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映画『ブレイド2』~メキシコの怪獣ヲタ、ハリウッドへ行く

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原題 BLADE Ⅱイメージ 1
製作年度 2002年
製作国 アメリカ、ドイツ
製作 ニューライン・シネマ提供
    アメン・ラー・フィルムズ
    マーベル・エンタープライズ
    イマジナリー・フォーセズ他
製作費 $54,000,000
国内配給 日本ヘラルド
日本公開 2002年6月15日
上映時間 117分

監督 ギレルモ・デル・トロ
脚本 デヴィッド・S・ゴイヤー
原案 マーヴ・ウォルフマン
   ジーン・コーラン
製作総指揮 スタン・リー
   マイケル・ド・ルーカ
   トビー・エメリッヒ他
製作 ペーター・フランクフルト
   パトリック・J・パーマー
   ウェズリー・スナイプス他
撮影 ガブリエル・ベリスタイン
音楽 マルコ・ベルトラミ
編集 ピーター・アマンドソンイメージ 2
美術 キャロル・スパイアー
配役 ナンシー・フォイ
衣装 ウェンディ・パートリッジ
武術指導 ドニー・イェン
クリーチャー創作 スティーヴ・ジョンソン
出演
ウェズリー・スナイプス:ブレイド
クリス・クリストファーソン:ウィスラー
ロン・パールマン:ラインハルト
レオノア・ヴァリラ:ニッサ
ノーマン・リーダス:スカッド
トーマス・クレッチマン:ダマスキノス
ルーク・ゴス:ノーマック

鑑賞 2018年3月23日
DVD(発売元:ポニーキャニオン)字幕
★★★☆☆

『ミミック』で意気揚々ハリウッドに
乗り込んで行ったデルトロはん。
やはり複雑怪奇なメジャーの水は
なかなか馴染めなかったようで、
「思い通りの映画作りが出来なかった」と
不完全燃焼気味なコメントを残していた。
その後スペインに招かれてのイメージ 3
『デビルズ・バックボーン』がウルサ型の
評論家筋や映画祭等で評価されるも、
デルトロはんはまたハリウッドに戻って来た。
それがこの映画。
ご存知マーベル印のコミック映画化で、
しかもパート2。
いかにもメジャーのだらしない商売臭が漂う
ブロックバスター映画である。

正直デルトロのフィルモグラフィの中でも
最も「らしさ」が希薄な一本と言っていい。
ただだからと言って、メジャーの畑に
嫌々出稼ぎに来ている風では決してなく。
そこかしこに彼ならではのマニアックな
蘊蓄が盛り込まれていたりする。
1作目は当時大流行したアタマ悪い系の
CGアクションホラーであったが、
本作でも基本的なスタンスはほぼ同様。
ウェズリー・スナイプスのクールなドヤ顔を
フィーチャーしたオレ様コスプレ映画である。
が、デルトロはかねてより敬愛していた
メキシコのコミック作家マイク・ミニョーラ
をコンセプトデザイナーに招聘。
ゴシックテイストの効いたダークな世界観
は作品のIQ指数を3割程UPさせた。
因みにこの経緯がミニョーラの代表作イメージ 4
『ヘルボーイ』映画化に繋がる。
と言うか初めからソコ狙いだったと思われ。

モンスター映画を作るためにはと、
特殊メイク職人としてキャリアをスタート
させたデルトロはん。
クリーチャーの病的なほどの作り込みに
ついては既に定評のあったところだけども、
本作においてもたいして作り甲斐のない
ヴァンパイアを脇に追いやってイメージ 5
「リーパー」なる新キャラを投入。
クリーチャー創作は『フライトナイト』や
『ゴーストバスターズ』の名手スティーヴ・
ジョンソン。下顎がバリバリ裂けて
中からエログロな触手が飛び出すあたりは
『プレデター』というか『バイオハザード』
というかなのだけど、『物体X』を彷彿と
させるヌルヌルベトベトの解剖シーンは
そこまでやるか?と思うほどのコダワリ様。
それでいてモンスターの悲哀をさりげなくイメージ 6
描き出すあたりがやはりデルトロらしい。
リーパーが創造主に「なぜ作った?」
問いかける件は紛れもなくフランケンシュ
タインだ。

そしてアクション指導にまだブレイクする
前のドニー・イェンを香港から招聘。
前作もアクションは評判が良かったが、
今回は更にグレードアップ!
…と言っていいのかどうか(笑)
高いところでぴょんぴょん跳ね回って
刃物をギンギンガンガン撃ち合う様子はイメージ 7
どう見ても香港映画。なんとなく違うだろ
という気もするのだけど、これもデルトロ
はんのシュミなんだろうなきっと。

デルトロ映画と言うと
『パンズ・ラビリンス』や
今回の『シェイプ・オブ・ウォーター』の
ような、どこか趣のあるこぢんまりとした
作品が評価されがちであって、
こうしたハリウッドの商業映画はイメージ 8
所謂「実績づくり」のようなもんかと
思っていたのだけど、デルトロにとっては
むしろ逆だったのかもしれない。
映画祭や賞レースで「誉められる」作品で
ステータスを上げてスポンサーを付けて、
自分の趣味を生かせる作品にしっかりと
お金を使う。単に金と欲に塗れたショウビ
ズの都じゃない。
キングコングやフランケンシュタイン、
半魚人ギルマンを生み出してきたハリウッド
こそが、このヒトの目指す檜舞台だったん
でしょう。
今回そのハリウッドで頂点に立ってしまった
デルトロはん。恐らく次は思い通りの環境で
「ずっとやりたかったこと」に全力を注いで
くることかと。

映画『ヘルボーイ』~愛すべきヘソマガリ

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原題 HELLBOYイメージ 1
製作年度 2004年
製作国 アメリカ
製作 レボリューション・スタジオズ
    ローレンス・ゴードン・プロダクションズ
    スターライト・フィルムズ
    ダーク・ホース・エンターテインメント
製作費 $66,000,000
国内配給 UIP
日本公開 2004年10月1日
上映時間 121分

監督、脚本 ギレルモ・デル・トロ
脚本 ピーター・ブリッグス
原作、製作総指揮補 マイク・ミニョーラ
製作総指揮 パトリック・パーマー
製作 ローレンス・ゴードン
    ロイド・レヴィン
    マイク・リチャードソン
撮影 ギレルモ・ナヴァロ
音楽 マルコ・ベルトラミ
編集 ピーター・アマンドソン
美術 スティーヴン・スコット
配役 ジェレミー・ジマーマン
衣装 ウェンディ・パートリッジイメージ 2
メイクアップ監修 リック・ベイカー
出演
ロン・パールマン:ヘルボーイ
ジョン・ハート:ブルーム博士
セルマ・ブレア:リズ
ルパート・エヴァンズ:マイヤーズ
カレル・ローデン:ラスプーチン
ジェフリー・タンバー:マニング
ダグ・ジョーンズ:エイブ
ラディスラフ・ベラン:クロエネン

鑑賞 2018年3月26日
ネット配信(Netflix)字幕
★★★★☆

私はこの映画が好きだ。
と言うか、ヘルボーイというキャラが
すごく好きなのだ。
この映画を観る時は(そして『2』も)
映画を楽しむというよりかは、
なんだか腐れ縁の旧友に会いに行くような、
そんな心持ちになる。

