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Channel: 玉ホラ日記
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映画『殺したいほど愛されて』~完全犯罪を止めるな!

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原題 UNFAITHFULLY YOURSイメージ 1
製作年度 1984年
製作国 アメリカ
製作 20世紀フォックス
製作費 $12,000,000
配給 20世紀フォックス
公開 1984年9月14日
上映時間 96分
監督 ハワード・ジーフ
脚本 ヴァレリー・カーティン
    バリー・レヴィンソン
    ロバート・クレイン
    プレストン・スタージェス(1948)
製作総指揮 ダニエル・メルニック
製作 ジョー・ウィザン
    マーヴィン・ワース
撮影 デヴィッド・M・ウォルシュ
音楽 ビル・コンティ
編集 シェルドン・カーン
美術 アルバート・ブレナー
配役 リン・ストールマスター
衣装 クリスティ・ズィ―
出演
ダドリー・ムーア:クロード
ナスターシャ・キンスキー:ダニエラ
アーマンド・アサンテ:マックス
アルバート・ブルックス:ノーマン
キャシー・イェーツ:カーライメージ 2
リカルド・リベルティーニ:ジュゼッペ
リチャード・B・シュル:ケラー

鑑賞 2018年8月30日 DVD(発売元:20世紀フォックス・ホームエンターテインメント)字幕
★★★★☆

満場の笑い声に包まれながら、
ウルサ型の映画ヲタもフツーの人々も
分け隔てなく共有する心地よい一体感。
『カメラを止めるな!』を観ていて、
妙に思い出されたのがこの映画。
自分が高校生の頃。
なんかしょうもないB級ホラーが同時上映
だったが、いまいち思い出せない。
(※もしや『サランドラ』とかだったかも)
あの頃の映画館は週末でなくとも
それなりに人が入っていたし、
口コミやウンチクなんかを抜きにして、
まっさらで映画を楽しめる時代だった。

世界的な指揮者のクロードは
チビのおっさんながらイタリアきっての
美人女優ダニエラを嫁にもらい幸せの絶頂。
ところがクズなマネージャーとコミュ力の弱い
お世話係とトンマな私立探偵のせいで、イメージ 3
ダニエラが浮気をしているという話を耳にする。
ありえない!
と初めは一笑に付すクロードであったが、
いやいやあんなに年の離れた、美人の妻なら
決してあり得ないことではない。
オッサンならではのヒガミ根性と被害妄想を
黒々と募らせて行き、やがては同じ楽団の色男
マックスが浮気相手であるという結論に至る。
きっとそうだ。そうに違いないい!
不貞の妻と憎らしい間男に裁きを下すべく、
クロードはある完全犯罪のプランを練り始め
るのだが-

主演のダドリー・ムーアは70~80年代に
活躍したコメディアン&ミュージシャン。
くるくる天パのちっさいオッサンが嫉妬に
狂ってドタバタと右往左往する様は否応もなく
笑いを誘う。
それでいて堂に入った指揮者っぷり、
ピアノやヴァイオリンの見事な腕前、
そして下から見上げるナイーヴな眼差しと、
大人の男の色気がムンムンであったりする。
実際当時のムーアは世界のでっかい美女相手に
次々と浮名を流すプレイボーイであったとか。

 若い男なんて所詮はファストフード。イメージ 4
 あなたは世界で一番リッチなレストラン。
 サービスは、ちょっと遅いけど

そんな風に言われる粋なオッサンになりたい
もんだと中坊ながらに思ったもんだ。
まず、今となってはただのちっさいオッサン
だけども。
若妻役のナスターシャ・キンスキーが
文句なしに美しい。これまでの文芸作や
スリラーなどといった出演作と違い、
本作では一転可愛らしいコメディエンヌぶりイメージ 5
を披露。絶頂期のナタキンを観るだけでも
価値のある一本と言える。

脳内では完璧だった完全犯罪も、いざ実行に
移してみればうまく行かないことばかり。
その2段構えに生じるギャップが笑いを
産んでいたわけだが、こんな構成はとうの
昔からあったんじゃないかと思うわけで。
そもそも本作自体が『殺人幻想曲』なる
50年代の作品のリメイクであり、イメージ 6
構成もまるっとそのままらしいのだけど、
そんな構成云々以前に演者の魅力や
音楽映画としての醍醐味、
そして80年代ならではのライトな笑いで
彩った「オリジナル」になっているからこそ、
今でも隠れた名作的な位置づけにあるんでは
ないかと。
パクリ乗っかり当たり前、柳の下の泥鰌に
二番煎じと虚々実々な映画の世界で
「盗作」なんてことを言い出すこと自体が
野暮なんじゃないかと思うわけで。
"UNFAITHFULLY YOURS"
これを『殺したいほど愛されて』なんて、
なんとも絶妙な邦題をつけたもんだ。


映画『ヴィクター・クロウリー / 史上最凶の怪人』~ギトギトコテコテ低カロリー

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原題 VICTOR CROWLEYイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 アリエスコープ・ピクチャーズ
製作費 $7,000,000
発売日 2018年7月3日
発売元 ハピネット
上映時間 83分

監督、脚本 アダム・グリーン
製作総指揮 ハムザ・アリ他
製作 ウィル・バラット
    サラ・エルバート
    コリー・ニール
撮影 ジャン=マイケル・ロサーダ
音楽 ジェイソン・エイカース
    サム・ユーイング
編集 マット・レイザム
衣装 レベッカ・ジョイ・ルイス
出演
バリー・シェン:アンドリュー
ラウラ・オーティス:ローズ
デイヴ・シェリダン:ディロン
クリスタル・ジョイ・ブラウン:クリスタル
フェリッサ・ローズ:キャスリーン
ブライアン・クイン:オースティン
ケイン・ホッダー:ヴィクター・クロウリーイメージ 2

鑑賞 2018年9月3日
DVD(発売元:ハピネット)字幕
★★★☆☆

ゼロ年代に一部の偏ったホラーマニアに
絶大な支持を受けて3作も作られた
真正バカスラッシャー『ハチェット』が
まさかのリブート。
正直「ああそうなの…」という感じが
しないでもないが、監督アダム・グリーン、
主演ケイン・ホッダーと来たら
そりゃ観ないわけには行かんじゃないの。

-アレから10年。
40人(体のピースによる推定)もの人々が
謎の怪人ヴィクター・クロウリーによって
殺された「ルイジアナ連続殺人事件」。
唯一の生還者アンドリュー・ヨンは
その経緯を本に著して注目を集めていたが、
一方で真犯人はこいつでは?という疑惑にも
晒されていた。
「決してあの地には戻らない」
そう心に誓っていたアンドリューであったが
高額なギャラに釣られ、
元ヨメの率いるテレビスタッフとイメージ 5
事件のドキュメント映画を撮ろうとかいう
素人の兄ちゃん姉ちゃんたちと共に
因縁の湿地帯へと赴くのだが-

「ジェイソン、ブギーマンを超える殺人鬼」
とかコピーを真に受けると確実に腹立つので
念のため。
前シリーズを観てた人なら分かるけども、
恐怖とはまるで無縁なバカ映画。
ゆっるゆるのしょうもないスベリギャグと
細かすぎて伝わらないホラーオマージュ、
そして完璧笑いを取りに来てるグログロの
切株ショー。イメージ 3
面白…くは決してないが、
そもそもスラッシャー映画という
現代ではマトモに成り立たない
ジャンルのダメっぷりや小バカ臭さを
パロディにしたのが本シリーズだ。
見応えや充実感など一切ない、ほぼ時間の
無駄とも思えるほどの映像体験ではあるが、
旨味の少ないところに意義を見出し、また
不味いものを逆に快しと捉える鑑賞姿勢は、
古のゴシックホラーへのそれよりも上級者
向けと言えるかもしれない。

それでいて、
スラッシャーなんてそんなもんさ♪
とか笑い飛ばしながらも、イメージ 4
そんなバカでクズで取るに足らない
スラッシャー映画への愛を愚直なまでに
詰め込んでしまう監督アダム・グリーンの
生真面目さ。
ええ、分かります。
ホントにくだらなくって、ワンパターンで、
ゲスで下品で「こんなの見るな」とか
なんぼ親にダメ出しを食らっても、
映画館の暗闇の中で無邪気に黄色い悲鳴を
上げて指差して笑って、毎度毎度金髪ギャル
のおっぱいが見れる下品な映画が、
自分も大好きだったから。
「あの人」は出ないのかなあ…と寂しく
思っていたら、最後の最後にやっぱり!
やっぱりホラーマニアって義理堅いなあ。
(ずいぶん老けててビックリしたけど)
もしかしてマジメにまた続けるつもりか。
まず、やるってんなら付き合うけども、
次はもっと切株増量でお願い。

にしても。「ジョージ・A・ロメロが
最後に認めたスラッシャー!」
…てホントですかロメロさん??

映画『ジャッカルズ』~虎狼は二階の窓から上がり込む

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原題 JACKALSイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 トミー・アラストラ・プロダクションズ 
公開 2018年1月6日
(未体験ゾーンの映画たち2018)
配給 ニューセレクト
上映時間 85分

監督、編集 ケヴィン・グルタート
脚本 ジャレッド・リヴェット
製作 トミー・アラストラ
    パメラ・モンロー
    J・E・ムーア
撮影 アンドリュー・ルッソ
音楽 アントン・サンコー
編集 ジョン・コニグリオ
美術 セリーヌ・ディアノ
配役 リチャード・ヴァレンティノ
衣装 クリス・デスキンス
出演
チェルシー・リケッツ:サマンサ
ベン・サリヴァン:ジャスティン
デボラ・カーラ・アンガー:キャシー
ジョナソン・スキーチ:アンドリュー
ニック・ルー:キャンベル
スティーヴン・ドーフ:ジミーイメージ 2

鑑賞 2018年9月5日
DVD(発売元:アルバトロス)字幕
★★☆☆☆

「ソウの作り手が放つ!」のコピーは
地雷揃いというのが定説だが、
本作は『ソウ6』から『ファイナル』の
監督ケヴィン・グルタートが放つ
ホーム・インベージョン・スリラー。イメージ 3

カルトにハマってしまったバカ息子を、
なんとか連れ戻したパウエル家の人々。
山奥の別荘で軟禁状態にして矯正を試みるが、
ママが抱きしめても兄貴がビンタしても
ヨメが生まれたばかりの赤ん坊を見せても
「オレはジャスティンじゃない。タナトスだ!」
完全に中二病状態。
カルト抜けの請負人として雇われた
スティーヴン・ドーフが言うには
「完全に洗脳されてしまっている。
しんどいが頑張ろう。家族の愛を以てすれば
きっとジャスティンを救い出せるはずだから」イメージ 4
力を合わせて乗り越えるべき家族の一大事な
わけだけども、彼らの間にはなにか一筋では
行かない雰囲気がどんよりと。
ママは常にワイングラスを傾けてるし、
パパはそんなママに頭が上がらない様子。
ヨメは赤ん坊をママに抱かせたがらず、
兄貴は端から非協力的な態度を崩さない。

要はお互いをまるで信用していないのだ。
そんなこんなで大して事が進まないうちに、
シモベの居場所をあっさり突き止めた教団のイメージ 5
面々に家の周りを取り囲まれてしまう。

- BASED ON A TRUE EVENT -

ああ、そうですか(笑)
前にもシャロン・テート事件を
ホームインベージョン風に描いた
『ウルフ・アット・ザ・ドア』があったが、
これもほぼ同じコンセプトと言っていい。
そう言えば『ウルフ~』はワン組で
カメラを回していたジョン・レオネッティ他イメージ 6
ほぼ『死霊館』の製作陣だったが、
この前にも『アナベル』が作られた際にも
こちら旧ソウ陣営は『ジェサベル』などと
紛らわしいタイトルのオカルト路線を
当てて来た。
こうも似たような映画を同時期にぶつけて
くるのはやはりジェームズ・ワンの流れを
汲む派閥同士ということで対抗意識でも
あったりするんだろうか。
ただいかにもワンの王道を忠実になぞる
レオネッティに対し、グルタートの方はイメージ 7
良くも悪くも旧ソウ一派。
殊に編集者として鳴らしたグルタートは
慎重に配された伏線を鮮やかに回収してみせる
どんでん返しが抜群に上手かったのだけど、
本作でその妙味はほぼ活かされずじまい。
なんとも凡庸な仕上がりの雰囲気スリラーに
終わってしまった。
「史上最悪のバッドエンド」については
想定内との声が多いようだがそりゃそうだ。
そうパケで書かれてしまっては誰も助からな
いことぐらいバカでも想像がついてしまう。
だから一縷の望みをかけて無謀な脱出を
試みてもハラハラなんか全然するわけない。イメージ 8
これは完全に配給の凡ミス。
まずはアルバトロスだから仕方ないけど。

もっとも、ちょっとは興味深い部分があって。
あるヨメのセリフ。
この世には暗闇と夜の獣に魅かれる人間がいる。
それが「カルト」だと。
世を拗ねて、呪いの言葉を唱え、
2階の窓から上がり込んでは他人の赤ん坊を
攫って行く悪魔の手先。
自分達は違う。
神を信じ、太陽の光に照らされて生きる者。
だから自分達はカルトなんかに負けない。
最期には魔王から家族を取り戻すことが
出来ると信じている。
が、そうはならない。
それは自分達が神のシモベなんかじゃなく、
自らの中に潜む闇に気づいていない、
見て見ぬふりを決め込んでいるだけだから。
そんなことを言いたいがためのバッドエンド
であったのだろうと思うのだけど。


にしても。イメージ 9
往年のいぶし銀な男ぶりが無残に消え失せ、
なんだか競馬場でシケモク吸ってそうな
しょぼいオッサンと化してしまった
スティーヴン・ドーフさん(現在45歳)。

…あんたにはガッカリだよ!

