くて手に取るまで至らず。

まず他人の評価なんてのは
こと低予算ホラーについてはアテにならんし、
今回は比較的相性のいい「未体験ゾーン」枠。もしや…と思って手に取ってはみたの
だけど、ううう。
ひさびさに、かくんかくんと寝オチこいては
巻き戻し、またかくんかくん…の繰り返し。
全部観るのに3時間かかってしまった。
しかしなんだろ、この安さ。
妙にとりとめのないお話や陳腐な台詞は
脚本のせいだろうけども、
舞台セットや特殊効果の類がいちいち安い。
クライマックスなんかも酷かったな。
廃屋の壁にヒビが入った感じとか
その後ろがビカビカ光った感じとか、
学園祭のオバケ屋敷じゃないんだから。
敢えてチープな作りを露出させたのかもしれ
ないけども、だとしたらお話をもっと軽く
しないと釣り合わない。
正直こんなにセンスの悪い作り手だったかイメージ 6
と唖然とした。
唯一良かったのはリン・シェイおばはん
安定のキチっぷり。
ただこれも青春コメディの竹中直人みたいで
観飽きた感がなくもない。
それからマイケル・パレ、
クレジット見るまで分からなかったよ!(涙)

そう言えば原題"ABATTOIR"は
「屠殺場」の意。
『ソウⅢ』は相当グロ耐性のついた自分の中
でも1、2を争う極悪の鬼畜映画であった。
食肉工場で腐った豚がぼとぼと落ちてくる
シーンは今だに思い出すと胃液が込み上
げる。
スプラットパックの他の面々はそれぞれ
重きを成しているのに比べ、この凋落ぶりは
甚だ他人事ながら気の毒ではある。
そう言えば『ソウ』のリブートが動き出して
いるようだけど、こっちも監督が『デイブレ
イカ―』のスピエリッグ兄弟ということで
若干心配がなくもない。いっそのこと古巣に
戻るというのも案じゃないかと思うのだけど。

映画『ナイトライダーズ』~俺たちに明日はないけど明日に向かって走れ

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原題 "KNIGHTRIDERS"イメージ 1
製作年度 1981年
製作国 アメリカ
製作 ローレル・プロダクション
製作予算 $3,000,000
上映時間 145分

監督、脚本 ジョージ・A・ロメロ 
製作総指揮 サラ・M・ハッサネン
製作 リチャード・P・ルビンスタイン
撮影 マイケル・ゴーニック
音楽 ドナルド・ルビンスタイン
編集 パスカーレ・ブーバ
    ジョージ・A・ロメロ
美術 クレタス・アンダースン     
出演
エド・ハリス:ビリー
ゲイリー・ラーティ:アラン
トム・サヴィーニ:モーガン
エイミー・インガソル:リネット
パトリシア・トールマン:ジュリー
クリスティーヌ・フォレスト:アンジー
ワーナー・シュック:ピピン
ブラザー・ブルー:マーリン

鑑賞 2017年8月9日
DVD 字幕イメージ 2
(発売元:スティングレイ)
★★★★★

去る7月16日に
ジョージ・A・ロメロが亡くなった。
享年77歳。日本で言えば喜寿だ。
ちなみに私の母上も同い年。
と言うわけで遅ればせながら、
今回は追悼の意を込めてこの映画。

ロメロと言えば言うまでもなく
ゾンビ映画の祖だけども、
御大自身はそういった括られようが
全く本意ではなかったようで。
「わしゃ―ゾンビだけじゃないんぢゃ!」
と言わんばかりに非ゾンビ、非ホラーの
良作を数多く遺している。本作もそんな
ロメロの非ゾンビ映画のひとつ。

『ナイトライダーズ』
ハッセルホフじゃないよ。
"KIGHT"「騎士」の方。
馬じゃなく、バイクに跨った騎士たちの物語。
古くさい鎧兜を身に纏い、
バイクでアメリカ中を旅する一座。
街外れに陣を張っては馬上槍ならぬイメージ 3
バイク上槍やサイドカーの戦車競走に興じ、
それを観に来た人から木戸銭をもらって
暮らしている。
人気は上々。どこに行っても沢山の観衆が
集まり、毎日喝采を浴びる。
それでも家計はやっぱり火の車。
食べて行くのも覚束ない。
もっと宣伝とか派手な仕掛けを考えるべき
ではとか言う者もいるのだが、
「王」のビリーはそんな言葉を許さない。
我らは騎士なのだ。旅芸人じゃない。
観衆から金をもらうのが目的じゃない。
我らの姿を見て、本来の理想的な生き方をイメージ 4
知ってもらうためのショーなのだ。
はじめはビリーの人格に惹かれて来たが、
その高潔すぎる考えに付いて来れない者、
反発する者が次第に出てくる。
もはや一座は崩壊寸前。
そんな時、彼らの評判を聞きつけた
プロモーターがやって来る。
ぼくに任せてみないか?
ガッポリ稼がせてやるからさ。
プロモーターの申し出にビリーは毅然と
断りを入れるのだが…イメージ 5