さて。みなさんの近くにも
こういう男がいたりはしないだろうか。イメージ 3
仕事はデキるのだ。すごく。
同僚としては頼りになる奴と言っていい。
が、仕事の相手とか大義名分が気に食わ
ないと全然グズグズ。
そして「えっ?」と思うようなポカを
やらかしたりする。
じれったくなってフォローしようとすると、
「余計なことすんじゃねえ」
きっぱりと手を跳ねのける。
結局一人で怒られてる。バカだねえ。

イカつい顔して、猫と甘いもんが大好きで。
見た目は悪いけど結構なナルシスト。
トイレの鏡の前で小首を傾げるヤツの姿を
何度見かけたことか。
だいたいなんだあのヘアスタイル。
傍目には全然似合ってないんだけども、
本人が気に入ってんだからしょうがない。
一人の女に何年も想いを秘めて。
相手にもそんな気持ちはとうにバレてるのに、
スカスカの見栄を張って気のないフリ。
まったく不器用と言うか、ガキと言うか。
「大丈夫だって、あっちもまんざらじゃない
から」分かってるくせに、今一歩のところでイメージ 4
足を止める。
臆病なのか、それとも自分に酔ってるのか。
このシチュエーションで飲みに行くと、
ヤツはいつになく饒舌になる。

とにかく口が悪いのだ。
どこか引っかかるモノの言い方をする。
まるで言葉ひとつひとつに
自分の名前を刻みつけるみたいに。
ただ、不思議と腹は立たない。
それはヤツが鼻もひっかけないような人間に
そんな口をきかないのを知っているからだ。

デカい図体にコンプレックスいっぱい抱えて、
そして持て余すほどのプライドと
他人には理解できないコダワリに
囚われながら生きる不器用な男。
どういうわけか私の周りにいる男友達は
こういうやつが多い。
かと言って私自身はそれほど面倒くさくは
ないし自分に自信もない。
もしかするとヤツらからすると、
自分は生温い水の中でのんびり暮らす
半魚人みたいに見えてるのかもしれない。
まず、否定はしませんが。

映画『パンズ・ラビリンス』~子供達を責めないで

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原題 EL LABERINTO DEL FAUNOイメージ 1
製作年度 2006年
製作国 スペイン、メキシコ、アメリカ
製作 ワイルド・バンチ
    センテンティア・エンタテインメント
    カフェ・FX他
製作費 €13,500,000
国内配給 カルチュア・パブリッシャーズ
日本公開 2007年10月7日
上映時間 118分

監督、脚本、製作 ギレルモ・デル・トロ 
製作総指揮 ベレン・アティエンツァ
    エレナ・マヌリーケ
製作 アルフォンソ・キュアロン
    ベルタ・ナヴァロ
    フリーダ・トレスビアンコ
    アルヴァロ・アウグスティン
撮影 ギレルモ・ナヴァロ
音楽 ハヴィエル・ナヴァレーテ
編集 ベルナト・ヴィラプラーナ
美術 エウヘニオ・カバイェロ
配役 サラ・ビルバテュア
衣装 ララ・ウエーテ
出演イメージ 2
イヴァナ・バケーロ:オフェリア
セルジ・ロペス:ヴィダル大尉
マリベル・ヴェルデュ:メルセデス
ダグ・ジョーンズ:パン/ペイルマン
アリアドナ・ヒル:カルメン
アレクス・アンギュロ:フェレイロ医師
フェデリコ・ルッピ:王

鑑賞 2018年3月30日
ネット配信(Netflix)字幕
★★★★★

 私は子供が嫌いです。
 子供は幼稚で礼儀知らずで気分屋で
 甘やかすとつけあがり、
 ほったらかすと悪ノリする。
 (中略)
 努力のそぶりも見られない。
 忍耐のカケラもない。
 人生の深みも渋みも何にも持っていない。
 (中略)
 泣けば済むと思ってるところがずるい。
 あの計算高い、物欲しそうな目が嫌だ。
 なにが天真爛漫だ。なにが無邪気だ。イメージ 3
 なにが星目がちなつぶらな瞳だ。
 誰がなんと言おうと私は子供が嫌いだ。
 私は本当に、子供が嫌いだああ!!

伊武雅刀さんがその昔にリリースした
名曲(…と言って良いものかどうか)
「子供達を責めないで」。
作詞は秋元康さんだ。
初めて聴いた時は激しく同意を感じ
大笑いをしたが、その笑いの裏に
「こんなことを真顔で言う大人には
絶対になってくれるなよ」という作り手の
メッセージをしかと感じたもんだった。

『パンズ・ラビリンス』は
今を以てもギレルモ・デル・トロの
最高傑作と言っていい名画だが、
観ると鬱になる映画としても有名である。
それは他でもない、主人公の少女を待ち
受けるあまりに残酷な結末故だ。
1930年代のスペイン。
内戦で荒廃した環境の中、一人の少女が
夢見るファンタジー世界。
それは過酷な暮らしの中で厄介者扱いされ、イメージ 4
希望を見失った非力な子供が「いつの日か」
辿り着く理想の世界に心の拠り所を求めた
儚い逃避行為である。

 迷宮は、人を迷わせるためではなく
 進むべき道を見つけるために作られたのだ
 (ギレルモ・デル・トロ「パンズ・ラビリンス―
 異色のファンタジー映画の舞台裏」より)

少女は迷宮の奥で出会った魔人パンから
試練を与えられる。
それは自分を地底の王国からやって来た
プリンセスと思い込んだ少女が、
王国へと帰るためのミッションだ。
3つの試練の果てに(うち1つでは過ちを
犯してしまったが)、少女は理想の王国へと
帰って行く。
無事ハッピーエンド…と思いたいところだが
観ているこちらの気分は一向に晴れない。
眩いばかりの王国はあくまでも少女の夢想
したファンタジーであって、
現実には少女は無常な死を遂げてしまう。
あんまりじゃないか。
クソ親父が「子供に名前すら教えない」とイメージ 5
その存在を全否定された上におっ死んでも
それでもスッキリなんか全くしない。
少女は向こうの世界に旅立ったんじゃない。
死んだのだ。
少女が試練を経て正しい道を見出したのは
とても尊い話だし、その行いがちょっとだけ
世界を良い方に変えたとしても、わたし達は
この現実を憂いなければいけない。
今は非力で無知だけども、これから私たちの
世界を担って行くべき子供たちが真っ先に
犠牲になり得る世界を「仕方ない」などと
諦めちゃいけない。恥じなければいけない。
子供たちが健やかに成長できる世界のた
めにまず私たち大人が正しい道を見つけ、
子供たちにきっちり示して行かなきゃいけな
いんだと改めて思う。

まず。明日は近所の小学校に
子供と桜を見に行こう。
あの今にも倒れそうな老木に
どうしてあんな見事な花が咲いているのか。
その昔、どこかのお姫様が木の洞に棲む
化物ガエルを退治したからだなんて話し
たら、子供は信じてくれるだろうか。