映画『サスペリア』~SAS(睡眠時無呼吸症候群)の母

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原題 SUSPIRIAイメージ 1
製作年度 1977年
製作国 イタリア
製作 セダ・スペッタコーリ・ローマ
封切 1977年6月25日
配給 東宝東和
上映時間 98分

監督、脚本 ダリオ・アルジェント 
脚本 ダリア・ニコロディ
製作総指揮 サルバトーレ・アルジェント
製作 クラウディオ・アルジェント
撮影 ルチアーノ・トヴォリ
音楽 ゴブリン&ダリオ・アルジェント
編集 フランコ・フラティチェリ
美術 ジュゼッペ・バッサン
衣装 ピエランジェロ・チコレッティ
出演
ジェシカ・ハーパー:スージー
ステファニア・カッシーニ:サラ
ジョーン・ベネット:ブランク先生
アリダ・ヴァリ:ターナー夫人
フラビオ・ブッチ:ダニエル
ジュゼッペ・トランソッキ:パブロイメージ 2
ウド・キアー:マンデル

鑑賞 2018年9月6日
Blu-ray(発売元:ハピネット)字幕
★★★★★

9月7日はイタリアのマスター・オブ・ホラー
ダリオ・アルジェント生誕の日。
敬虔なアルジェント信者としては、
毎年この日にはアルジェント作品の
ブルーレイをお買い上げすることにしている
のだけど、今年はこの映画。
『サスペリア』
言うまでもない御大の代名詞と言うべき一作。
もう40年以上も昔の映画なのに、
そして何度目にしても、「色褪せない」
その一言に尽きる。
否。世知辛くてシャレが通じない今だからこそ、
その艶やかさが殊更目に映える。
(もっとも。4Kリストアをかけたという
今回のブルーレイ化は確かに綺麗だったけど、イメージ 3
アルジェント流の特徴的な色遣いを必要以上に
強調し過ぎていたような気もする。
特に赤がキツくて、逆に違和感を感じたのは
自分だけではないはずだ)

改めて、やっぱりアルジェントは神様だと
思わず膝を正すような再鑑賞であったけども、
それと同時に、
申し訳ないというか罰当たりと言うか、
ホントにホントにゴメンナサイなのだけど、
もう、御大はダメなんだろうか。
こんな、フィルムの中に魔物が仕込んである
ような映画を撮ることは出来ないんだろうか。
ついそんな不遜な思いに駆られたりもする。
思えば「魔女3部作」の堂々完結を謳った
『サスペリア・テルザ』は本作とほぼ中身は
同じながら、これが本当に同一人物の作品かと
違和感を感じずにはいられない仕立ての劣化
があった。
まあでも老御大がまだ元気に新作を撮ってるん
だからと有難がりつつ観させて頂いてはいたし、
いろいろな意味で面白くもあったけど、
その後に自らの集大成を謳ったかのような
『ジャーロ』、そしてホラーのクラシックに
真っ向から取り組んだ『ドラキュラ』と、
それまでのキャリアをチャラにしてしまう
ような珍作が続いてしまうと、信者としてもイメージ 4
いささか辛くなる。
それでも御大は新作"SANDMAN"を
キックスターターで製作費を募ったりしている
ようだけども、未だにクランクインにすら
漕ぎつけていない模様。
信者ならそれなりにお布施をせんかい!とか
言われそうだが、今の私にそれほどの気持ちは
ない。否むしろ、「観たくない」と言うのが
正直なところであろうか。

前々から立ち上がっては消えてを繰り返してい
たリメイクが漸く完成をしたようで。
「リメイクなんかやめりゃイイのに」と
ハナから否定的なスタンスで見ていたけども、
トレイラーを見た限りでは思いの他に良さげな
感じ。トム・ヨークの音楽がかなりイイ。
ティルダ・スウィントンにクロエ・グレース・
モレッツと、出演陣もなかなかソソる。
日本公開は来年の1月。
御大、これが当たったら次は『インフェルノ』
をリメイクしませんか。
いや、貴方じゃなくて誰か他の人に…とか、
いい加減にしないとホントに罰が当たりそうだ(笑)




映画『7 WISH / セブン・ウィッシュ』~ファイナル・デッド・オルゴール

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原題 WISH UPONイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ、カナダ
製作 ブロード・グリーン・ピクチャーズ
    バステッド・シャーク・プロダクションズ
    オライオン・ピクチャーズ提供
製作費 $16,000,000
配給 インターフィルム
公開 2018年2月24日
上映時間 90分

監督 ジョン・R・レオネッティ
脚本 バーバラ・マーシャル
製作総指揮 ダニエル・ハモンド
    ゲイブリエル・ハモンド
製作 シェリル・クラーク
撮影 マイケル・ガルブレイス
音楽 トムアンドアンディ
編集 ペック・プライア―
美術 ボブ・ジームビッキ
配役 メアリー・ヴァーニュー
    ミシェル・ウェイド・バード
衣装 アントワネット・メサム
出演
ジョーイ・キング:クレア
ライアン・フィリップ:ジョナサン
キー・ホン・リー:ライアンイメージ 2
ミッチェル・スラガート:ポール
シャノン・パーサー:ジューン
シドニー・パーク:メレディス
エリザベス・ローム:ジョアンナ
シェリリン・フェン:ドルーカ夫人

鑑賞 2018年9月13日
DVD(発売元:アメイジングDC)字幕
★★★☆☆

幼少期に母親の自殺現場を目の当たりに
してしまったクレア。
高校生になった今でもトラウマを抱え、
時折悪夢にうなされていた。
学校ではパッとしないナードの仲間。
チアのお嬢様にイジメられ、その一方で
ジョックスのイケメンに密かに想いを
寄せたりしている。
どうせあたしなんか。
ヤサグレ負け犬ライフを謳歌していたが、
ある日廃品回収という名のゴミ漁りを生業と
する父親が「ほれ、誕生日おめでとう。」
古ぼけたオルゴールを放ってよこした。
どうやら中国製のものらしく
古めかしい中国語が象られていたが、イメージ 3
学校で中国語を習っているクレアには
「願いを唱えよ。さすれば叶わん」という
一句を読み取ることが出来た。
へえ、願いごとねえ…
じゃあ、あの憎らしいチアのお嬢様が
どろどろに腐ってしまいますように(笑)
そう言って床に就いたが。
その夜-オルゴールの蓋がひとりでに開き、
不気味な音色を奏で始める。

"as you wish"

『死霊館』でとんでもなく見事なスクリーム
を上げていた三女役、ジョーイ・キングを
主演に迎えてのオカルトスリラー。
監督は長年ワン組でカメラを回していた
ジョン・R・レオネッティ。
プロダクションこそ異なるが、
『死霊館』ユニバースのスピンオフとしても
通りそうな一本である。
腐れトマトでなんかは評価ボロクソだけども、
これがなかなか面白かった。
確かにフレッシュ!では全然ないし
アホなツッコミどころも盛り沢山なのだけど、
鉄板の王道パターンを丁寧に仕立て上げた
良質の「ティーンズホラー」と言っていい。

ホラームービーというのは熱狂的なマニア層イメージ 4
が多く存在するジャンルであるけども、
その市場を支えているのは決してそんな
一握りのマニアたちではない。
それは週末に車に乗り合わせては遊園地や
野球場と同様のノリで映画館へ「遊び」に
出かける、普通の若者達だ。
御大層なメッセージやお上品なテーマ性
なんてのは以ての外。
よく出来たストーリーもこの際は二の次だ。
あんまりグロすぎたり、気の滅入るような
内容も良くない。
山のようなポップコーンを抱えて
シートについた若者達が思う存分に
悲鳴を上げて笑って、きゃあきゃあ騒いで
兎にも角にも「ああ。楽しかった。」と
言わせることができればそれで十分。

ロメロやアルジェント、クローネンバーグと
言ったホラーの巨匠達はアートとしても
立派に評価をし得る、また熱心なファンが
何度も繰り返し愛でるように愛するような
作品をいっぱい遺して来たけども、
その一方で80年代のスラッシャー映画や
90年代の学園スリラー、『ファイナル・
デスティネーション』シリーズのように、
さほど映画に思い入れなんかない一見さんにイメージ 5
向けて大量生産的に作られるホラーもある。
そしてこうした方面に一貫して特化していた
のがウェス・クレイヴンという巨匠であった。

なので自分のようなスレッカラシのマニア
さんがこういう映画についてどうのこうの
言うのもなんなのだけど、これはこれで
自分は好き。
無難でありきたりで観た次の日には
なんか他の映画と記憶がごっちゃになって
たりしそうな一本だけども、
そんなのをマジメに丁寧に作ろうという
職人根性に、なんだかホッとしてしまう。

ジョーイのスクリーム。今回も凄いです!

映画『リブ・フリーキー!ダイ・フリーキー!』~ああ見えて根はイイ人なのよ…バカだけど!

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原題 LIVE FRIEKY! DIE FRIEKY!イメージ 1
製作年度 2006年
製作国 アメリカ
製作会社 ユーブ・ガット・バッド・テイスト・プロダクションズ
日本公開 2006年7月6日
国内配給 デックス・エンターテインメント
上映時間 75分

監督、脚本 ジョン・ロッカー
製作、音楽 ティム・アームストロング
製作、美術 ロリン・フレミング
音楽 ロディ・ボタム 
編集 ディーン・ゴンザレス
アニメーター モーガン・ヘイ
    マシュー・マニング
    デヴィッド・ショアリー他
出演
ビリー・ジョー・アームストロング:チャーリー
テオ・コーガン:ヘイディ
ケリー・オズボーン:シャロン・ヘイト
ジェーン・ウィードリン:スクィーキー
ショーン・イソールト:ヘスリー
ジョン・ドー:テックス
アーシア・アルジェント:フォルジャー

鑑賞 2018年9月15日 DVDイメージ 2
(発売元:デックス・エンターテインメント)字幕
★★☆☆☆

むかしむかし。ブルハとかジュンスカとか
縦ノリのバンドブーム全盛だった頃、
「アンジー」というバンドがあって。
言葉遣いは乱暴なんだけども
それでいてどことなく寂しげで、
すごくシャイな人が部屋の片隅でポエムを
ひり出したような歌詞がヤケに好きで、
当時学生だった私は四六時中ウォークマンで
聴き入ったもんだった。
が。若干売れてきて
あまり共通項のないようなバンドとツルんで
「俺たちはポコチンロックだ!」とか
言い出した辺りから、
なんか下らんことを言う人たちだなあと
急に萎えてしまい、すっかり聴く気が失せて
しまった覚えがある。