この製作当時は『エクスカリバー』など
中世の騎士道文化をモチーフにした
歴史活劇が流行の兆しを見せていたが、
ロメロがこれにそのまま乗っかるような
マネをするはずもなく、現代に時代遅れ
な騎士道を配すことでなんとも瑞々しい
青春群像劇に仕立て上げた。
(そもそも孤高なインディーズ作家の
ロメロにそんな大掛かりな時代劇を作る
ほどの予算が組めるはずもない)
世知辛い現代社会の中を苦悩しながら
駆け抜けて行く若者たちの姿はアメリカン
・ニューシネマにも通じるものを感じるが、
ロメロの視点は散り際に美学を見出すよう
な刹那的なものではない。
どれほど絶望的な状況にあろうとも、
決して希望を捨てない。正しく理想を掲げ、
そこに向かって走るしかない。
そしてこれはゾンビ映画においても一貫して
ロメロが描く不変のテーマである。イメージ 6
欲や不安に負け、足を止めたらそこで
終わり。
「ゾンビ」に食われるのは、その時なのだ。

所謂「ゾンビ3部作」がヒットをして、
メジャーから続編やスピンオフの企画が
上がっても頑として乗らず、自分の撮る
べき作品を撮る。
その昔ユニヴァーサルがロメロに『ミイラ
再生』のリメイクを撮らせようとしたが、
あまりに「分かってない」製作陣に嫌気がイメージ 7
差したロメロは速攻で現場を降りたとか。
ちなみにその企画をスティーヴン・
ソマーズが引き継いで出来上がったのが
『ハムナプトラ』だ。さもありなんw
要は頑固者と言うべきか。もしくは偏屈。
でもそんなロメ爺だからこそ、この人の作
るゾンビ映画は唯一孤高の存在なわけで。

特殊メイクにスタントと文字通りロメロ
映画の醍醐味を支えたトム・サヴィーニ
が堂々の準主役。後のロメロ夫人クリスイメージ 8
ティーヌ・フォレストは『マーティン』
に続いて美味すぎる役どころ。この頃か
ら惚れてたんだろうかね。判ります。
ケン・フォリーにスコット・ライニガー
『ゾンビ』のソルジャーコンビも仲良く
顔を出してる。
後にサヴィーニ監督作『死霊創世記』で
主演に抜擢されるパトリシア・トールマン、
『死霊のえじき』のローズ隊長と
スペインヤローが並んで映ってたり。
スティーヴン・キングは本作で銀幕デビュ
ーながら凄まじいバカ演技を披露。どうも
これでクセになったとか、ならないとか。イメージ 9
他にも「あっ、あの時のあの人が!」と
いった面々がカメオレベルでぼろぼろ
出てくる。
ゾンビこそ出ないが、ロメロ組総出演と
いったキャスト陣はファンにとっては
最大の見どころだが、
こうした「仲間たち」がそれぞれ去って
は帰ってきたり、そのままだったり、
もしくはずっと一緒だったり、
そんな「その後」のロメロ組とリンクし
て感慨深い。イメージ 10

常に資金繰りに泣かされながらも
決してメジャーのいいなりにならず、
自分の映画を作り続けたロメロ。
カネと理想の狭間で。
時代遅れの衣装を着て長い一本道を
突き進むエド・ハリスの雄姿が、
ロメロ御大にカブって仕方がなかった。
rest in piece

全米最新映画ランキング 2017年8月4-6日

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BOX OFFICE TOP 10イメージ 1
weekend of August4-6, 2017


1. 『ダーク・タワー』
(1週目 興収計$19.5M)
スティーヴン・キングの壮大なダークファンタジーが遂に映画化。監督はオリジナル版『ドラゴンタトゥーの女』の脚本家ニコライ・アーセル。「ガンスリンガー」役にイドリス・エルバ。
ホントにおもしろいのかコレ。

2. 『ダンケルク』
(3週目 興収計$133.6M)

3.  "THE EMOJI MOVIE"
(2週目 興収計$49.5M)
ソニー・ピクチャーズ・アニメーション作品。
なんかよく分かんないけど評価は激低。
(※IMDbで1.6/10

4. 『ガールズ・トリップ』
(3週目 興収計$85.4M)

5.  "KIDNAP"イメージ 2
(1週目 興収計$10.2M)
ハル・ベリー主演のスリラー映画だってさ。

6.  『スパイダーマン:ホームカミング』
(5週目 興収計$294.9M)

7. 『アトミック・ブロンド』
(2週目 興収計$34.1M)
シャーリーズ・セロン主演のセクスィー系バカアクション。メガホンは『ジョン・ウィック』の共同監督だったデヴィッド・リーチ。超期待!