映画『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』~愛すべきバケモノたち

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原題 HELLBOY Ⅱ: THE GOLDEN ARMYイメージ 1
製作年度 2008年
製作国 アメリカ、ドイツ
製作 ユニヴァーサル映画提供
    ダーク・ホース・エンタテインメント
    リレイティヴィティ・メディア他
製作費 $85,000,000
国内配給 東宝東和
日本公開 2009年1月9日
上映時間 120分

監督、脚本 ギレルモ・デル・トロ
原作、製作総指揮補 マイク・ミニョーラ
製作総指揮 クリス・サイムス
製作 ローレンス・ゴードン
    ロイド・レヴィン
    マイク・リチャードソン
撮影 ギレルモ・ナヴァロ
音楽 ダニー・エルフマン
編集 ベルナート・ヴィラプラナ
美術 スティーヴン・スコット
配役 ジェレミー・ジマーマン
    ツォルト・シュターク
衣装 サミー・シェルトンイメージ 2
出演
ロン・パールマン:ヘルボーイ
セルマ・ブレア:リズ
ダグ・ジョーンズ:エイブ
セス・マクファーレン:ヨハン(声)
ルーク・ゴス:ヌアダ王子
アナ・ウォルトン:ヌアラ王女
ジェフリー・タンバー:マニング
ジョン・ハート:ブルーム教授

鑑賞 2018年4月2日
ネット配信(Netflix)字幕
★★★★★

私はこの映画が大好きだ。
前作もかなり好きだが、こっちはもっと好き。
なんでってそりゃ、バケモノやクリーチャー
の類いがいっぱい出て来るからだ。

主だったものを並べてみると、
・まずは主役のヘルボーイ
ロン・パールマンがこれ以上はないという程のハマり役。素顔よりハマってると言っていい。
現在進行中のリブートでは『ストレンジャー・
シングス』の保安官役デヴィッド・ハーパー
演るとか。これはこれでイイかも。

・相棒のエイブ・サピエンイメージ 3
扮するは世界一のスーツアクター、ダグ・ジョーンズ。『シェイプ・オブ・ウォーター』に
至るデルトロの半魚人愛がパンパンに詰ま
った造形美。ヘルボーイと2人でバリー・マ
ニロウをバックに酒を酌み交わす場面に
思わず遠い目。


リズイメージ 4
果たしてクリーチャーと言っていいものか
アレなのだけど、前作と比べればヒロインと
いうよりもチーム一の殲滅力を持つ最終兵
器的な位置づけに。セルマ・ブレアはこの
シリーズでしか見たことないけど、可愛い
女優さんだなあ。



ヨハン・クラウスイメージ 5
ドイツからやって来たお目付け役。声を当
てたのは『テッド』等が有名なコメディメイカー、セス・マクファーレン。笑い成分の足りない
デルトロ映画に臆面のない下ネタで潤いを
与えた。





・ヌアダ王子とヌアラ王女イメージ 6
エルフの世界からやって来た双子の兄妹。
デトロイトメタルシティのクラウザーさんに
酷似との声多数。
ルーク・ゴスは『ブレイド2』でもリーパーの
ボスを演じていたが、同様にワイヤーを
駆使した切れの良いアクションは見応え
あり。
王女はどことなくジム・ヘンソンの
傑作ファンタジー『ダーク・クリスタル』の
キーラの面影が見られるが、
エイブの儚い恋模様に『シェイプ~』の
原点を垣間見る。





・ウインクイメージ 7
カバとゴリラを合わせたようなヌアダ王子の
従者。鎖仕掛けのロケットパンチを振り回し
て戦うパワーファイター。ゴツブサ系中ボス
の典型的な最期を遂げる。





・トゥースフェアリーイメージ 8
うう。かわいんだよう。抜けた歯を枕の下に
置いて寝ると金貨と取り換えてくれるという
例のアレ。
デルトロはよっぽど気に入ったのか、この
後に『グレムリン』系のプチモンスターパニ
ック『ダーク・フェアリー』を製作。
あんまり面白くはなかったけど。





・エレメンタルイメージ 9
豆から生まれた巨大植物モンスター。
市街地で大暴れのシーンはどうしても
円谷特撮を彷彿とさせるが、ヘルボーイが
赤ん坊を助け出す件は『猿人ジョー・ヤング』へのオマージュでもあろうかと。



・トロールばあさんイメージ 10
トロール・マーケットへの秘密の入口を
見張るバアさん。一見エエとこのばあさん
と言った感じなのだけど、野良猫を拾い
集めてバリバリ食ってしまう。
カナリアが嫌いで、見せられると正体を現す。




・トロール・マーケットに潜入すると、イメージ 11
そこはまさにモンスター天国。色々なモン
スターがひしめき合う光景に『スターウォ
ーズ』のカンティーナ酒場を思い出す。
中でもお気に入りがこれ。胸に抱いてい
るのは赤ん坊ではなく、腫瘍だ。





・トロールマーケットの古物商。イメージ 12
1カットしか登場しないキャラなのに
このツクリコミ。






・エルフの国の侍従長イメージ 13
の人はもちろんダグ・ジョーンズ。







・ブラックスミス(鍛冶職人)・ゴブリン。イメージ 14
遠い昔にエルフの王に頼まれて無敵の
破壊兵器ゴールデン・アーミーを作り出した。
ゴールデンアーミーを完成させた際に両足
を失ってしまい、今はオンボロの荷台に乗
って暮らしている。







ジャイアント・ドアウェイは岩で作られたイメージ 15
巨人。ゴブリンの角笛で起き上がり、その
お腹の部分にエルフの国への入口が開く。







・死の天使。イメージ 16
震えるほどのカッコよさ。
まさしくデルトロクオリティ。
これも中のヒトはダグ・ジョーンズだ。








・ゴールデンアーミー。
エルフの憎悪が生み出した無敵の軍団。イメージ 17
圧倒的な力で人間の軍を制圧したが、
そのあまりに無慈悲な破壊ぶりにエルフの
王は心を痛め、永遠に封印してしまう。
ゴールドライタンとか超合金とか、日本製
ロボット玩具みたいなセンスに思わず和む。




どれもこれ1体でそこそこのB級映画やイメージ 18
スピンオフが軽く作れてしまうクオリティ。
怪獣オールスター世代の自分としては
ヘンな奇声を上げそうなほどに
モンスターてんこ盛りの一品でありました。

ながいこと『3』の製作が待たれていたが、
つい先日「3は100%ない」とデルトロ本人
が宣言。
その代わりにリブートが『ディセント』の
ニール・マーシャルのメガホンで製作中との
こと。
主演は上記の通りにデヴィッド・ハーバー。
ミラ・ジョヴォヴィッチが悪の女王役、
イアン・マクシェーンがブルーム教授役。
相棒エイブは今回出ない模様。
公開は2019年初め頃予定。
やや期待してよいかと。

映画『永遠のこどもたち』~恐怖のだるまさんがころんだ

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原題 EL ORFANATOイメージ 1
製作年度 2007年
製作国 スペイン
製作 ワーナー・ブラザース・エスパーニャ
    ワイルド・バンチ
    テレシンコ・シネマ他
製作費 €3,400,000
国内配給 シネカノン
日本公開 2008年12月20日
上映時間 105分