さて本作は「シャロン・テート殺人事件」を
どういう了見かクレイアニメで描いたという
ヘンな映画。
「この映画は実際に起きた事件とイメージ 3
なんの関係もありません」
とかエンドロールで言ってはいるものの
登場人物の名前を適当に変えただけで、
まるっと確信犯的に事件の顛末そのものを
描いている。
クレイアニメと言えば「ピングー」とか
「ウォレスとグルミット」みたいな
(自分の年代的にはなんと言っても
「ヤクルトミルミル」のCMなわけだが)
子供向けのほのぼのコンテンツといった
イメージがあるが、この作品においては
セックス、ドラッグ、猟奇殺人等々
アダルトでアブノーマル極まりない
エログロの世界。イメージ 4
作り手はアニメだったら毒が和らぐかとか、
もしくはギャップウケ的なところを狙った
のかもしれないが、却って異様な気持ちの
悪さが増してしまっている。
テイストとしては『死霊のはらわた』の
クライマックスやピーター・ジャクソンの
『ミート・ザ・フィーブルズ』あたりに
近いかもしれない。

聞けば本作はグリーンデイのメンバーと
そのPVを手掛ける監督さんがイメージ 5
気心の知れたミュージシャン仲間に
「なんかおもしれーことやろうぜ♪」
みたいなノリで呼びかけて作られたもの
らしい。
なのでその界隈のロックツウ的には豪華
メンバーが声を当てているらしいのだけど、
正直グリーンデイなんか聞いたことない
五十路のオッサン的には皆目理解不能。
(唯。アーシア・アルジェントがヌッ殺さ
れる変態セレブ役というのはコレ如何に)
下品な振る舞いや罰当たりな言葉はイメージ 6
ロックの基本動作なのかもしれないけども、
"YOU'VE GOT BAD TASTE"
プロダクション名が示すように作り手達は
観客に中指を突き立てるような内容で
不快な思いをさせるのが目的だったわけで、
そんな類いのものを見せられるのは
悪趣味な映画をそれなりに嗜んできた
自分としてもヤブサカではない。
ただ、カルトの連中やセレブの類いを
一緒くたに笑い飛ばすんではなしに、
チャールズ・マンソンをヘンに特別視し
ているあたりが凄く気持ち悪い。

監督曰く-この映画には「盲信するな、
臆病な羊のように言いなりになるな」と
いう僕のメッセージが込められています。
 頭は考えるためにあるんだから色々なこ
とに疑問を持とうよ、ってことです。

真面目か(笑)
ただバカ笑いを垂れ流していればまだ良か
ったのに、こんなウスラバカなコメントを
浴びせられて一気に覚めてしまった。

そう言えばタランティーノの新作
"ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD"
はシャロンテート事件が主題になるとか。
同時代に生きたタランティーノが
果たしてカルトをどのように描くのか、
興味津々なところではある。

映画 『Z inc. ゼット・インク』~グレンだってブチギれる

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原題 HEYHEMイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作会社 サークル・オブ・コンフュージョン
    ロイヤル・ヴァイキング・エンターテインメント
日本公開 2018年1月6日
(2018未体験ゾーンの映画たち)
国内配給 ニューセレクト
上映時間 86分

監督 ジョー・リンチ
脚本 マティアス・カルーゾー
製作総指揮 バディ・エンライト
製作 パリサ・カヴィアーニ
    メーアダッド・イーリー
    ローレンス・マティス他
撮影 スティーヴ・ゲイナー
音楽 スティーヴ・ムーア
編集 ジョシュ・イーティア
美術 ミーナ・ビュアリック
配役 J・C・キャントゥ
    ネナド・パヴロヴィッチ
衣装 モミルカ・バイロヴィッチ
出演
スティーヴン・ユアン:デレク
サマラ・ウィーヴィング:メラニー
スティーヴン・ブランド:ボスイメージ 2
キャロライン・チケジー:サイレン
ケリー・フォックス:アイリーン
ダラス・ロバーツ:リーパー
マーク・フロスト:ナイルズ
クレア・デラマー:メグ
アンドレ・エリクセン:ブル

鑑賞 2018年9月19日
DVD(発売元:アルバトロス)字幕
★★★★☆

新手のウィルス「ID4」。
感染をした者は感情の抑えが効かなくなり、
本能のままに行動をする野獣と化す。
腹が立てば即手が出るし、
欲情すれば即その場でセックス。
但し症状が続くのは8時間。

グレン…じゃない、デレクは
大手法律コンサルタントの若手弁護士。
-感情のコントロールが効かない人間に
犯罪責任を問うことは出来ない。
よってID4ウィルスの罹患中に起きた事件
については無罪放免。
そんな法解釈で勝訴を勝ち取り、イメージ 3
一躍手柄を立てたのがデレクであった。
高層オフィスビルの最下層で、
ドライで世知辛い社風に耐えながらも
ひたすら上を目指して遮二無二頑張って来た。
のに。無能な同僚のミスを擦り付けられ、
これまた無能な上層部はその濡れ衣を疑う
ことなくデレクの解雇を決めてしまう。
私物ボックスを抱え失意のまま会社を去ろうと
したその時、突如防護服に身を包んだ男達が
駆け込んできてビルを封鎖してしまう。イメージ 4
「当ビルにID4が発生しました。
感染を最小限に抑えるため、中にいた方々は
ビルから外に出ることは出来ません。
封鎖が解除されるのはこれより8時間後です。
それまではくれぐれも冷静な行動を心掛けて
下さい。まあ、ムリだろうけどな!w」

その時既にビル内は発症した感染者が何人か
暴れ出していた。
朝にちょっとこぜりあった同僚から
痛烈なパンチを食らったその時、イメージ 5
デレクの中にも火が点いた。
ちくしょう!このまま諦めてたまるか!
身の潔白を証明して、解雇を取り消させてやる。
会いたくないと言われても押し通るまで。
ガードマンだろうが用心棒だろうが邪魔をする
奴はみんなぶっ殺す。そう。あと8時間、
なにやらかそうが無罪放免なんだからな-!

『ウォーキング・デッド』のグレン役で
全米一「善良な」アジア人となった
スティーヴン・ユアン主演の感染パニック
アクション。
パケだけ見るといかにもアルバトロスなイメージ 6
クズゾンビ映画と思われるかもしれないが、
これが思わぬ拾い物。
無駄のないタイトなストーリーラインに
コミカルに立ったキャラクター、
そこかしこにマニアックな遊びの効いた、
「Bムービー」の良作でありました。
大ボスの棲む高層ビルのてっぺん目指して
進んで行き、途中に中ボス小ボスが控える
という『死亡遊戯』方式。
そして8時間というタイムリミット付き。
シンプル&スピーディな展開であっという間
の90分弱。面白いよ♪

監督は『クライモリ:デッドエンド』、
『エヴァリー』のジョー・リンチ。
フィルモグラフィこそさほど多くないが、
このところはジャンルファンの喜ぶツボを
しっかり押さえた「B」の職人と言った
風格すら。
ゴアゴアの使い方なんかも手慣れたもんで、
結構どギツい描写もカラリと笑いに持って
行く仕立ての良さ。
曲のセンスやカブセ方もかなりツボ。
この前の『エバーモア』はまだ観てなかった
けど、これも観てみよう。

グレンの「イイ奴」イメージから
「あのグレンがブチ切れて鬼畜化」というイメージ 7
ギャップありきの企画なわけだけども、
期待通り(笑)「やっぱりイイ奴だよね♪」
というところにオチてのハッピーエンド。
ただどうせなら有刺鉄線バットをぶんぶん
振り回すシーンが欲しかった。
もしくはラスボス役が
ジェフリー・ディーン・モーガンとか。
(それじゃパロになっちゃうか)

ヒロインのサマラ・ウィーヴィングは
前の『ベビーシッター』の時はどうもイメージ 8
フェロモンの使いどころを間違えてた感が
あったけども、今回は目の覚めるような快演。
いちいちパーツのデカいルックスが
リミッターの振り切れたドS美女という
役どころにびったりとマッチした。
(※ちなみにヒューゴ・ウィービングの
姪っ子さんであるらしい。納得)
"FUCK YOU."
"FUCK YOU TOO"
グレンとの掛け合いも心地よく。
にしてもマギーといい、グレンてキツ目が
合う人なのかね。


…にしても、
ネトフリは『ウォーキング・デッド』の
シーズン8をやる気はないのかのう。
そろそろ細かいとこ忘れそうじゃぞい。

映画 『ベイビー・キャッチャー』~ローズマリーの産後鬱

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原題 STILL/BORNイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 カナダ
製作会社 ハドロン・フィルムズ
  デジタル・インターファレンス・プロダクションズ
日本公開 2018年9月5日(DVD)
国内配給 ニューセレクト
上映時間 87分

監督、脚本 ブランドン・クリステンセン
脚本、製作 コリン・ミニハン
製作総指揮 ジョヴァンニ・ベルナルディ
    マイルズ・フォースター
    ベン・ネックテル他
製作 クリス・ボール
    カーティス・デヴィッド・ハーダー
撮影 ブラッドリー・スタッケル
音楽 ブリッツ//ベルリン 
美術 マイク・カスパー
配役 ティファニー・マック
衣装 ブランカ・アズソーキ
出演
クリスティ・バーク:メアリー
ジェシー・モス:ジャック
レベッカ・オルソン:レイチェル
ジェン・グリフィン:ジェーン
シェイラ・マッカーシー:シェイライメージ 2
シェーン・ロジャーソン:ティム
マイケル・アイアンサイド:ニールスン医師

鑑賞 2018年9月21日
DVD(発売元:アルバトロス)字幕
★★★☆☆

双子を授かったメアリー。
一子は無事に産声を上げたが、もう一子は
死産をしてしまう。
悲しいけど、嘆いてばかりもいられない。
元気に生まれて来たこの子を大事に育てて
行かなくちゃ。
郊外の閑静な住宅街で暮らし始めたが。
独りの時間。2つ並んだベビーベッドの、
空いた方を見るにつけ募るやるせなさ。
「もう、片付けてしまわないか?こんなの
いつまで置いていたって、あの子は…」
分かってる、そんなことは。
でも、あたしは忘れたくない。絶対に。
仕事人間の旦那はなにかと留守が多いが、
たまに帰って来ればマメに赤ちゃんの
面倒を看てくれる。それはありがたいが、
なんだろ、そのソツのない育メンぶりが
癪に障る。
旦那の腕の中ですやすや寝息を立てるイメージ 3
赤ちゃんの顔。なんだよ。あたしの時は
ぐずってばっかなのに。
おっぱいも全然飲んでくれないし。
なんか自信がなくなって来たよ。
あたしに母親なんか務まるんだろか?
「君は疲れているんだ。産後のダメージで
少し神経質になっているんだよ。」
そうなのかなあ…やっと赤ちゃんを寝かせ
つけて階下でぼーっとしていたその時。
ベビーカムから赤ちゃんのつんざくような
鳴き声が。イメージ 4
ちぇ、速攻かよ…渋々腰を上げると、不気味な
しゃがれ声がベビーカムから聞こえて来る。

「ひっひ、これまた旨そうな赤ん坊だねえ…」

魔女「ラマシュトゥ」が
ウチの可愛い赤ちゃんを狙ってるの!
そう言って怯えるヨメであったが、当然周りはイメージ 5
ビタ一文信じない。
死産からのショックか。果ては育児ノイローゼか。
ヨメの言う怪現象をロクに確かめもせずに
医者に通わせてはクスリを飲ませ、
ただ闇雲に安静を強いる。
果たして怪現象は単なる気のせいなのか。
ベビーカムに映り込んだ魔女の声や姿は
ヨメの思い込みが生み出した幻聴、目の錯覚の
類いなんであろうか?
ガチか。妄想か。イメージ 6
『ローズマリーの赤ちゃん』から
『エクソシスト』に『シャイニング』、
果ては『ババドック/暗闇の魔物』や
『オキュラス/怨霊鏡』など
典型的な神経衰弱スリラーと言っていい。