8.  『DETROIT / デトロイト』
(2週目 興収計$7.8M)
キャスリン・ビグロー監督作品。いつもの男前な骨太映画か。

9. 『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
(4週目 興収計$130.3M)

10. 『怪盗グル―のミニオン大脱走』
(6週目 興収計$240.8M)

映画『ウィジャ ビギニング~呪い襲い殺す~』~ウィジャはなんでも知っている

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原題 "OUIJA : ORIGIN OF EVIL"イメージ 1
製作年度 2016年
製作国 アメリカ、中国、日本
製作 プラティナム・デューンズ
    ブラムハウス・プロダクションズ
    イントレピッド・ピクチャーズ
    ハズブロ他
製作予算 $9,000,000
リリース 2017年8月2日
上映時間 99分

監督、脚本、編集 マイク・フラナガン
脚本 ジェフ・ハワード
製作 マイケル・ベイ
    ジェイソン・ブラム
    スティーヴン・デイヴィス他 
製作総指揮 ジャネット・ブリル
    ヴィクター・ホー
    クーパー・サムエルスン
撮影 マイケル・フィモナリ
音楽 ザ・ニュートン・ブラザース
配役 テリー・テイラー
美術 パトリシオ・M・ファレル
衣装 リン・ファルコナーイメージ 2
出演
アナリース・バッソ:リーナ
エリザベス・リーサー:アリス
ルル・ウィルソン:ドリス
ヘンリー・トーマス:トム神父
パーカー・マック:マイキー
ダグ・ジョーンズ:マーカス
リン・シェイ:リーナ(2013)

鑑賞 2017年8月12日
Blu-ray 字幕
(発売元:NBCユニバーサル・エンターテインメントジャパン)
★★★★☆

邦題…(笑)初めからストレートにやっとけば良かったのに。
『ウィジャ/呪いの降霊盤』とか。
『パラノーマル・アクティビティ』や
『インシディアス』、『死霊高校』等、
今風のハッタリを効かせたオカルトホラーで
一時飛ぶ鳥を落とす勢いだったブラムハウスが、マイケル・ベイお抱えのホラーブランド、
プラティナム・デューンズと提携して製作した
『呪い襲い殺す』(原題"OUIJA")。イメージ 3
日本ではまるで話題にもならなかったが本国では初登場1位のスマッシュヒットを飛ばし、
その好評を受けて当然の如くに作られた
「ビギニング」。

前作はマイケル・ベイの嗜好性を色濃く
反映した「ティーンズホラー」であり、
そういった見方では決して悪くない出来
だったが評価筋からは随分と酷評を浴びた
らしく。
またスキマ商売を拡げてのし上がった
「気鋭」のプロデューサー、ジェイソン・
ブラムとしてもこうした小便臭いホラーは
気に入らなかったようで、この「ビギニング」
では前作のカラーをまるっと払拭して臨む
よう製作陣に命じたとか。
そこで監督に起用されたのが
『人喰いトンネル』、『オキュラス/怨霊鏡』
マイク・フラナガン。独特の恐怖感覚と
繊細な人物描写に秀でた、ジェームズ・ワンにも匹敵する逸材だ。
だからこそ自分もこの「ビギニング」には
殊更期待を寄せたのだけど、蓋を開ければ案の定。ユニヴァーサルのうすぼんやりと
した古いロゴを敢えてフィーチャーした
オープニングからして仕立てがまるで違う。イメージ 4

むかし、むかし-
オカルトがまだ「生きて」いた時代。
インチキとかバカにしながらも、誰もが
心の片隅ではうっすらと畏れていた頃。
LA郊外の古い邸宅に可哀想な母子が
住んでいた。
父親が若くして亡くなってしまい、母親が
怪しい霊感商売で二人の娘を養っていた。
「運命の語り部マダム・ザンダー」
自らの中に故人の魂を呼び、その言葉を語
るのだ。ホントは、霊能力なんかない。イメージ 5
ただのトリック。
でも、客はただ癒しを求めてやって来る。
「会いたかった」
「あなたを許します」
そんな、死者の言葉を聞きたくて。だから
私達がやっていることは悪いことじゃない。
インチキなんかじゃない。
でも、そばでお手伝いをしている下の娘
ドリスには納得できなかった。
ママがインチキじゃないなら、
どうしてわたしはパパの声を聞けないの?