監督 J・A・バヨーナ
脚本 セルヒオ・G・サンチェス
製作総指揮 ギレルモ・デル・トロ
製作 アルヴァロ・アウグスティン
    ホアキン・パドロ
    マル・タルガローナ
撮影 オスカル・ファウラ
音楽 フェルナンド・ヴェラスケス
編集 エレーナ・ルイス
美術 ホセップ・ロゼル
配役 ヘリ・アルバラデホ
衣装 マリア・レイェス
出演
ベレン・ルエダ:ラウライメージ 2
フェルナンド・カヨ:カルロス
ロヘル・プリンセプ:シモン
マーベル・リヴェラ:ピラール
モンセラート・カルーヤ:ベニグナ
エドガル・ヴィヴァル:バラバン教授
ジェラルディン・チャプリン:アウロラ

鑑賞 2018年4月5日
ネット配信(Netflix)字幕
★★★★★
第2回玉吉杯ホラー大賞グランプリ作品

デルトロ映画祭もそろそろ切り上げようか
と思うのだけど、その前にもう一本。
と言ってもデルトロの監督作ではなく、
製作総指揮として名を連ねた作品。

原題は"EL ORFANATO"「孤児院」の意。
かつて自分が育った孤児院を再生するため
その場所へ戻ってきたラウラと、
その息子シモン。

「ママはこのおうち怖くなかったの?」イメージ 3
「怖くないわ。友達がずっと一緒だったから」

自分はただでさえ涙もろいのだけど、
「可哀そうな子供」というのが一番弱い。
本作の少年シモンがまさにそれである。
先天性の病を抱え、余命は幾何とも知れず。
もちろん両親はそんな愛息子に
出来得る限りの医療を受けさせ、少しでも
長く一緒に暮らせることを望んでいる。
「パパとママが付いてる。お前は大丈夫」
とは言うものの、当の本人は分かっている。イメージ 4
決して大人にはなれないことを。
そして自分がパパとママの本当の子供では
ないことも。

孤児院再開の準備に追われるラウラは
なかなかシモンに構ってやれない。
満たされない子供は時として、
自分だけの友達を心の中にこしらえて戯れる。
後ろめたさを感じながらも、
よくある「イマジナリーフレンズ」の類いと
決めつけてかかるラウラ。
可哀そうなシモン。
でも、この場所の友達は決してシモンの
妄想ではなかった。
友達はずっと待っていた。
ラウラがまた、一緒にゲームをしてくれると。
やがてシモンが忽然と姿を消す。
ゲームが始まったのだ。

半年過ぎてもシモンは見つからない。
(そもそも長くは生きられなかったのだ)
(本当の子供でもないしね)
誰もが諦め始めた中、ラウラだけはイメージ 5
「違う。ぜったいにどこかで生きている。
あたしには分かる」
挙句の果てには怪しげな霊能者を呼び込み、
交霊会を開いてまで息子の行方を追う。
数々の怪奇現象。謎の侵入者。
孤児院に秘められた忌まわしき過去。
果たしてラウラはシモンを見つけ出すことが
出来るのだろうか―?

『パンズ・ラビリンス』の成功を受けての
「デルトロがまたやった!」的な意味合いで
売り込まれていたこの作品。
が、デルトロに勝るとも劣らない若き才能が
ここで発掘されていた。
監督のフアン・アントニオ・バヨーナは
当時32歳。
バルセロナの映画学校在学中から既に
デルトロはその才に惚れ込み、デビュー作の
プロデュースを約していたそう。
執念ともいえる緻密な世界観の作り込みで
観客を取り込んで行くデルトロに対して、
バヨーナは作劇に重きを置いた王道の作り。
交霊会や怪現象を描くオカルトの要素は
非常に恐怖感が高く、方々に散りばめられたイメージ 6
伏線を一気に回収させていく巧みな
ストーリーテリングも見事。
そして昨年の『怪物はささやく』もそうだっ
たが、観客の感情をグイグイと喚起させる
豪胆な演出力こそがこの監督の持ち味と
言って良いかと。
その特性はデルトロよりもむしろ
スピルバーグに近いものがあるのかも。
道理でスピ印に抜擢された最新作
『ジュラシック・ワールド2』がこの夏公開。
これまでとは路線がやや異なるが、
それなりに期待していいのかもしれない。
本作のあとに手掛けた『インポッシブル』は
その題材ゆえどうも観る気になれなかっ
たが、こちらも近々手に取ってみようと思う。

『永遠のこどもたち』
改めて、なんとまあ素晴らしい邦題を付けた
もんだと思う。
そう言えば自分にも2人の子供がいるが、
小さい頃にはよく「今が一番可愛い頃だね」
とかお決まりのご挨拶があったりして、
言ってる相手は誉め言葉のつもりで言ったん
だろうが、どうもその度に違和感を覚えたイメージ 7
もんだった。
そりゃ他人様にとってちっちゃな子供は
一様に可愛く見えるに違いない。
でも、自分の子は違う。
大きくなっても可愛いのだ。
ちっちゃい頃はそれこそふわふわして、
仕草やら表情やらなにからなにまで
掛け値なしに可愛らしかったけども、
今でもその思いは変わらない。
大きくなるにつれて上から目線で生意気な
ことを言ってきたりガン無視を食らったりも
したけども、それでもそんないっちょ前に
成長していく我が子の姿に喜びを感じる
わけで。


永遠のこどもたちと共にネバーランドへと
旅立って行ったラウラ。
それは自らも孤児として育った彼女が、
本当の親子を探し求めた果てに思い描いた
ファンタジーと捉えるのは意地が悪い解釈
だろうか。

映画『アナベル 死霊人形の誕生』~死霊館エクステンデッド・ユニバース

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原題 ANNABELLE : CREATIONイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 ニュー・ライン・シネマ
    ラットパックデューン・エンタテインメント
    ザ・サフラン・カンパニー
    アトミック・モンスター
製作費 $15,000,000
国内配給 ワーナー・ブラザース
日本公開 2017年10月13日
上映時間 109分

監督 デヴィッド・F・サンドバーグ 
脚本 ゲイリー・ドーバーマン
製作総指揮 ウォルター・ハマダ
    リチャード・ブレナー
    スティーヴン・ムニュチン他
製作 ピーター・サフラン
    ジェームズ・ワン
撮影 マキシム・アレクサンドル
音楽 ベンジャミン・ウォルフィッシュ
編集 ミシェル・エイラー
美術 ジェニファー・スペンス
配役 リッチ・デライア
衣装 リア・バトラーイメージ 2
出演
タリサ・ベイトマン:ジャニス
ルル・ウィルソン:リンダ
アンソニー・ラ・パリア:マリンズ氏
ミランダ・オットー:マリンズ夫人
ステファニー・シグマン:シャーロット
グレイス・フルトン:キャロル
フィリッパ・クルサード:ナンシー
テイラー・バック:ケイト
ルー・ルー・サフラン:ティアニー
サマラ・リー:ビー

鑑賞 2018年4月9日
Blu-ray(発売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンタテインメント)字幕
★★★☆☆

メガヒットホラーシリーズ『死霊館』
きっての人気キャラ(?)アナベル人形を
フィーチャーしたスピンオフ第2弾。
1作目『アナベル 死霊館の人形』は
ウォーレン夫妻のオカルト収納室に
所蔵されるまでを描いたものだったが、イメージ 3
本作は更に遡る。
むかしむかし。古き良きアメリカの時代。
腕の良い人形職人マリンズの手によって
作られたアナベル人形。
なぜ、その名を付けられたのか?
どんな経緯で邪悪な意思を持つに至った
のか?