脚本、製作は『グレイブ・エンカウンターズ』、
『エクストラテレストリアル』などの
コリン・ミニハン。デビュー以来の相方
スチュアート・オーティスは今回不参加。
さてはヴィシャス・ブラザース解散か。
初期はいかにも今ドキの若い作り手らしい
ナナメな作風が特徴的であったが、
前作『サンズ・オブ・ザ・デッド』では一転
親の情愛を謳ったラストに「おや?」と言った
感じだった。
そして今回は子供を失ってしまうことへの
恐怖をえらく神経質に訴えかける。
ええ、分かります。親になったんですね。
スティーヴン・キングは嘗てこう言っていた。
「考え得る限りで最も恐ろしいこと。
それは子供部屋のドアを開けたら、
そこに死んでいる子供の姿を目にすることだ。」
我が子を失ってしまうなんてのは
考えるだけでも辛いことである。イメージ 7
特に生まれたばかりの赤ちゃんとなれば
この上なく小さく、弱々しい存在。
病気や事故、ほんの些細な不注意によって
その命は呆気なく消し飛んでしまう。
だから親が全力で守って行かなければいけない。
のに、赤ん坊を授かったばかりの若い親はつい
心配に感じてしまうものだ。
この俺に親なんか務まるもんだろうか?
経済力もなければ分別もない。
子供が子供を産んだと揶揄される若輩者が、
まともにこの子を育てて行くことなど
果たしてできるんだろうか?
果ては虐待、育児放棄、全うな親であることを
諦め、鬼になってしまう奴もいる。
まさかとは思うが、絶対にそうならないと言い
切れない、今いち自信が持てない自分がいる。
本作は子供を授かったばかりで幸福の絶頂を、
またこの上ない責任の重さを感じる若い親達が
沸々と湧き上がる不安を描いたものと言える。
かく言う自分も娘を授かったばかりの頃、
大事に抱いていた子供を路上に落っことして
なぜかべちゃべちゃに潰れてしまうという
ヘンな悪夢を頻繁に見て魘されたもんだった。
(ヨメ曰く「ヤヴァい映画の見過ぎ」だと。
確かに、否定はしないが)

テーマ自体はなかなか興味深かったのだけど、
肝心のお話がどうにも尻すぼみに終わった感。
ラストの投げっぱなしな〆め方には
「考えたけど、やっぱ分かんね(笑)」

ヘラヘラ笑って飲みに繰り出していた、
若かりし日の自分を思い出す。反省。

映画『ダークタワー』~指輪リスペクトからのイドリス無双

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原題 THE DARK TOWERイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作会社 メディア・ライツ・キャピタル
    イマジン・エンターテインメント
    ウィード・ロード・ピクチャーズ
    ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント   
製作費 $6.000,000
日本公開 2018年1月27日
配給 ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント
上映時間 95分

監督、脚本 ニコライ・アーセル
脚本 アキヴァ・ゴールズマン
    ジェフ・ピンクナー
    アナス・トマス・イェンセン
原作 スティーヴン・キング
製作総指揮 G・マック・ブラウン他
製作 ロン・ハワード
    エリカ・ハギンズ
    ジュヌヴィエーヴ・ホフマイヤー
撮影 ラスムス・ヴィドベック
音楽 ジャンキー・XL 
編集 アラン・エドワード・ベル
    ダン・ジマーマン
美術 クリストファー・グラス
配役 マリソル・ロンカリイメージ 2
    メアリー・ヴァーニュー
衣装 トリッシュ・サマーヴィル
出演
イドリス・エルバ:ローランド
マシュー・マコノヒー:ウォルター
トム・テイラー:ジェイク
クローディア・キム:アラ
ジャッキー・アール・ヘイリー:セイヤー
アビー・リー:ティラナ
フラン・クランツ:ピムリ
キャスリン・ウィニック:ローリー

鑑賞 2018年9月26日
Blu-ray(発売元:ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント)字幕
★★★☆☆

昨年のサマーシーズンに
一躍ボックスオフィス1位を飾り、
『イット』に先駆けてスティーヴン・キング
のブーム再燃を印象付けた一本。
…にしても、「ダーク・タワー」と言えば
いつもの分厚い文庫本が16冊だかでイメージ 3
完結するまでに30年もかかった、
一時は「未完」になってしまうんじゃないか
と言われていたほどの大著。
キング自身「史上最も長い小説を書こうと
思って書き始めた」と言う。
そんなべらぼうな代物を「映画」にするという
報に「え、テレビシリーズじゃなくて?」と
首を傾げた向きも多かったんじゃなかろうか。

果たして蓋を開けてみればなんと95分と
そこらのB級アクション並みのスッキリラン
タイム。
そして主演がどういうわけかイドリス・エルバ。
原作では確か『夕陽のガンマン』の
クリント・イーストウッドをイメージしてた
はずなんだが、またマイノリティ問題って
やつだろうかね。
もしかしてと言うかもしかしなくとも
これはやっちまった類いなんじゃないかと
訝しがりながら手に取ったのだけど。
ちなみに原作は未読。
一応読んでから観た方イイかとも思ったが
(そうなると実際に観るのは2、3年後に
なるわけだが)、どうせ文句タラタラにな
るんだろうから原作抜きで観ることに。

結果、その判断は至極正しかった。イメージ 4
「スティーヴン・キング原作」の冠で
観てしまえば肩スカシもいいところ。
コンセプトのカン違いぶりではあの大迷作
『バトルランナー』に匹敵すると言っていい。
いかにも夏休みにピッタリの、至って
お気楽お手軽なB級SFアクションである。
もっとも原作からして「指輪物語の世界に
荒野のガンマンが降り立った」という
アイディアが始まりだったから、
このアプローチは間違いとも言い切れない。
そして恐らく作り手はこの砕けきった
アプローチをしっかりと弁えていて、
壮大で長大なダークファンタジーの忠実な映
画化という恐ろしくリスクの高い企画を避け、
「マカロニ仕立てのSFアクション」という
要素にのみ特化を試みたものと思われ。
そこのところを割り切って観れば、
これが思いのほかに痛快なB級アクションに
仕上がっていたりする。

とにもかくにもイドリス・エルバのカッコ良さ
に尽きてしまう。
原作からすればミスキャストでしかないの
だけど、この「映画」については大正解。
タフでイカつい風貌になストイックな佇まい
が選ばれた「守護者」のイメージにびったり
ハマる。
傍らに侍る少年との交流もジェンマのイメージ 5
『シルバーサドル』等マカロニガンマンの
一要素だが、どちらかと言えば
「お前みたいなガキ相手にしてられっか」
みたいなツンデレ調の方がこの人には
合っていたような。
流麗でスピーディなガン裁き、
曲芸みたいな装填から銃身をクルクル回す
モーションにシビレまくり。
2丁拳銃をバンバンぶっ放しまくり
壁ぶっ壊しまくり横っ飛びしまくりの
(ハトは飛びません)クライマックスは
男子ならすさまじくアガること間違いなし。
対する「魔法使い」役マシュー・マコノヒー
もえらくカッコよかったけど、なんとなく
ムダ遣い感がしなくもない。

にしてもこれが週間トップを取っちゃうと
いうのは、やはりみんな「ダークタワーの
映画化」が見たかったんだろうな。
それだけ本国では「キング」のブランドが
今だ根強いということなのかと。
さて。なかなか手に取る気になれなかった
原作の方を自分もぼちぼち読んでみると

しようか。読み終わるまで何年かかるかな…

映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』~フレンチスペースオペラはツンデレ型

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原題 VALERIAN AND THE CITY OF A THOUSAND PLANETS
製作年度 2017年イメージ 1
製作国 フランス、中国、アメリカ他
製作会社 エウロパコープ、TF1、OCS他
製作費 €197,000,000
日本公開 2018年3月30日
国内配給 キノフィルムズ
上映時間 137分

監督、脚本、製作 リュック・ベッソン 
原作 ピエール・クリスタン
    ジャン=クロード・メジエーレ
   (コミック"Valerian and Lauleline")
製作総指揮 マルク・ギャオ
    グレゴリー・ウアノン
    JC・チェン
製作 ヴィルジニー・ベッソン=シラ他
撮影 ティエリー・アルボガスト
音楽 アレクサンドル・デスプラ
編集 ステファヌ・ガルニエ
    ジュリアン・レイ
美術 ユーグ・ティサンディエ
配役 ナタリー・シェロン
衣装 オリヴィエ・ベリオ
出演
デイン・デハーン:ヴァレリアン
カーラ・デルヴィーニュ:ローレリーヌ
クライヴ・オーウェン:フィリット司令官イメージ 2
リアーナ:バブル
イーサン・ホーク:客引きのジョリー
ハービー・ハンコック:国防大臣
クリス・ウー:ネザ
サム・スプルエル:オクト=バー将軍
ルトガー・ハウアー:世界連邦大統領

鑑賞 2018年9月29日
Blu-ray(発売元:TCエンタテインメント)字幕
★★★☆☆

監督やめたるとか言いながらなかなか引退しない
映画界の長州力、リュック・ベッソンの最新作は
絢爛豪華なスペース・オペラ!

『フィフス・エレメント』で懲りなかったのかね
この人は…と思いきや、
なんでも『フィフス~』を撮っている時から
「なんで君は"ヴァレリアン"を撮らんのかね?」
と言われていたとか。
"Valerian & Lauleline"はフランスでは
昔から親しまれているコミックで、その世界観
はSWにも多大な影響を与えているそうな。
当然ベッソンとしてもその映画化には
まったくヤブサカではなかったようで、
遂に念願が叶った夢の企画であったらしい。

巷ではSWの再始動に『ガーディアンズ・オブイメージ 3
・ギャラクシー』のメガヒットなんかもあり、
「おっしゃ俺も一発カマしてやるか!」
そんなキモチもあったのかもしれない。

製作費はフランス映画史上最高の2億ユーロ。
(260億円!)まさにベッソンパイセンの
荒い鼻息が聞こえてきそうな作品である。
リュック・ベッソンと言えばひと頃は
『グラン・ブルー』や『レオン』等
あくまでもハリウッド製とは一線を画した
ハイセンスなエンタメ作品を作る人だったが、
このところは『ルーシー』やプロデュース作
の『TAXi』、『トランスポーター』など、
ハリウッドでもなかなかやらない位にベタな
「頭悪い系」のエンタメ番長と言った感。
果たしてそのベッソンさんが
如何にバンドデシネのお膝元ならではの
本格スペースオペラを見せてくれるのか、
多分な期待を含みながら手に取ったのだけど。

ボウイの"SPACE ODDITY"を
フィーチャーしたオープニングから
えらく気合の入ったCG絵巻のつるべ打ち。
カラフルな画の作り込みもすごくイイ。
クリーチャーの造形もメカデザインも
いちいち凝っていてカッコいい。
こと絵だけ見てる分にはSWやマーベルにも
引けを取らない贅沢な映像体験なのだけど、イメージ 4
なんだろ。観ているうちに段々飽きて来る。
いまいち惹き込まれない。
委細入念に作り込まれた世界観にどっぷりと
浸かりこむ、ファンタジーの醍醐味が
いまいち希薄なのだ。

その要因のひとつが主演ふたりの役不足。
タイトルロールのヴァレリアン役
デイン・デハーンはまるでヒーローらしさの
感じられないナヨ系男子。
それなりに「稼げる」若手スターを配したの
だろうけども、これは明らかにミスキャスト。
ルーク・スカイウォーカー然り、
カーク船長然り、スターロード然り、
スペースオペラの主役には銀河の果てまで
夢を飛ばす屈強な「推進力」が必要なのだ。
なんぼセリフで「オレってタフガイだろ?」
とか言われてもまるで付いて行く気がしない。
ヒロインは流石にベッソンのお見立てだから
ただ眺めてるだけでウマ~な
フォトジェニックぶりであったけども、
それにしてもお芝居がお粗末の一言で。
これだけ鉄板のツンデレキャラ与えられたら
ひとブレイクしてもおかしくないのに、
まるで印象に残らない。
(この役を5年前のエルファニングさんがイメージ 5
演ってたらと思うと恐ろしくて仕方がない)
更にはこれだけ金をかけてガッツリ世界観を
作り込んでおきながら、お話のスケールが
えらくちっさくてビックリだよ。
ラスボス、クライヴ・オーウォンの小者ぶりと
イーサン・ホークの無駄遣いに思わず失笑。

とりあえずは「見る」だけなら十分に愉しめる。
例えば飲み屋なんかのディスプレイで
垂れ流す分には最適な一本じゃないだろか。

映画『クワイエット・プレイス』~音を鳴らして生きて行くのさ

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原題 A QUIET PLACEイメージ 1
製作年度 2018年
製作国 アメリカ
製作会社 プラティナム・デューンズ
    サンデー・ナイト
製作費 $17,000,000
日本公開 2018年9月28日
国内配給 東和ピクチャーズ
上映時間 90分