うまく言い返せるはずもないのだけど、イメージ 6
それでも背に腹は代えられない。
もっと稼がなきゃ。
そんな折、「ウィジャ」なるオモチャの
降霊盤を雑貨屋で見つけた母親は
それを新企画として取り入れることにする-

ゴーストホラーの隠れた傑作『チェンジリング』('80)を参考にしたと言うフラナガン監督。
下世話な血飛沫や騒々しい悲鳴等に頼らず、ゆったりした間や空間設計、小道具の
妙などでじわじわ怖気を震わせる堂々のイメージ 7
ホラー演出はもはやベテランの域。
「家族」にフォーカスを当てたストーリーも
素晴らしい。この人の書く話は基本「どんな
パラノーマルも気持ち次第」と言うスタンス。
亡き人への想いや後悔、死への怖れなどが
幽霊、または悪魔となって現れる。
見えたような、見えないような…
まるで定かならぬ「あの世」の存在を通して
私達の心の中にある確かな思いを映し出す。
前年の『ソムニア/悪夢の少年』にも随分泣
かされたが、今回も涙のツボが多くて参った。イメージ 8
ビギニング、つまりはスピンオフの扱いなが
らクオリティは「本編」よりも遥かに上。
むしろこちらが本編で前作が「オマケの後日
譚」と言ってもいいくらい。
ただやっぱり前作ありきの「ビギニング」な
のでそこから繋がって来るネタなんかも少
なくなく、前作を先に観ていた方がより楽し
めるのは確かなところ。
90分程度ではあるが決してつまらなくは
ないので飽くまでも前フリのつもりで目を
通しておくことをオススメしたい。

またその反面、本編に繋げなきゃいけない
ビギニングとしては避け得ない縛りがある
わけで、本編が割と軽いノリでやっちゃった
もんだからそこまで持って行くのにえらく
難儀をした印象。クライマックスは完全に
混乱気味で「なんで?」の連続、ラストにイメージ 9
至っては蛇足の極み。
シリーズものの宿命とはいえ、中盤までが
ほぼ完璧だっただけに非常に悔やまれる。
もうちょっとヒネりようもあったと思うけど、
元々たいした本編でもないんだから前の
話はなかったことにして、設定だけ持って
来て独立した話にしても良かったんじゃな
いだろか。
あとトレイラーでもちょっと気になってたが、
途中の「死霊のはらわた」的展開もヤケに
CG臭くて興醒めだった。
そう言えば最近ブラムハウスの映画は
『ラザロ・イフェクト』然り『ダークネス』然り、
途中までは作り手のイロが良く出ていたのに
一気に失速して俗な仕上がりに終わってしまうケースが多い気がする。

とりあえず本作もそれなりに売れたようで、
(日本ではDVDスルーだったけど)
フラナガンはこの後スティーヴン・キング原作
『ジェラルドのゲーム』が遂に完成。
キングと言えば『ダーク・タワー』が興収トップに立ってやや微風が吹きつつある模様。
フラナガン監督のキングが見てみたいとは前々から思っていたので、楽しみなところ。

全米最新映画ランキング 2017年8月11-13日

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BOX OFFICE TOP 10イメージ 1
weekend of August11-13, 2017

1. 『アナベル 死霊人形の誕生』
(1週目 興収計$35.0M)
『死霊館』のスピンオフ第2弾。お話は更に過去に遡り、アナベル人形が作られるまでのビギニングとなる模様。監督は『ライト/オフ』のデヴィッド・F・サンドバーグ。

2. 『ダンケルク』
(4週目 興収計$153.2M)

3.  "THE NUT JOB 2
 : NUTTY OF NATURE"
(1週目 興収計$8.3M)
韓国カナダ合作のCGアニメーション作品。1作目もヒットしたようだけど日本では未公開。まあイイけど。

4. 『ダーク・タワー』
(2週目 興収計$34.3M)

5.  『ガールズ・トリップ』
(4週目 興収計$97.1M)

6.  "THE EMOJI MOVIE"イメージ 2
(3週目 興収計$63.4M)

7. 『スパイダーマン:ホームカミング』
(6週目 興収計$306.4M)

8.  "KIDNAP"
(2週目 興収計$19.3M)
子供を誘拐されたハル・ベリーが鬼と化して誘拐犯を追っかける。オバハン版『96時間』とか、なかなか好評のようです