『死霊館』や『インシディアス』、
『呪い襲い殺す』、『フッテージ』等々々、
ジェームズ・ワンやジェイソン・ブラムらの
手により新世紀型のパラノーマルホラー
ゾンビや拷問ポルノに代わって今やシーン
メインストリームと化したが、この類を
巷では「ジャンプスケア」と呼ぶらしい。
思わず飛び上がるほどにビビらせる。
つまりは不意打ちや突然の大音響で
驚かせるという、極めてヨコシマな趣旨の
映画である。
その昔この類は「ショック映画」と呼んで
本来のホラー映画とは区別したもんである。
そしてジェームズ・ワンの『死霊館』は往年
のオカルト映画を現代風にアップデートした
真っ当なホラー映画だったと思うのだけど、
今回の『アナベル』に関してはイメージ 4
まさにそんなビックリ箱式のジャンプスケア。
監督のデヴィッド・F・サンドバーグは
ネットにアップした「ホントにコワい」
投稿動画が評判となり、『ライト/オフ』で
デビューをした人。
『ライト/オフ』はいかにもワン的な
家族ドラマを盛り込んだ良質ホラーで
あったけども、やはりこうしたびっくらかし
の小手先勝負が本分のヒトなんでしょう。
面白いと言えば面白いのだけど、やはり
『死霊館』、殊に『エンフィールド事件』が
ホラーの枠に捉われない一級品のエンタメ
作品だっただけに、この邪道ぶりはいかにも
物足りない。
所謂「ビギニング」であり、
前作の『死霊館の人形』にも繋げなきゃ
ならない縛りのせいで、ストーリーが
不自然に右往左往させられしまった感。
少女達の絆で補強しようとした痕も見られ
たが、これまた取り繕った感じで空々しい。
次回作は『ライト/オフ』の続編と当初言
われていたが、どうやら『アクアマン』を
撮っている師匠ワンとコミでDCユニバース
に組み込まれた模様。
昨年『ジャスティス・リーグ』で壮絶なイメージ 5
コケっぷりを記録してしまったDCだが、
果たしてどうなることやら。

そうなのだ。ユニバースと言えば、
本作が作劇のクオリティを下げてまで
几帳面に「繋がり」に固執したのも、
そこに作り手たちの大いなる思惑が
あったからに他ならない。イメージ 6
『死霊館』製作に先だって作り手達は
ベースとなった実在の霊能力者
ウォーレン夫妻の収納室を訪れたが、
その膨大かつ魅惑的なラインナップを
目の当たりにし「ネタの宝庫じゃないか!」
と狂喜したそうな。
その中の一つがアナベルである。
他にも鎧兜やらオルゴール、宝飾品など、
曰くありげなアイテムが沢山並んでいる。
つまりジェームズ・ワンはじめ本シリーズ
の製作者達は『死霊館』をメインとして、
これらのアイテムを基に
それぞれ単体作品を作って行き、
「死霊館エクステンデッド・ユニバース」
とでもいうべき包括世界を構築しようと
してるんである。
次なるは『エンフィールド事件』に出て
きた悪魔の尼さん(本作でも当然チラ見せ)
を主役に据えた"THE NUN"。
監督は『ザ・ハロウ』で注目された
新鋭コリン・ハーディ。公開は本年9月だ。
DCもそうだが、ユニバーサルが満を持して
ぶち上げた『ダーク・ユニバース』が
見事にズッコケたのも記憶に新しい。
フランチャイズ化もによる囲い込みは
確かにおいしい話だが、
実際のところはそう甘くはないということか。

つか、ぶっちゃけオムニバスで良くないか。

映画『ジュマンジ / ウェルカム・トゥ・ジャングル』~お前のライフ、あと何個?

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原題 JUMANJI
: WELCOME TO THE JUNGLEイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ
製作 コロンビア映画提供
    マット・トルマック・プロダクションズ
    レイダー・ピクチャーズ
    セブン・バックス・プロダクションズ
製作費 $90,000,000
国内配給 ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
日本公開 2018年4月6日
上映時間 119分

監督 ジェイク・カスダン 
脚本 クリス・マッケンナ
    エリック・ソマーズ
    スコット・ローゼンバーグ他
原作 クリス・ヴァン・オルズバーグ
製作総指揮 テッド・フィールド
    ダニー・ガルシア
    デヴィッド・ハウスホルター他
製作 ウィリアム・テイトラー
    マット・トルマック
撮影 ギューラ・ペイドス
音楽 ヘンリー・ジャックマンイメージ 2
編集 スティーヴ・エドワーズ
    マーク・ヘルフリッチ
配役 ニコール・アブレラ
    ジェニー・マッカーシー
美術 オーウェン・ペーターソン 
衣装 ローラ・ジーン・シャノン
出演
ドウェイン・ジョンソン:スペンサー
ケヴィン・ハート:フリッジ
ジャック・ブラック:ベタニー
カレン・ギラン:マーサ
リス・ダービー:ナイジェル
ボビー・カンナヴァル:ヴァン・ペルト
ニック・ジョナス:アレックス

鑑賞 2018年4月12日
仙台東宝シネマズ IMAX 3D 字幕
★★★★☆

え。もう終わっちゃうの!?
ということで最終日に慌てて観に行った。
にしても早すぎないか。
本国では昨年のクリスマスシーズンに
SWを首位から引きずり落として
(当のSWがあまりに不評だったというイメージ 3
のもあるが)トップを飾った話題作が、
封切からわずか2週間での打ち切り。
まず、日本じゃややツラいタイプかとは
思ってたけど。

でも。やっぱり観てよかったよ。
劇場で観れて良かった!
3Dで観れて良かった~!
ウィークデイ夜の劇場内は確かに混んでは
いなかったけど、それでも終始笑いが
絶えなくて、帰りには口々に「あんま期待
してなかったけど面白かった~♪」とか、
みんな満足気な様子だった。

ご存知の通り、オリジナルは1995年に
ロビン・ウィリアムズ主演で製作された作品。
オリジナルではボードゲームの世界が現実
に飛び込んで来るというお話だったが、
今度はビデオゲームの世界が舞台。
古ぼけたビデオゲームを見つけた4人の
高校生が、ゲーム"JUMANJI"の世界に
引きずり込まれてしまう。
そこでは現実の姿ではなく、それぞれ自分が
選んだプレイヤーになっていることに気付く。
ヒョロヒョロのオタクはマッチョの冒険野郎。イメージ 4
体育会系のブラザーはチビの動物学者。
地味系マジメ女子はセクシーヒロイン。
そして意識高い系インスタギャルが
どういうわけかデブの中年オヤジに(爆)
胸のあたりを叩くとウィンドウが開いて
キャラ毎のスキルと弱点が表示される。
腕に3本のバーが記されていて、
ゲーム中で死亡するとバーが一本消える。
つまりは「ライフ」だ。
3本消えたらそう、ゲームオーバーだ。

- welcome to JUMANJI !! -
どことなくブレンダン・フレイザーみたいな
ノンプレイヤーキャラクターが前口上。
悪党ハンター、ファン・ペルトが神聖なジャガー像から秘宝を盗んだせいでジュマンジ
の世界は暗黒に包まれてしまった!
私はファン・ペルトのキャンプに潜入し
秘宝を盗み出すことに成功した。
そこで君たちはジャガー像へと向かい、
この秘宝「ジャガーの眼」を像に戻すのだ。
それでは、頼んだぞ!
元の世界へ帰るにはそう、
ゲームをクリアするしかない。
果たしてジュマンジの世界を元に戻し、
現実世界へ帰ることが出来るのだろうか?