監督、脚本 ジョン・クラシンスキー
脚本 スコット・ベック
    ブライアン・ウッズ
製作総指揮 アーロン・ジェイナス
    アリソン・シーガー
    セリア・コスタス他
製作 マイケル・ベイ
    アンドリュー・フォーム
    ブラッド・フラー他
撮影 シャルロット・ブルース・クリステンセン
音楽 マルコ・ベルトラミ
編集 クリストファー・テレフセン
美術 ジェフリー・ビークロフト
配役 ジョディ・アングストライク
    マリベス・フォックス他
衣装 カシア・ウォリッカ=メモーヌ
出演イメージ 2
エミリー・ブラント:イヴリン
ジョン・クラシンスキー:リー
ミリセント・シモンズ:リーガン
ノア・ジュープ:マーカス
ケイド・ウッドウォード:ボー
レオン・ラソム:森の中の男
鑑賞 2018年10月3日

仙台東宝シネマズ 字幕
★★★★★

今年の春に一躍ボックスオフィス1位を獲って
話題になったホラーがようやっとお目見え。

「それ」は、突然やって来た。
呆気なく崩壊した世界の片隅で、
静かに暮らす一組の家族があった。
父。母。姉。弟。そして幼い末っ子。
常に裸足で歩き、言葉を発せず、
葉っぱの食器を前に食前の祈りを捧げ、
布製のボードゲームで退屈を凌ぐ。
とにかく音をたてないようにしてこの一年を
なんとか生き延びて来たのだ。
音がしたら、即死。
風や川の流れ、雷など自然の音は構わないが、
人間のわずかな生活音でも「それ」は敏感に
聴きつけ瞬時に命を奪って行ってしまう。イメージ 3
父は時折地下に籠り、この危機から抜け出す
方策を探っているが未だ埒はあかない。
いつまでこんな暮らしを続けて行くのか。
否、いつまで持ち堪えられるのか…
運命の時は刻一刻と迫っていた。
母の胎内には新しい生命が宿っていたのだ-

前評判に違わず、本当に見事な一本でした。
全米大ヒットホラー!と聞くと
『イット』にしろ『死霊館』にしろ
『ゲットアウト』、『スプリット』にしろ、
確かに面白いは面白いのだけど、
既存のブランドネームが効いていたり
ティーザー戦略が巧みだったり
上手いことハヤリに乗せてあったりと、
中身よりかは「売り方」が決め手になっていた
感があるのだけど、本作については正真正銘の
無印良品。
作り手達はほぼ無名、プロダクションも極小、
主演のエミリー・ブラントこそ有名女優だが
名前だけで客を呼ぶ類のスターではない。
「音を立てたら即死」という発想こそ奇抜だが、
アイディア先行というわけでもない。
ひとえに満足度の高い、優れた内容が真っ当
に評価をされ、口コミで動員数を伸ばして
行ったことが窺える。

表題通りに静かなトーンで物語が進んで行くイメージ 4
のだが、退屈なんか全くしない。
逆にハンパない緊迫感の中でハラハラドキド
キのしっぱなし。
なんせちょっとでも音を出せば「なにか」が
襲ってくるんである。
やっつけるとか、逃げるとか、そういう次元
の問題ではない。一発レッド。瞬殺なのだ。
極力音を立てずに毎日を生き延びるだけでも
しんどいのに、お母ちゃんは出産を控えている。
大変なのだ。苦しくて、痛くて、大声が出るのだ。
想像するだに「どうすんだよ」なのだ。
あらゆる行動が制限される極限状況の中で、
家族が「出産」という一大事を迎える感動的な
クダリがクライマックスとなると思われたが、
そうではない。
産んだら終わりではないのだ。
そう、赤ん坊というのは「泣くのが仕事」と
言われるように、生まれ落ちたその時から
大声で泣き喚く生き物なんである。
静かにしろとか言ったってまるで聞く耳なし。
ゲロ混みの電車の中で泣き止まない赤ん坊を
抱え困り果てた経験はないだろうか。
赤ん坊が悪いわけじゃないが、針の筵とは
まさにこのこと。

極上のサスペンスが味わえるサバイバル劇で
あると同時に、この上なく豊かなファミリー
ドラマでもある。イメージ 5
とある出来事を切欠に罪の意識を抱え、
希望を失いかけた家族がひとつひとつ困難を
乗り越え、再生をしていく物語。
言葉を発することが出来ない世界の中で、
ウソ偽りのない本当の気持ちを伝えることの
大切さ。
耳の聞こえないお姉ちゃん。
両親の愛の言葉を聞いたことがなく、
「どうせあたしなんか」とヤサグレていた
彼女がいたからこそ、この手話で会話をする
家族は生き残ることが出来たのかも。
脚本のスコット・ベックとブライアン・ウッズは
この前の監督作『ナイトライト/死霊灯』が
ブラムハウスの出来損ないと言った感の凡作
だったが、こんなにイイ本を書く人達だったか
と認識を改めさせられた。
父親役も務めた監督ジョン・クラシンスキーの、
いかにも役者らしいストイックな演出ぶりが
際立っていたとも言える。
なんでもクラシンスキーはホラーに造詣がなく、
『ジョーズ』と『ドント・ブリーズ』を参考に
したとか。要は「基本通り」ということか。
ちなみにエミリー・ブラントの旦那だとか。
道理で、あのダンスシーンの雰囲気は役作り
だけじゃ出せないよな。

案の定、続編の企画が既に上がっているとか。
どちらかと言えばあの家族の「その後」よりも
また他の家族の「それから」を見せてほしい
ような気がするのだけど。

映画『死霊館のシスター』~この顔にピンと来たら死霊館

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原題 THE NUNイメージ 1
製作年度 2018年
製作国 アメリカ
製作会社 アトミック・モンスター
    ニューライン・シネマ
    ザ・サフラン・カンパニー
製作費 $22,000,000
日本公開 2018年9月21日
国内配給 ワーナー・ブラザース
上映時間 96分

監督 コリン・ハーディ
脚本 ゲイリー・ドーバーマン
製作総指揮 ウォルター・ハマダ
    デイヴ・ノイスタッター
    トッド・ウィリアムズ他
製作 ジェームズ・ワン
    ピーター・サフラン
撮影 マキシム・アレクサンドル
音楽 アベル・コルゼニオウスキー
編集 ミシェル・オーラ―
    ケン・ブラックウェル
美術 ジェニファー・スペンス
配役 リッチ・デライア
    リリアナ・トーマ他
衣装 シャロン・ギラム
出演イメージ 2
デミアン・ビチル:バーク神父
タイッサ・ファーミガ:アイリーン
ジョナ・ブローケ:フレンチー
ボニー・アーロンズ:ヴァラク
イングリッド・ビス:オアナ
シャーロット・ホープ:ヴィクトリア
サンドラ・テレス:ルース

鑑賞 2018年10月11日
MOVIX仙台 字幕
★★★☆☆

着々と構築が進む「死霊館ユニバース」。
そのメイン悪役である悪魔の尼さん、
シスター・ヴァラクのビギニングを描いた
スピンオフ的一本。

舞台はルーマニア-吸血鬼伝説のお膝元。
ウォーレン夫妻の活躍から遡ること20年
ほど昔、山奥の修道院である修道女が自殺
を遂げた。
聖職者の自殺は教義に背くタブー。
この由々しき事態を受け、バチカンは
オカルトの専門家バーク神父に調査を命ずる。
神父は現地の出身である見習い修道女の
アイリーンと共に問題の修道院を訪れるのだが、
そこには恐ろしい秘密が隠されていた-イメージ 3

なんだかんだで楽しみにしていたこの一本。
シリーズ全体にも絡んで来るとのことで、
『死霊館』2本と『アナベル』2本を
しっかり予習してから、万全の態勢で鑑賞に
臨んだのだけど。
しょっぱなから趣もリアリティも皆無の
コケ脅し全開オバケ屋敷仕様に面食らう。
尼さんが首を吊ったら地獄の門が開いちゃった!
というオープニングからして
「おや…?」という感じだったが、
墓場から死体がもりもり起き上がって来るわ、
生きたまま埋葬されて相方に助けてもらうも
シャベルで頭カチ割られそうになったり、
果ては水浸しの地下室が異世界に通じていたり。

あまりにも『地獄の門』過ぎないか(笑)

そう、ルチオ・フルチのグログロゾンビ映画
『地獄の門』の全編オマージュだらけ。
完コピと言ってもいい。
例えばあの有名な「はらわたげろげろ」を
「口から蛇がニョロニョロ」と言った具合に
アレンジを利かせてアカラサマなグロ描写を
避けながらも、『地獄の門』の絵ヅラを
忠実に再現しようとしていたのが明白で。
他にも『死霊のはらわた』や『デモンズ』が
元ネタと思われるシーンもあったり。
監督のコリン・ハーディは前作『ザ・ハロウ』イメージ 4
でも『物体X』や『ディセント』、デルトロ
映画等、古今東西のクリーチャーホラーに
熱烈オマージュを捧げる中で、『サンゲリア』
への蘊蓄をしっかり忍ばせていた。
80年代のクリーチャーホラーやフルチ映画、
ひいてはビデオバブル期のファンタスティック
映画を心底愛する人なんでしょう。
それはそれで決して面白くなくはないのだけど、
それでもやっぱり『死霊館』。
いくらスピンオフとは言え、
『死霊館』サーガの事始めと言うべき
エピソードがこんなんでイイのか?
という食い足りなさはどうしても残る。
『死霊館』本編へのクロスオーバーについても
ムリヤリ取ってつけた感がアリアリで。

評価はボロクソだったようだけども
それなりにヒットをしたようなので、
恐らくは『アナベル』同様に続編が作られる
ものと思われ。
そこでヴァラクとウォーレン夫人の因縁が
描かれるんだろうけども、次はもうちょっと
真面目に取り組んで頂きたい。

映画『地獄の門』~はらわたげろげろ

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原題 PAURA NELLA CITTÀ DEI MORTI VEVENTI
英題 THE GATE OF HELLイメージ 1
製作年度 1980年
製作国 イタリア
製作会社 ダーニャ・フィルムズ
    メデューサ・ディストリビューション
    ナショナル・シネマトグラフィカ
日本公開 1986年3月1日
国内配給 ソニー・ピクチャーズ(ビデオ)
上映時間 92分

監督、脚本、製作 ルチオ・フルチ
脚本 ダルダーノ・サケッティ
製作総指揮 ロバート・E・ワーナー
製作 ジョヴァンニ・マシーニ
撮影 セルジオ・サルヴァティ
音楽 ファビオ・フリッツィ
編集 ヴィンチェンゾ・トマッシ
美術 マッシモ・アントネロ・ゲレング
特殊メイク ジノ・デ・ロッシ
    フランコ・ルフィーニ
出演
クリストファー・ジョージ:ピーター
カトリオーナ・マッコール:メアリー
カルロ・デ・メイヨ:ジェリー
アントネラ・インテリエンギ:エミリー
ジョヴァンニ・ロンバルド・ラディーチェ:ボブ
ダニエラ・ドリア:ロージーイメージ 2
ファブリツィオ・ジョヴィーネ:トーマス神父
ルカ・ヴェナンティーニ:ジョンジョン

再鑑賞 2018年10月12日
DVD 発売元(エスピーオー) 字幕
★★★★☆

絶賛(?)公開中、『死霊館のシスター』。
『死霊館』本編を予習に観るよりも、
こっちを観ておいた方がある意味楽しめるん
じゃないかと思われ。
まず、それなりのグロ耐性があればの話だけど。

『地獄の門』- "The Gates of Hell"('80)は
「マカロニ・スプラッタの帝王」と言われる
ルチオ・フルチの超残酷ゾンビ映画。

- 呪われた街 ダンウィッチ -  ダ、ダーン!!

「永遠を乞う者は生死を超越すべし。
その狭間は、ここダンウィッチに解き放たれん」

そう墓碑に記された墓場の片隅で、
一人の神父が首を吊った。
聖職者自らが「自殺」という冒涜行為を
犯したことにより、ダンウィッチになんと
「地獄の門」が開いてしまった!