9. "THE GLASS CASTLE"
(1週目 興収計$4.7M)
ノンフィクション小説「ガラスの城の子どもたち」の映画化。主演はブリー・ラーソン。

10. 『アトミック・ブロンド』
(3週目 興収計$42.7M)

映画『オープン・ウォーター』~海はひろいなおおきいな、いやマジで;

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原題 "OPEN WATER"イメージ 1
製作年度 2003年
製作国 アメリカ
製作 プラング・ピクチャーズ
製作予算 $120,000
配給 ムービーアイ・エンターテインメント
日本公開 2005年6月25日
上映時間 79分

監督、脚本、編集 クリス・ケンティス 
製作 エステル・ラウ
    ローラ・ラウ
撮影 クリス・ケンティス
    ローラ・ラウ
音楽 グラエム・レヴェル     
出演
ブランチャード・ライアン:スーザン
ダニエル・トラヴィス:ダニエル
ソール・スタイン:セス
マイケル・ウィリアムスン:デイヴィス

鑑賞 2017年8月16日
DVD 字幕
(発売元:ポニーキャニオン)
★★★★☆イメージ 2

ディスカスのリストを放置してたら、
この映画が今頃届いた。
『ロスト・バケーション』、『ジョーズ』と
サメ映画を続けて観た時に、「これも押さえ
とくか」とリストに入れていたんだった。
正直。さっぱり夏という雰囲気になってこない
から、自分の中でのサメブームはとっくに
終わってたんだけど。

オーストラリアはグレートバリアリーフに
やって来た1組の夫婦、スーザンとダニエル。
夫婦仲は決して悪くない。いたって普通。
ただー仕事のことだったり、将来のことを
思うとブルーになる。
相手のちょっとした言動がカンに障ったり、
ついトゲのある言い方をしたりしてしまう。
いわゆる倦怠期と言うやつか。
こんなことではイカンと、心機一転を図って
のバカンスであったのだが。

今日はツアーのスキューバダイビング。
ボートで外洋のド真ん中に出掛けて行き、
青く澄み渡った海。色鮮やかな魚や珊瑚。イメージ 3
束の間の海底散歩を満喫する二人。
さあ、そろそろ時間だ。ボートに戻らなきゃ。
海上に上がるも、そこで待っているはずの
ボートがなくなっていた―

"based on true events"

よくバスツアーなんかでも、ついトイレが
長くなってしまったオバハンをガイドさんが
数え忘れて置いてっちゃった…なんて
トラブルがあるけども、これもまさにそれ。
船長のボンクラ息子が戻った客を数え
間違え、
「時間前ですけども、全員揃いました!」
まだ海の底でイチャついてる2人を置いて
ボートは岸へと戻ってしまう。

海のど真ん中に置き去り。
『ロスト・バケーション』では浅瀬やらブイやら
安全地帯があって、すぐ目の前に砂浜も
見えていたがこちらはとにかく海。
360度見渡す限りの海、海、海。
改めて、タイトルの"OPEN WATER"とは
このことかと。イメージ 4
「ただ海に浮いてるだけで面白くない」とか
モノの分からない人の評価があったけども、
「海に浮いてる」しか出来ない。
そこが怖いのだ。
助けを叫んでも誰にも聞こえない。
泳いでもいつ、どこに辿り着けるか判らない。
ただ浮かんで、潮の流れに身を任せるだけ。
海と言う絶対アウェーの地では知恵も、
勇気も。なにひとつ役に立たないのだ。
ただ、怯えるだけ。

サメ映画と言うよりかはシチュエーション
スリラーに近い。サメも出るには出るが
それはトラップのひとつ。
海のど真ん中で丸腰の人間はもはや
最弱の存在。サメどころか、そこらの小魚や
クラゲですらカサに来て手痛いダメージを
食らわせて行く。押し寄せる波に揺られてい
るうちに酔いも回る。
体力の消耗もあるが精神の疲弊もハンパ
じゃない。
絶えず足が地に付かない心許なさ。
海面の下は事実上視界の外。
絶えず海面下に顔を潜らせることはできな
いが、相手は常にこちらを見ているのだ。イメージ 5
増してや夜の海は漆黒の暗闇。
こんな状況にもし自分が置かれてしまったら
果たして耐えられるだろうか?
主人公の「選択」に思わず頷いてしまった。

そう言えば以前、港町の酒場でスキューバ
ウン十年みたいな茶髪のオッサンに
「潜ったことないの?人生損してるぜ」
とか言われたけど、いいです。結構です。
損してもいい。オレは潜らない。絶対に。
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