オリジナルはベテランのエンタメ請負人イメージ 5
ジョー・ジョンストンの手腕により無邪気に
楽しめるキッズムービーであったが、
今回のリブートではちょっと年齢層を上げ
て今ドキの少年少女達が笑って泣い
共感のできるティーンズムービーと相成った。
ゲームの要素を笑いとして取り入れたセンス
はヒット率が高く、コメディとしても優秀。
ジャック・ブラックの相変わらずな鉄板ぶりは
言うまでもないが、ロック様が「中身はオタク」
を演じるヘタレっぷりも面白い。
そしてヒロインのカレン・ギランが素晴らしく
魅力的で。前の『バレー・オブ・バイオレンス』
もそうだったが「美人なんだけど致命的にイタ
い女」を演らすとこの人は天下一品だな。
あんなキスシーン初めて観たぞ(大笑)

監督のジェイク・カスダンは
『帝国の逆襲』や『ボディガード』等の
名脚本家ローレンス・カスダンのご子息。
古き良き学園コメディをベースに敷きつつも
秘境アドベンチャーとしての蘊蓄には
父が手掛けた『レイダース/失われた聖櫃』
へのリスペクトも垣間見られる。
当然続編も作られるんだろうけども、
是非とも同じメンツでの続投を希望。
やっぱ日本じゃ売れないだろうけど。

映画『大アマゾンの半魚人』~水の底からこんにちは

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原題 CREATURE FROM THE BLACK LAGOON
イメージ 1
製作年度 1954年
製作国 アメリカ
製作 ユニヴァーサル・インターナショナル・
ピクチャーズ
製作費 $1,300,000
国内配給 ユニバーサル映画
日本公開 1954年7月12日
上映時間 79分

監督 ジャック・アーノルド
脚本 ハリー・エセックス
    アーサー・ロス
原案 モーリス・ジム
製作 ウィリアム・アランド
撮影 ウィリアム・E・スナイダー
音楽 ヘンリー・マンシーニ他
編集 テッド・J・ケント
美術 ヒルヤード・ブラウン
    バーナード・ハーツブラン
メイクアップ バド・ウェストモア
出演
リチャード・カールスン:デイヴィッド
ジュリー・アダムズ:ケイ
リチャード・デニング:マーク
アントニオ・モレノ:カールイメージ 2
ネスター・パイヴァ:ルーカス
ウィット・ビッセル:トンプソン博士
バーニー・ゴージア:ズィー

鑑賞 2018年4月18日
DVD(発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン)字幕
★★★★★

やっと観れた…♪
明らかに『シェイプ・オブ・ウォーター』
の影響で、ディスカスでは一時的に超品薄
となっていた一本。(かく言う自分もその
影響下にあったクチなわけだが)

デルトロに限らず、ジョー・ダンテや
ランディス、ピーター・ジャクソンら
数多のフィルムメーカー達の原体験となった
モンスター映画のクラシックだけども、
なんだかんだで手に取るのは初めて。
大概この時代の「名画」というのは
この時代だったからこそ
当時の人々には新鮮たり得たわけで、イメージ 3
今の目で観てしまえばさほどでもない
などと小生意気な口を叩いていたのだけど、
漸く最近になって『キングコング』や
『フランケンシュタイン』など、
「いつの時代でもイイものはイイ。」
そんな掛け値なしの名品が存在するという
ことを思い知った。

果たしてこの『大アマゾンの半魚人』も
そんな永遠のマスターピースと呼ぶに
相応しい作品でありました。
もっとも、上に挙げたような2作品のように
問答無用の面白さや高い完成度を備えて
いるとは言い難い。
人間達の前に現れた一匹の怪物がひと通り
暴れまわった挙句に退治される。
いかにも古臭くて金のかかっていない、
昔ながらのB級映画である。
にもかかわらず、この映画がモンスター映画
の金字塔として輝き続けているのは、
ひとえに怪物―半魚人ギルマン(エラ男)の
存在感に尽きると言っていい。
卓越したその造形美は言うまでもないが、
どことなく物悲しげな佇まいや儚い運命に
共感を通り越して愛おしさすら感じられてイメージ 4
仕方がなく。映画を観終わった後もあの
怪物がずっと心の中に居座っているのだ。
まるで、恋でもしたように。

少年期のギレルモ・デル・トロはいつの日か
―半魚人がラストに殺されるのではなく、
ジュリー・アダムズと結ばれて
ピクニックに出かける物語を夢に見たという。
その夢が『シェイプ・オブ・ウォーター』と
して実ったわけだ。
本作の怪物は別段感情表現や大仰な
擬人化が一切なされていないが、
それでも観る者の心の中にそれぞれの
物語を喚起させる。
シンプルな作りの中にも、そんな余白の
妙こそがこの映画の傑作たる所以では
ないかと。

映画『アトミック・ブロンド』~デカい女にボコられたい症候群

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原題 ATOMIC BLONDEイメージ 1
製作年度 2017年
製作国 アメリカ、ドイツ、スウェーデン
製作 シエラ・ピクチャーズ
   デンヴァー&デライラ・プロダクションズ
    87イレヴン他
製作費 $30,000,000
国内配給 KADOKAWA
日本公開 2017年10月20日
上映時間 115分

監督 デヴィッド・リーチ
脚本 カート・ジョンスタッド
原作 アンソニー・ジョンストン
    サム・ハート
    "THE COLDEST CITY"
製作総指揮 デヴィッド・ギロッド
    ニック・メイヤー
    ジョー・ノーズマック他
製作 A・J・ディクス
    ケリー・マコーミック
    シャーリーズ・セロン他
撮影 ジョナサン・セラ
音楽 タイラー・ベイツ
編集 エリザベート・ロナルズドッターイメージ 2
美術 デヴィッド・シューネマン
配役 ジョルト・シュターク
    メアリー・ヴァーニュー
衣装 シンディ・エヴァンズ
出演
シャーリーズ・セロン:ロレーン
ジェームズ・マカヴォイ:パーシヴァル
エディ・マーサン:スパイグラス
ジョン・グッドマン:カーツフェルド
トビー・ジョーンズ:グレイ
ジェームズ・フォークナー:C
ソフィア・ブテラ:デルフィーヌ
ビル・スカルスガルド:メルケル