死んだはずの者がこの世を彷徨い歩き、
死者に殺された者もまた起き上がる。
その様子を「霊視」したメアリーは、
あまりの恐怖に一度はショック死してしまうがイメージ 3
埋葬中に息を吹き返し、墓場に居合わせた
三流新聞記者のピーターに助け出される。

「大変なのよ!万聖節までに地獄の門を閉じな
ければ、この世は死者に支配されてしまう!」

取るものも取り敢えず。
殉教の使者と化したメアリーはピーターと共に
ダンウィッチへと向かうのであったが…

「ダンウィッチ」とは言うまでもなく、
H・P・ラブクラフトの創作による架空の地名。
序盤に展開する「早すぎた埋葬」の件や
屋敷の地下に隠された棺桶などは、
明らかにポーの諸作から着想を得たもの。
ぼんやりと霧の立ち籠める街並み。
重々しい、ピアノの重低音。
いつになく、格調の高いゴシックホラーを
狙ったかのような出だしなんである。

思えば。出世作となった前年の『サンゲリア』は
原題"ZOMBIE2"が示す通りにイメージ 4なんだかんだで
ロメロありきな模倣品であったが、さすがに
人並み以上のキャリアを誇るフルチ先生。
ここは一発、
オレのカラーをキチンと打ち出しておきたいのだ!
そんな思惑が生じてもおかしくはない。

ただ、なんだろか。
そんなゴシック風味が作中にキチンと作用して
いたかと言えば、決してそんなことはなく。
やっぱり人間、慣れないことはするもんじゃない。
大して意味もないのに勿体ぶった演出は
いかにもワザとらしく、どちらかといえば
「面白い」方に作用をしてしまっているし、
お話の方も完全に破綻。
厳かに配しておいた伏線の数々も
最終的には置き忘れてしまう始末。
だいたい「イノックの本」って、なんだったんだ?

結局、いつの間にやらいつもの通り。

「はらわたげろげろ」

「脳みそワシづかみ」

「蛆虫ブリザード」

「コメカミドリルぶち抜き」イメージ 5

「ミミズ顔面塗りたくり」

おっぷす もうおなかいっぱいです エロエロエー

聞けばフルチ先生はその晩年に
「結局、本意の作品は一本も作れなかった。」
などと、なんとも泣きたくなるような言葉を
漏らしていたんだとか。
「本意の作品」とはどんなものだったのか、
今となっては知り得ようもないのだけど。

ただこの映画史上稀に見るほどの
大残酷&超下品の乱れ撃ちは、
「どうせオレはこんなのしか作れないんだ!」
とでも言うような
フルチ先生の壮絶なヤサグレパワーの
賜物じゃないかと思うのだ。

映画『アポストル 復讐の掟』~カルトの島に花が咲く

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原題 APOSTLEイメージ 1
製作年度 2018年
製作国 イギリス、アメリカ
製作会社 XYZフィルムズ
    ワン・モア・ワン・プロダクションズ
    セヴン・スクリーン
配信開始 2018年10月12日
国内配給 ネットフリックス
上映時間 130分

監督、脚本、編集 ギャレス・エヴァンズ
製作総指揮 ネイト・ボロティン
    ニック・スパイサー
製作 エド・タルファン
    アラム・テルツァキアン他
撮影 マット・フラナリー
音楽 アリア・プラヨギ
    ファジャル・ユスケマル
美術 トム・ピアース
配役 ルイーズ・クロス
衣装 ジェーン・スパイサー
出演
ダン・スティーヴンス:トーマス
ルーシー・ボイントン:アンドレア
マイケル・シーン:マルコム
マーク・ルイス・ジョーンズ:クイン
ポール・ヒギンズ:フランク
ビル・ミルナー:ジェレミーイメージ 2
クリスティーヌ・フロセス:フィオン
シャロン・モーガン:女神

鑑賞 2018年10月16日
ネット配信(Netflix) 字幕
★★★☆☆

『ザ・レイド』のギャレス・エヴァンズ
待望の新作はネトフリコンテンツの
宗教スリラー。

20世紀初頭。イメージ 3
カルト教団に拉致された良家の子女ジェニファー
を救い出すため、兄のトーマスはある洋上の
孤島へと潜入する。
そこではかつて英国王に反旗を翻した
3人の反逆者達が「預言者」を名乗り、
理想郷的なコミュニティを形成していた。
異様で厳しい規律の下で信者を装いながら、
ジェニファーの行方を追うトーマス。
やがて彼はそこで世にも恐ろしい存在を
目の当たりにすることになる-

『V/H/Sネクストレベル』でもカルト教団の
異様な姿を描いていたエヴァンズ監督。イメージ 4
血とタブーまみれの変態アブノーマル絵巻は
共作をしたモー・ブラザースの嗜好によるもの
かと思っていたが、どうやらそうでもなかった
ようで。
やはり『ザ・レイド』のドS激痛テイストが随所
に活かされたバイオレンスホラーでありました。
出身がウェールズという異端の地であり、
またイギリスを離れインドネシアという別天地に
拠点を置くエヴァンズ監督自身の立ち位置からも、
『ウィッカーマン』のようなアウトサイダー的
世界観もまた彼の特徴的な作風と言えるのるかもイメージ 5
しれない。

出だしこそ閉鎖的なカルトのコミュニティを
舞台にした謎解きスリラーのようだが、
あれよあれよと猥雑で陰鬱でエゲツないこと
この上ない阿鼻叫喚地獄の様相を呈して来る。
シラット・アクションこそ勿論ないが、
(それでも単なる揉み合いをえらく気合が入った
アクションシーンに仕上げてしまうあたりは
隠し切れないコダワリと言ったところか)
みんな大好きの切株や思わず身悶えしそうなイメージ 6
激痛描写も相変わらず盛り沢山。
ネトフリオリジナルでは随一のグロさ加減と
言って差し支えない。
ただなんだろなあ。背徳の聖職者に
びゅうびゅうと砂埃が舞い上がる街並み、
異世界へと繋がる地下水路、脳天ドリドリと
そこかしこに「フルチ愛」を感じてしまうのは
気のせいだろうか。

主演ダン・スティーヴンスはいつものイケメン
から打って変わって、すさまじく気合の入った
怪演を披露。ヒロインのルーシー・ボイントン
もまさに今が旬と言った感の美しさ。
インチキ指導者3人衆のクセあり過ぎな存在感イメージ 7
も抜群。
130分超と尺が幾分長めで途中ダレる部分も
なくはないのだが、達者な演者達のお陰で
かなり見応えのある一本に仕上がった。

エヴァンズ監督、この後はDCユニバースで
『デスストローク』を撮ることになった模様。
大コケに終わった『ジャスティス・リーグ』
から目下巻き返しに必死なDC陣営。
ジェームズ・ワン、ジェームズ・ガンに続いて
ホラー界の気鋭がアメコミ界隈に身を投じてイメージ 8
行くのにはいくら世の流れとは言え、
「ギャレスよ、お前もか!」と言いたくなる。



『カランバ』ですか

映画『2001年宇宙の旅』~ツァラトゥストラはかくかくしかじか

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原題 2001 : A SPACE ODYSSEYイメージ 1
製作年度 1968年
製作国 イギリス、アメリカ
製作会社 MGM提供
    スタンリー・キューブリック・プロダクション
製作費 $12,000,000
日本公開 1968年4月11日
国内配給 CIC
上映時間 164分

監督、脚本、製作 スタンリー・キューブリック 
原作、脚本 アーサー・C・クラーク
撮影 ジェフリー・アンズワース
    ジョン・オルコット
編集 レイ・ラヴジョイ
美術 アーネスト・アーチャー
    ハリー・ラング
    トニー・マスターズ
SFX ダグラス・トランブル
    ウォリー・ビーバーズ
    コン・ペダースン他
衣装 ハーディ・エイミーズ
出演
キア・デュリア:ボウマン船長
ゲイリー・ロックウッド:プール
ウィリアム・シルヴェスター:フロイド博士
ダグラス・レイン:HAL9000(声)
ダニエル・リクター:月を見る者(猿)イメージ 2

鑑賞 2018年10月22日
仙台東宝シネマズ IMAX版 字幕
★★★★★

「あの」名作SFがデジタルリマスターを
施されてのIMAX上映。しかも2週間限定。
「これは観に行かなきゃ!」と
鼻息が荒くなるほどでもないのだけど、
これを逃したら死ぬまで観ることはないだろう
と思い、平日のレイトで観に行った。

実は。私はこれを一度見ている。
それはそれはむかしむかしの中学生の頃だ。
『SW』も『エイリアン』も『スーパーマン』も
一緒くたに「SF」と思っていた当時の私は、
当然の如くにこの「金字塔」に行き着いた。
最寄りの名画座で再上映されるとの報に
私は「観に行かなきゃ!」と
それこそ鼻息を荒くして観に行ったのだけど、
お察しの通りに全く理解の及ばぬ代物で。
「SF」と言っているのに明らかにキグルミの
猿を延々見せられる序盤にド肝を抜かれ、
撃ち合いもチャンバラもモンスターもない
のっぺりとした展開に幾度となく寝落ちをこき、
「シュール」という当時覚えたての言葉がイメージ 3
ぴったりのクライマックスに呆然自失。
「なんだかわかんないけど、すごい!」
そう言う友人に私もとりあえずは頷いたが、
まるで手も足も出なかった「金字塔」に圧倒的
な敷居の高さを感じながら劇場を後にした。

あれから30数年。
それなりに自分も歳を取った。
それなりに映画の観方も心得た。
昔はさっぱり分からなかった小難しい映画も、
それなりに楽しめるほどには大人になった。
今の自分なら、「SF映画の金字塔」を
それなりに味わうことができるんでは。
そんなキモチもあったかもしれない。

けど。
やっぱ分かんねーよ(笑)
ちんぷんかんぷん。
途中まではなんとなく進化のお話なのかな?イメージ 4
…程度には付いて行けたけど、
木星が見えてからは「ハテ…ココハドコデスカ?」状態。
齢52歳にしてまたもや玉砕。
ううう、悔しいなあ。

でも。分かる分かんないは別として、
映像は文句なしに素晴らしかったなあ。
そういう意味では劇場に足を運んでおいて
本当に良かった。
やはりデジタルリマスターの恩恵故か、
そのビジュアルインパクトは初見時とは
比べ物にならないほどの鮮烈さで、これが
50年もむかし―CGなんか存在しなかった
時代に作られたものとは到底思えない。
と言うか否、今現在のCG絵巻でこれほどに
斬新でリアルな宇宙を描けている作品があるか?
と言いたい。

キューブリックと一緒に脚本を書いた
アーサー・C・クラークは、
「一度や二度の鑑賞で理解されてしまったら、
我々のやろうとしていたことは失敗したこと
になる」と言っていたそうな。
そう簡単に辿り着く真理ではないということか。
まだまだ自分も青二才。
宇宙とか。神とか。生命とか。
もうちょっと真面目に考えを巡らせてみて、
そろそろわしも死ぬのかなあと感じた頃に
もう一度この映画を手に取ってみようかと思う。


映画『ルイの9番目の人生』~海の魚ぜんぶよりも愛してる

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原題 THE 9TH LIFE OF LOUIS DRAXイメージ 1
製作年度 2016年
製作国 イギリス、カナダ、アメリカ
製作会社 ブライトライト・ピクチャーズ
    ブランク・テープ
    ファイア・アックス・ピクチャーズ
    ミラマックス
日本公開 2018年1月20日
国内配給 松竹
上映時間 108分

監督、製作 アレクサンドル・アジャ
脚本、製作 マックス・ミンゲラ
原作 リズ・ジェンセン
製作総指揮 ザンヌ・ディヴァイン
    ロザンヌ・コーレンバーグ
製作 ティモシー・ブリックネル
    ショーン・ウィリアムスン他
撮影 マキシム・アレクサンドル
音楽 パトリック・ワトソン
編集 バクスター
美術 レイチェル・オトゥール
配役 コリーン・ボルトン
    モリーン・ウェブ
衣装 カーラ・ヘトランド
出演
エイデン・ロングワース:ルイイメージ 2
サラ・ガドン:ナタリー
ジェイミー・ドーナン:パスカル
アーロン・ポール:ピーター
モリー・パーカー:ダルトン刑事
オリヴァー・プラット:ペレーズ先生
バーバラ・ハーシー:ヴァイオレット

鑑賞 2018年10月27日
DVD 発売元(松竹) 字幕
★★★★☆

アレクサンドル・アジャと言えば
'04年の『ハイテンション』で
頭のてっぺんから足の爪先まで真っ赤っか!な
フレンチ鬼畜のムーブメントを巻き起こし、
その勢いでアメリカに渡っては
『ヒルズ・ハブ・アイズ』、『マニアック』、
『ピラニア3D』と往年のB級ホラーを
次々と今風の鬼畜ホラーにアップデートした
リメイク群で新世紀ホラーの急先鋒となった男。
しかもムダにイケメン。
そんなアジャ様も『ピラニア3D』で
燃え尽きた感があったのか、「もう血まみれ
の映画は作らない」と脱スプラッタ宣言。
続く『ホーンズ/容疑者と告白の角』では
大分ムサくなったハリポタを主演に招き、
「ダークファンタジーミステリー」とでもイメージ 3
言うべき新機軸を打ち出して来た。

オレってホラーだけの人間じゃないからさ。

そう言うことか。
『死霊館』の看板をすっかり若手に任せ、
自分は『ワイスピ』やらアメコミやら
メインストリームのブロックバスターに
ウツツを抜かすジェームズ・ワンにも
同じような空気を感じる。
全く、ホラーをナメるなと言いたい。
イーライ・ロスもなにを血迷ったのか
ディズニー映画みたいなことやってるし。

さてそんなアジャ様の新作は『ホーンズ』に
続いてベストセラー小説の映画化。
なんでも『イングリッシュ・ペイシェント』の
アンソニー・ミンゲラが映画化を進めていたが、
ミンゲラの急逝で企画が頓挫していたところ
「ぜひオレが!」とアジャ様が手を上げたもの
らしい。

「ぼく」―ルイ・ドラックスは事故のプロ。
手元の狂った執刀医に産後間もなく殺されかけ、
ベビーベッドに寝ていてもバカでかいメリーが
落下して来て全身複雑骨折。
食当たりは日常茶飯事。イメージ 4
スズメバチに刺され、ドブネズミに噛まれ、
サルモネラ、腸炎ビブリオ、ボツリヌス。
あらゆる病原体を経験済み。
生まれてから毎年1回は、死ぬような目に
遭ってきた。
ママは言う。猫には9つの命があると言うけど、
あなたが猫ならその命はあと1つ。
だから、もう使わないで。

今日はぼくの9歳の誕生日。
ママと、パパと、海のそばの小高い丘の上へ
ピクニックに行った。
人生で最高に幸せな日…と思っていたのに、
僕は足を滑らせて崖の上から海へ真っ逆さま。
遂に一巻の終わりと思いきや、ぼくはまたもや
一命を取り留めた。ただし、昏睡状態のまま。
なにもできない。なにも言えない。
パパと遊ぶことも、ママに甘えることも出来ない。
大好きなコウモリの本を読んだり、お気に入りの
ハムスターをイジメることも出来ない。
真っ白で憂鬱な病院のベッドの上で、
ぼくの9番目の人生が始まったのだ。

パッと見ティム・バートンみたいな、
ちょっぴりダークなテイストの
ゆるゆるファンタジーじゃないかと案じながら
手に取ったのだけど。イメージ 5
いや…ちょっとコレ((((;゚Д゚))))
思いの他にドス黒くてシャレにならない
鬼畜模様にドンビキ至極。
もちろん真っ赤っかのスプラッタなんてのはない
けども、あどけない子供の夢の裏に隠された
「真実」はまさに今私たちが暮らす世界の闇。
それはデルトロの言うファンタジーに近いものが
あるし、スパニッシュホラーで繰り返し描かれる
子供達の姿にも相通じる。
なるほどアジャ様が下世話な血しぶきを捨てて
やりたかったのはコレかと心得る。
なにげに『ハイテンション』でも同じことを
やっていたような気もするが。

とは言えアレクサンドル・アジャは
元々血しぶきだけの作り手では決してない。
確かに実質デビューの『ハイテンション』から
極端に血塗れな映画ばかりを手掛けてきたが、
よく観てみれば血や臓物を抜いてもしっかり
楽しめる王道のエンタメ映画であることが
分かるはず。
そこにはフランス有数の映画プロデューサーの
家庭に生まれたアジャの案外お堅いシネフィル
ぶりが見てとれる。
そんなアジャが本作で目指したのは
ヒッチコックのスリラー劇だったとか。
なるほど俯瞰から見下ろす画面構成や、
観客が目にしていたはずのところに真相を隠すイメージ 6
あたりはまさにヒッチ流。
クローネンバーグ父子の作品でも鮮烈な印象を
残したサラ・ガドンのクールなブロンドビュー
ティもまた然り。
そしてやはり主演のルイに扮したエイデン・
ロングワース君の圧倒的な存在感。
可愛いは可愛いのだけど、妙に捻くれてて、
憎たらしくて、それでいてぽっかりとなにかが
抜け落ちたように虚ろな佇まいが空恐ろしくて。
ジェイコブ・トレンブレイのダークサイド版
と言った感じ。心なし『ブリキの太鼓』の
オスカルくんに似てる気もする。

巷ではあまり評価が良くないけども、
なかなかに余韻の残る一本でありました。
何度か観返しては解釈を巡らせて愉しむ、
そんな類いの映画ではないかと。
アジャ様の次なる新作"CRAWL"はなんと
「ワニ」ホラーになるとか。
暴走したワニが人間様をバリバリ喰い荒らすとか、
まさかそんな映画にはならんだろうとは思うけど。

映画『シャドー・オブ・ナイト』~不死身のインドネシア人たち

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原題 THE NIGHT COMES FOR USイメージ 1
製作年度 2018年
製作国 インドネシア、アメリカ
製作会社 XYZ・フィルムズ
    スクリーンプレイ・インフィニット
配信開始 2018年10月19日
国内配給 ネットフリックス
上映時間 121分

監督、脚本、製作 ティモ・ジャーヤント
製作総指揮 ネイト・ボロティン
    アラム・テルツァキアン
製作 キモ・スタンボエル
    トッド・ブラウン
    ニック・スパイサー他
撮影 グンナル・ニンプーノ
音楽 ファジャル・ユスケマル
    アリア・プラヨギ
編集 アリフィン・キュウンク
VFX グレッグ・ドーラ
アクション指導 イコ・ウワイス
スタント指導 ヴェリ・トリ・ユリスマン

出演
ジョー・タスリム:イト
イコ・ウワイス:アリアン
ジュリー・エステル:オペレーター
アシャ・クニェリ・ベルムデス:レイナイメージ 2
アビマナ・アルヤスティア:ファティ
サルヴィタ・デコルテ:シンタ
ザック・リー:ボビー
ハンナ・アル・ラシード:エレナ
ディアン・サストロワルドヨ:アルマ
シャリーファ・ダーニッシュ:スナイパー
サニー・パン:チェン・ウー

鑑賞 2018年11月1日
ネット配信(Netflix) 字幕
★★★★☆

ギャレス・エヴァンズの『アポストル』に続き、
またまたインドネシア勢の新作が
ネットフリックスからリリース。
(アポストルは一応イギリス資本だったけど)
もしやこないだ流れた『ザ・レイド3』も
ネトフリで取り込む腹積もりだったりして。

監督は『マカブル 永遠の血族』、イメージ 3
『キラーズ』のティモ・ジャーヤント。
前作までは相方キモ・スタンボエルとの
「モー・ブラザース」名義で
鬼畜ゴアスリラー寄りの作品を手掛けてきたが、
本作ではソロ名義。(もっともスタンボエルも
製作に加わっているのでコンビ解消というわけ
ではないらしい)
恐らくはイコ・ウワイスを主演に迎えた前作
『ヘッドショット』で相当の手応えを感じたのか、
インドネシア特産「鬼畜アクション」の担い手
として方向性をシフトしてきたものと思われ。
ただだからと言ってギャレス・エヴァンズの
2番手というわけでは決してなく、
この人本来の色をより強く打ち出した
アクション映画になっている。

お話としては簡単に言えば「抜け忍」もの。
中国マフィアに雇われて幾多の命を奪ってきた
傭兵が、とある漁村で一人の少女を庇い組織を
飛び出してしまう。
「抜け忍許すまじ」と組織は次々と手練れの
追手を送り込んでくるが、その中にはかつて
同じ夢を語り合った「仲間」がいた-
と書くと分かる人は分かると思うが、
彼らの前作『ヘッドショット』と基本ラインは
ほぼ同じである。

『ザ・レイド』は観てる方も「いてーよ!」とイメージ 4
思わず声が出てしまうような激痛アクションの
連続で世界中をドン引きさせたわけだが、
それはブルース・リーのヌンチャクで
しこたまブチのめされて鼻血ブーとか、
ジャッキー・チェンの机の角に脛をぶつけて
イテテとか、古来より格闘技アクションに
介在した「痛み」のエクストリームな発展形
であった。
一方ジャーヤントのそれは完全にスプラッタ。
喉元ザックリ!からの血しぶきぴゅーぴゅー。
ド頭カチ割り脳みそぐちゃぐちゃ。
どてっ腹に開いた穴からはらわたダダ漏れ。
こうなると痛みを感じるよりはヘンな笑いが
こみ上げてくる。
ただやはりアクションそのものは『ザ・レイド』
と比べてしまえば数段も劣る。
1対1のタイマン勝負はそれなりに見せるが、
多人数入り乱れての大乱闘になると
明らかに「待ち」のヤツがいたりタイミングが
ズレてワザと当たりに行ってしまったりと、
今ひとつコナレていない演出のアラが目立つ。
まずこれはこれで『エクスタミネーター』や
『コマンドー』に連なるB級外道アクションの
趣で見れば良いのかと。イメージ 5

今や世界的アクションスターになってしまった
イコ・ウワイス。
今回は所謂「客寄せパンダ」かと思われたが、
そんな出し渋りは全くなく、ほぼ出ずっぱりの
準主役級。しかも初のやられ役。
主役(『ザ・レイド』で瞬殺の隊長役だった人)
がいまいち強そうに見えず、まるで勝てる気が
しないのだけど、そのラストバトルは壮絶の一言。
『マカブル』同様、床一面血でヌルヌルの中、
2人の男がのたうつクライマックスに一瞬
アクション映画であることを忘れてしまう。
にしても。
カッターナイフで頸動脈を切られようが、
鉄パイプで頭ゴーン!されて陥没しようが
マシンガンで全身ハチの巣にされようが、
何度も何度も立ち上がって反撃を試みる
この男たちは「しぶとい」という次元を超えて
もはや人間ではない。
かのマイケル・マイヤーズもインドネシアの地
で生き残ることは非常に困難であると思われ。


特筆すべきは、『マカブル』からモー組の
ミューズであったジュリー・エステルの
素晴らしさ。
当初はオーソドックスな美人女優に過ぎなか
ったが、『ザ・レイド2』のハンマーガールでイメージ 6
アクションに開眼。以来相当の修練を積んだ
のか、『ヘッドショット』を経てその武打星ぶりに
一層磨きが掛かってきた。
本作では主役をも軽くノしてしまう、最強の
「謎の女」という役どころ。
ピチピチの黒レザーというイデタチに身を包み、
『コマンドー』ばりのバリバリフル装備で
ザコ共を大虐殺の果てに、女殺し屋2人組を
相手にしての3ウェイバトルは後の主役vs.
イコがぶっちゃけ物足りなくなってしまう
ほどの大立ち回り。
シビレたなあ♪
次は是非この人メインで一本作って欲しい!