鑑賞 2018年4月20日
Blu-ray(発売元:ハピネット)字幕
★★★☆☆

シャーリーズ・セロンと言えば今を以ても
ハリウッドきっての美人女優だが、
身長177cmという大女である。
9頭身!というのもあってか、
それよりも随分と大きな印象を受ける。
役選びの方もいかにもフェミニンなものをイメージ 3
好まず、性別を超えた力強いキャラクター
を志向しているように見える。
『マッドマックス/怒りのデスロード』の
頭を丸刈りにし機械油を顔に塗りたくった
大隊長フュリオサ役の雄々しさも記憶に
新しい。(wikiによればジョージ・ミラー
監督は更に「腋毛」を伸ばすようセロンに
要求をしたが、さすがに拒否られたとか)

本作はそんなセロン姐御のアクション映画。
主演のみならず、プロデュースを買って出て
臨んだ肝いりの企画。
監督は『ジョン・ウィック』(共同監督)
で一躍注目を浴びたデヴィッド・リーチ。
聞けばセロンは『ジョン・ウィック』が
相当気に入っていたようで、
『ジョン・ウィック2』の製作準備に入っ
ていたリーチに直々ご指名を掛けたそうな。
そんなわけでセロン姐御がまさに「女キアヌ」
と言った趣で、イカつい野郎どもをバッタ
バッタとなぎ倒していく愉快痛快アクション
を期待していたのだけど。

セロンがプラチナブロンドを獅子舞の如くにイメージ 4
振り乱し、その長い手足をぶんぶん振り回
してのアクションは確かに優雅ではあるも
のの、爽快感はすさまじく低め。
果たしてその指向性がセロンのものなのか、
自らもプロの格闘家であるリーチのこだわり
なのかは分からないけども、その戦いぶり
が単に「敵を倒す」というよりかは「いかに
多くダメージを与えて息の根を止めるか」
に重点を置いたもので、セロンも敵も満身
創痍のズタボロ状態になりながらひたすら
相手を痛めつける鬼畜っぷりにドン引き
至極。

お話もやや面倒くさいクライムスリラー風で
いまいち乗り切れず。
原作がグラフィックノベルであったらしく、
そのダークな世界観を映像化する方に
注力がなされた感。凝った画ヅラのセンス
は確かに悪くなかったけども、期待してい
たようなアクション映画としては若干物足
りない。

そしてなによりも、目的のためにはガチの
シバキ合いだろうが同性愛だろうがなんで
もやったるわい!とノリノリで臨んだセロン
の覚悟を、ジェームズ・マカヴォイのイメージ 5
インパクトが食ってしまう番狂わせ。
こないだの『スプリット』でも感じたけど、
マカヴォイの曲者ぶりというのは
ひと頃のケヴィン・ベーコンにも匹敵する
かもしれない。

映画『ダーククリスタル』~奇跡のクラフト・ファンタジー

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原題 THE DARK CHRYSTALイメージ 1
製作年度 1982年
製作国 アメリカ、イギリス
製作 ITC提供
    ジム・ヘンソン・プロダクションズ
製作費 $15,000,000
国内配給 UIP
日本公開 1983年3月5日
上映時間 93分

監督、原案、製作 ジム・ヘンソン
共同監督 フランク・オズ
脚本 デヴィッド・オデル
製作総指揮 デヴィッド・レイザー
    ロード・グレイド
製作 ゲイリー・カーツ
撮影 オズワルド・モリス
音楽 トレヴァー・ジョーンズ
編集 ラルフ・ケンプレン
美術 ライル・コンウェイ
    ウェンディ・ミットナー
SFX ブライアン・スミシーズ
    ロイ・フィールド
    インダストリアル・ライト&マジック
意匠デザイン ブライアン・フラウドイメージ 2
出演
ジム・ヘンソン:ジェン、典礼長(操演)
フランク・オズ:オーグラ、侍従長(操演)
キャスリン・ミューレン:キーラ(操演)
デイヴ・ゴールツ:フィズギグ、将軍(操演)
スティーヴン・ガーリック:ジェン(声)
リサ・マックスウェル:キーラ(声)
ビリー・ホワイトロウ:オーグラ(声)
バリー・デネン:侍従長(声)
マイケル・キルガリフ:将軍(声)
ジェリー・ネルソン:典礼長(声)
ジョセフ・オコナー:ナレーター

鑑賞 2018年4月21日
Blu-ray(発売元:ソニーピクチャーズ・エンタテインメント)字幕
★★★★★

まさに、動く絵本。
幼い頃に目にした絵本のおとぎの国。
それは果して
現実にないウソの世界だったろうか。
いつか。どこかに。
そんな世界が本当にあったのかもしれない。イメージ 3
だからこそ邪悪な魔女の存在に恐怖し、
お菓子の家に甘い香りを感じたりもしたの
では。
「ロード・オブ・ザ・リング」を筆頭に
CGの力で世界の隅々にまで意匠を施す
素晴らしいファンタジー映画が数多く造られ
たが、本作はその原点であり、頂点だ。

いつか。どこかに。
大きなクリスタルが輝く夢の世界があった。
3つの太陽が重なった運命の日。
クリスタルが割れ、暗黒の時代が訪れた。
現れた2つの種族。
醜悪な支配者スケクシスと
世を忍ぶ賢者ミスティックス。
時と共に2つの種族は滅びへ向かいつつ
あった。
予言によれば。
千年後、3つの太陽が再び重なる時。
割れたクリスタルが邪悪な光を放ち、
永遠の暗黒時代が続くこととなる。
しかし。伝説の種族ゲルフリンより
救世主が現れ、クリスタルに光を取り戻すと。
ちょうとあれから千年後。
予言を恐れたスケクシスにより、
ゲルフリンは根絶やしにされたはずだった。
が、一人だけ。ミスティックスに匿われ、
生き永らえたゲルフリンの少年ジェンがいた。イメージ 4
3つの太陽が重なる日「大合致」まで
あと僅か。
ジェンの旅立ちの刻が、やって来たのだ…!

「セサミストリート」や
「SW」のヨーダといったキャラクター創作で
名を馳せた頑固一徹のマペット師
ジム・ヘンソンが創り上げた、マペットだけの
手作りファンタジー・アドベンチャー。
公開は1982年。まだCGがさほど実用的
とは言えなかった時代。
現在の素晴らしいCG映像を見慣れた目には
リアル、壮大というには程遠い。
でも、CGはあくまでも表現手段。
いかに予算をつぎ込んだグラフィックが
素晴らしくとも、描かれる中身が
スカスカの嘘っぱちでは話にならない。

 まず第一に、「世界」ありき。

ヘンソンが語るように、
こうした異世界を舞台にしたファンタジーは
なにはともあれ、現実の世界とは異なった
架空の世界に思わず引き込まれそうになる
ほどの説得力を持たせることが肝要。イメージ 5
そう云えば「ロード・オブ・ザ・リング」
製作時、何万人という膨大な数のスタッフは
「中つ国は本当に存在する」と
誰一人として信じて疑わなかったという。
彼らマペット劇のエキスパート達は、
その持てる技術と想像力をフル稼働し、
幻想世界の素晴らしいサイトシーイングへと
私達を誘う。
異形の住人、その装飾品から爪、息遣い。
奇妙な建造物、光と影、埃、揺らめく空気。
鬱蒼とした森、息づく小動物、咲き乱れる花々。