映画『黒い箱のアリス』~幸せの青い寸足らずワンピース

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原題 BLACK HOLLOW CAGEイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 スペイン
製作会社 アサラム・フィルムズ
製作費 €1,500,000
日本公開 2018年1月15日
国内配給 クロックワークス
上映時間 105分

監督、脚本、製作、配役
    サドラック・ゴンザレス=ペレジョン
製作総指揮 ディエゴ・ロドリゲス
製作 ヘレナ・アルタバス
撮影 イヴァン・ロメロ
音楽 セルヒオ・ラミス
編集 マルタ・フェルナンデス
美術 フレン・ビギュリ
衣装 マルタ・パロマレス
出演
ロウィナ・マクドネル:アリス
ジュリアン・ニコルソン:アダム
ルーシー・ティレット:ベアトリス(声)
エデ・リサンデル:エリカ
マルク・ピゲネル:ポール
ウィル・ハドソン:デヴィッド
ダニエル・M・ジェイコブズ:お医者さんイメージ 2

鑑賞 2018年11月5日
DVD 発売元(TCエンタテインメント)字幕
★★★☆☆

静かな森の中の一軒家に、
アリスという女の子が暮らしておりました。
一緒に住むのはお父さんと、犬が一匹。
お母さんはいません。
どういうわけかアリスは
飼っている犬を「ママ」と呼ぶのです。
アリスは右手がありません。
町からお医者さんがやって来て、
アリスに機械仕掛けの右手を付けて行きます。
「はじめは慣れないだろうが、辛抱強く
頑張りなさい」
お医者さんはそう言うけども、全然うまく
動かせません。
悲しくなったアリスは森に飛び出します。
大っ嫌い。この腕も。パパも。なにもかも。
森の奥深くへずんずん駆けて行くと、
アリスはそこに黒い大きな箱を見つけます。
箱の中に手を入れてみると、1枚の紙切れ
が出て来ました。

「あの人たちを信じちゃだめ」イメージ 3

家に戻ると、そこには知らない人がいました。
傷だらけになった少女エリカと、
口のきけないその弟ポール。
可哀そうな二人をパパはしばらく家に置いて
あげることにしました。
そこでアリスは紙に書いてあった言葉を
思い出します。
「あの人たちを、信じちゃだめ。」

うう。これはレビューが難しいなあ。
ちょっとでも突っこんだ内容を書こうとすると
即ネタバレになってしまう。
とりあえずこれから観ようという方は、
フィルマークスやアマゾンのレビュー欄は
目にされませんように。

とりあえずはスペイン映画ということで、
ちょっと風変わりなダークファンタジーと思い
きや、いきなりバイオレンスなオープニングに
ド肝を抜かれる。
かと言ってそこから『スペイン一家監禁事件』の
ような鬼畜実録路線を突っ走るわけではなく、
ロボットの手を付けた少女と人工音声で会話を
するワンコ。前にもこんな雰囲気のSFファンタ
ジーがあったなあ。確か『エヴァ』だったか。イメージ 4
セリフ少なめ。音楽もほとんどない。
時折寝落ちコキそうになるのだけど、
舞台劇のようなセットデザインや衣装の鮮烈な
色遣い、そして演者達のミステリアスな存在感
は昨年観た『あなたに触らせて』に相通じるも
のがある。
非常に観念的で、そして教条的でもあり。
大人の世界に刃物を向ける「恐るべき子供達」は
『ザ・チャイルド』をはじめスパニッシュホラー
で繰り返し描かれたもの。
ストーリー的には「あの人」の映画にすごく似て
いると思うのだけど、それを言うとネタバレに
なってしまうので、言えない。
こうして見ると非常に「スペイン映画」らしさ
に満ちた作品なのだけど、そんな中でもとりわけ
個性的な一本と言っていい。

なんかもうここまで書いて来て
さっぱり伝えられる気がしないのだけど、
パケを見てビビッと来たなら
とりあえず観てみろとしか言いようがない。
まず色とか小道具とかに込められた隠喩を
あれこれ探って見るのが好きな向きには
間違いなくオススメ。

シリーズドラマ『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』~"HOPE"とよく似たあの言葉

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原題 THE HAUNTHING OF HILL HOUSEイメージ 1
製作年度 2018年
製作国 アメリカ
製作会社 アンブリン・テレヴィジョン
    パラマウント・テレヴィジョン
配信開始 2018年10月12日
国内配給 ネットフリックス
全10話
①"Stephen Sees a Ghost"(60分)
②"Open Casket"(51分)
③"Touch"(53分)
④"The Twin Thing"(52分)
⑤"The Bent-neck Lady"(70分)
⑥"Two Storms"(56分)
⑦"Eulogy"(60分)
⑧"Witness Marks"(42分)
⑨"Screaming Meemies"(57分)
⑩"Silence Lay Steadily"(71分)

監督、創作 マイク・フラナガン
脚本 マイク・フラナガン(①②⑥⑩)
    リズ・ファング(③)
    スコット・コーサ―(④)
    メレディス・エイヴリル(⑤⑨)
    ジェフ・ハワード(⑥⑧)
    シャリーズ・カルトロ・スミス(⑦)
    レベッカ・クリンゲル(⑧)
原作 シャーリイ・ジャクスン「山荘奇談」イメージ 2
製作総指揮 ジャスティン・ファルヴェイ
    ダリル・フランク
    トレヴァー・メイシー他
製作 ダン・カプロウ
製作補 ブライアン・シャーウィン
撮影 マイケル・フィモナリ
音楽 ザ・ニュートン・ブラザース
編集 ジム・フライン
    ブライアン・ジェレマイア・スミス他
美術 パトリシオ・M・ファレル
配役 アン・マッカーシーイメージ 8
    タラ・フェルドスタイン他
衣装 リン・ファルコナー
出演
マイケル・ユイスマン:スティーヴン
エリザベス・リーサー:シャーリー
ケイト・シーゲル:セオドラ
オリヴァー・ジャクソン=コーエン:ルーク
ヴィクトリア・パドレッティ:ネル
ティモシー・ハットン:ヒュー
パクストン・シングルトン:スティーヴン(過去)
ルル・ウィルソン:シャーリー(過去)
マッケンナ・グレイス:セオドラ(過去)
ジュリアン・ヒラード:ルーク(過去)
ヴァイオレット・マクグロウ:ネル(過去)
ヘンリー・トーマス:ヒュー(過去)
カーラ・グギーノ:オリヴィア
アンソニー・ルイヴィヴァー:ケヴィン
サマンサ・スローヤン:リー
アナベス・ギッシュ:ダドリー夫人
ロバート・ロングストリート:ダドリー氏
オリーヴ・E・エイバークロムビー:アビゲイル
レヴィ・トラン:トリッシュ

鑑賞 2018年10月19日-11月8日
ネット配信(ネットフリックス) 字幕
★★★★★イメージ 3

シリーズドラマって普段なかなか観ないし
観てもここでレビューはしないのだけど、
ちょっとコレは事件じゃないかと思うので。
事件じゃなければ、奇跡と言ってもいい。

かのスティーヴン・キングが自らの原点と語る
シャーリイ・ジャクスンの「山荘綺談」は
これまでに2度映画化されたが、
その最初の一本『たたり』('63)はイメージ 4
ホラー映画史でも一、二に数えられる
ゴシックホラーの名作。
かく言う自分も必須科目への義務感から
つい最近手に取ってみたが、
あまりにもスノッブな「ゴシック」仕様に
なにか食い足りないものを感じながら
DVDを返却した覚えがある。
もう一本の『ホーンティング』('99)は
言うに及ばず。
所詮は今の目には古臭いだけの「原典」に
過ぎないのかなと、そんな風に思っていたの
だけど。

6年前、無遠慮な鬼畜拷問映画と
身も蓋もない大ボラファウンドフッテージが
シーンを席巻していた頃にリリースされたのが
『人喰いトンネル』という作品だった。
"ABSENTIA"(不在)と題するこの映画は
トンチンカンな邦題とは裏腹に露骨な描写や
コケ脅しに一切頼ることなしに、心底ゾッとさ
せられる一本だった。
そしてその恐怖が全くの絵空事ではなしに、
日常の裏に潜む非日常というまさにキングが
描くところの「モダンホラー」であった。
こんな目の覚めるような逸品を撮ったのが
マイク・フラナガンという当時は全く無名の
人だったわけで。
その後キャリア当初から温めていた企画
『オキュラス/怨霊鏡』がスマッシュヒット。
フラナガンはジェームズ・ワンに続く新世紀イメージ 5
ホラーの担い手として一躍名乗りを上げた。
『ソムニア/悪夢の少年』の子供を亡くした
親の嘆き苦しむ姿が『ペット・セメタリー』に
被ったり、『サイレンス』もどこかバックマン
作品を思わせる神経質なサスペンススリラーで
あったり、キングのテイストが濃厚な作り手と
いう感はあったが、昨年『ジェラルドのゲーム』
で遂にキング映画に初挑戦。
これまでキングの映画化はほとんど観て来たが、イメージ 6
これほど見事にキング独特の文体を映像に置き
換えた作品はなかったと言っていい。
そこからキング御大直々のご指名で
『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』
に抜擢されたのはご周知の通り。

そんなモダンホラーの申し子が「たたり」を
撮るというのだからどんなもんかと思いきや。
『たたり』の、増してや『ホーンティング』の
リメイクでは全くなく、飽くまでも「山荘奇談」を
ベースにしたフラナガン映画の上半期総棚卸し
と言った感。

「丘の上の家」にやって来たクレイン一家。
このオンボロ屋敷を綺麗に修繕して、売り払う。
それまでのひと夏の間だけ、家族でゆっくり
過ごすのも悪くない。
ところが程なくして、ある恐ろしい事件が起き
母オリヴィアが謎の死を遂げてしまう。

あれから20年後。家族は離れ離れとなり、
それぞれ別の人生を送っていた。
それぞれに、断ち難い苦しみを引きずりながら。
長男スティーヴンは作家となり、丘の上の家の
出来事を基にしたホラー小説で成功をしていた。
長女シャーリーは結婚をし、夫と共に葬儀場を
経営。二人の子供にも恵まれる。イメージ 7
次女セオドラは児童カウンセラーに従事しつつ
心理学の資格を取得すべく勉学に励んでいる。
次男のルークは薬物に溺れ、一家の鼻つまみ者
であったが更生すべく施設に入所中。
そして独りで隠者のように暮らしていた父親
ヒューから、兄弟達に悲しい知らせが届く。
末娘のネルが、丘の上で自殺を遂げたと。
深い悲しみの中、再び一堂に会することと
なったクレイン一家。

ネルはなぜ死んだのか?イメージ 9
あの時。あの家で一体なにが起こったのか?

目の前に起きるパラノーマルをフィクション上の
出来事とまかり通らせる前に、
畏れ。許し。願い。現実逃避。
薬物や酒、心の病、強迫観念。
「幽霊なんかいるわけないでしょ、バカだねえ」
人間の頭が生み出した幻影や錯覚の類いと
提起をするのは『人喰いトンネル』の時から
フラナガンが幽霊を描く一貫したスタンス。
過去と現在に起きた出来事を織り交ぜながら
徐々に真実が露わになって行く手法は
『オキュラス』や『ジェラルドのゲーム』でも
用いられていたもの。
そしてそれはキング小説の最も基本的な文体、
構成でもある。

キャストがまたフラナガンズ・オールスターと
言った感じで。『サイレンス』で結ばれた
奥様のケイト・シーゲルはじめ、
ヘンリー・トーマスは『ウィジャ・ビギニング』
からのレギュラーキャスト。
『ウィジャ・ビギニング』で親子役だった
エリザベス・リーサーとルル・ウィルソンは
今回ビフォーアフターという役どころ。
(すごく似てるのがなるほどと言った感じ)
カーラ・グギーノは『ジェラルドのゲーム』にイメージ 10
続いてものすごい美魔女ぶりを披露。
ザック・スナイダーが引きこもってしまったが、
また新たによき演出者が現れたことはファンと
しても嬉しい限り。
そして屋敷に現れる謎の女ポピー・ヒルに扮する
キャスリーン・パーカーは『人喰いトンネル』の
主演からずっとフラナガン映画に出ている人。
スタッフもカメラのマイケル・フィモナリ、
音楽のニュートン・ブラザース、
キャスティングのアン・マッカーシーなど
ほぼ「フラナガン組」と言った陣容。イメージ 11
なるほど「ファミリー」を大事にする人柄が
作品にも投影されているものと思われ。

そう。この作品はガチで怖いホラーであると共に
素晴らしいファミリードラマでもある。
幽霊なんているわけない。
インチキだ、気のせいだ、と否定をするのは簡単。
でも、果たしてそれが正しい態度と言えるのか。
なぜ幽霊を見たと感じたのか?
なにを恐れているのか?求めているのか?イメージ 12
「見た」と訴えることによって、無意識ながらに
気持ちの落ち着けどころを探っていたのでは
あるまいか。
本当は「一緒にいてほしい。」
ただそれだけのことかも知れないのに。
信じること。過去になにがあろうと、
その幻影を振り切って、共に手を取って
未来に向かって歩き出すこと。
それが家族なのだとこのドラマは言っている。

そう考えるとキングが『霧』のラストに書いてイメージ 13
いた言葉はこれと全く同義なのだが、
映画化の『ミスト』は完全に反対の方向に
舵を切って終わってしまった。
ゼロ年代という辛口が好まれた時代の空気と
言えばそこまでなのだけど、これだけは
どうしても認められないし好きになれない。

BRUMHOUSE'S "HALLOWEEN"

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中の人はたぶんチャン・ギョンチョルです
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