名もなき異世界から、現の世に戻り。
私達は、自分の目に映る狭い世界が
決して全てではないことを知る。
いつか。どこかに。イメージ 6

想像の世界に思いを馳せる。
それは決して馬鹿げたことじゃない。
ふて腐れても、暴れても、
つまらない世界はずっと変わらない。
まだ見ぬ未知の世界へ。
それを夢の世界に変えていくのは、
他ならぬ自分の力なんだから。

映画『Mute ミュート』~星屑の子供は七光に当たる夢を見るか

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原題 MUTE
イメージ 1製作年度 2018年
製作国 イギリス、ドイツ
製作 リバティ・フィルムズ
    スタジオ・バベルズバーグ
国内配給 ネットフリックス
日本公開 2018年2月23日
上映時間 126分

監督、脚本、原案 ダンカン・ジョーンズ 
脚本 マイケル・ロバート・ジョンソン
製作総指揮 トレヴァー・ビーティー
    コリン・クライトン
    ポーリン・フィッシャー他
製作 スチュアート・フィネガン
    テッド・サランドス他
撮影 ゲイリー・ショウ
音楽 クリント・マンセル
編集 バレット・ヒスコート
    ローラ・ジェニングス
美術 ギャヴィン・ボケット
配役 リンゼイ・グラハム
    メアリー・ヴァーニュー他
衣装 ルース・マイヤーズ
出演
アレクサンダー・スカルスガルド:レオ
ポール・ラッド:カクタス・ビルイメージ 2
ジャスティン・セロー:ダック
シーネブ・サレー:ナディーラ
ロバート・シーハン:ルーバ
ギルバート・オウオア:マクシム
ノエル・クラーク:ストゥー

鑑賞 2018年4月23日
ネット配信(ネットフリックス)字幕
★★★★☆

『月に囚われた男』で新星の如く登場し、
どことなく70年代の名作SFをイメージ 3
彷彿とさせるクラシックなセンスで
一躍注目を浴びたダンカン・ジョーンズ。
続く『ミッション8ミニッツ』も
その巧みなストーリーラインが
玄人筋にも高く評価をされ、
その後の『ウォークラフト』は評価こそ
ボロカスだったものの、どういうわけか
中国で空前の大ヒット。
ビッグバジェットでもしっかり稼げる
手腕を発揮し、「ダレソレの息子」などと
余計な冠を被せられることもなく
自分の才のみでのし上がってきた感。
そんなSF映画界のニューホープの新作は
またまたネットフリックスの独占配信。

舞台は近未来のベルリン。
様々な言語のケバケバしいネオンに彩られ、
街頭アドが響き渡る未来都市の上空を
未来カーがびゅんびゅん飛び交う。
一目で分かる『ブレラン』風ディストピア。
もうオマージュと言う次元ではなく、
「お前もリメイクやりたかったのね?」と
思わせるほどのアカラサマさである。
ただだからと言って単にフェイバリットのイメージ 4
猿真似というわけでは全くなく。
『2049』でドゥニ・ヴィルヌーヴは
「アレから30年」の世界を見事に
アップデートしていたが、こちらでも
「今から40年後」の世界を相変わらずな
センスで作り込んで見せた。
40年後と言ってもそんなに先の話じゃない。
ちょっと長生きすれば見れるかもしれない、
そんな程度のユルめなファンタジー。
だから世界の様子も変わっているようでイメージ 5
それほど大袈裟には変わってない。
ちょっとだけ便利なものが増えて、
一方で汚いものも同じくらいに増えている。
街も、人間も。
政情は結構変わってしまったみたいで、
アメリカ人がコソコソ暮らしてて、
黒人がロシア人やらアラブ人やらを
偉そうにコキ使ってたりする。
そして変わってるのは都心部だけで、
一寸郊外に出れば今と全然変わってない。
古くなっただけ。そのまんま。
所謂「箱モノSF」が好きな自分としてはイメージ 6
その達者な世界観を眺めてるだけで
十分楽しめたけども、不快指数が幾分
高すぎたかな。

役者陣も総じてイイ面構えが揃ってて◎。
主演のアレクサンダー・スカルスガルドは
タイトル通り「幼少期の事故で声を失った」
という役どころ。全くセリフがない中で
じわじわ溢れる出す感情表現に感服した。イメージ 7
そしてポール・ラッドが圧巻の存在感。
所謂「荒くれ者」という役どころに
持ち前の「根はイイ奴」を滲ませながら
(なんつったってアントマンだからね)、
その実トンでもない闇を露わにしていく
という離れ業。ジャスティン・セローの
ガチなアブっぷりも楽しかった。

これまでは頑ななほどにボウイのボの字も
なかったジョーンズ監督だけども、イメージ 8
エンドクレジットで
「父デヴィッド・ジョーンズに捧げる」
と来たのでちょっとビックリした。
やっぱりそうだよな。影響がないわけない。
リスペクトしないわけがない。
でも「キャットピープル」をカマしたのは
ちょっとナシじゃないかと。
タランティーノじゃないんだから。

映画『シスター』~14歳のマエストロと親バカの鬼畜

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原題 HOSTILEイメージ 1
製作年度 2014年
製作国 フランス
製作 ライトハウス・プロダクション
国内配給 108メディア
日本公開 年月日
上映時間 89分

監督、脚本、撮影、編集、特殊メイク
    ナタン・アンブロジオーニ 
製作、撮影、製作進行
    ファブリス・アンブロジオーニ
特殊メイク:ジュリ・ヴェンテュレリ
音楽 エルワン・コワ
出演
リュナ・ブラン:アナ
ジュリ・ヴェンテュレリ:エミリー
シェリー・ウォード:メレディス
アナトリア・アリエ:クロエ
マガリ・ギュイヨン:ジェシカ
モルガン・エク:クリス
ディディエ・ボウモン:ヒトマン医師
ルシール・ドニエ:ルーシー
ナタン・アンブロジオーニ:ジェイク

鑑賞 2018年4月28日イメージ 2
DVD(発売元:チャンス・イン)字幕
★★☆☆☆

なんと14歳の少年が監督をしたというこ
とで話題になったフランスのホラー映画。
フランスと言えば10年ほど前に
『ハイテンション』や『屋敷女』、
『マーターズ』など所謂「フレンチ鬼畜」
で一世を風靡したが、その実フランスと
いう国はホラーと言うジャンルに対する
偏見や差別意識が依然として強く、
フランスでホラー映画に出演を依頼をする
ということはポルノに出てくれと頼むのに
等しいのだと、パスカル・ロジェがなんか
のインタビューで言っていた。
となると14歳の少年が
ホラー映画を製作したということは、
それだけ世の理解が進んだということか、
それとも世が荒んだのだと解釈をすべきか。

さて、14歳だよ。
スピルバーグが『激突!』を撮ったのがイメージ 3
「弱冠」26歳の時。
ロバート・ロドリゲスの『エル・マリアッチ』
は24歳。ランディスの『シュロック』が
21歳だ。
どれもその「弱冠」に不相応な逸材ぶりに
世界が驚嘆したもんだが、今回の14歳に
ついてはちと様相が異なる。

オープニングこそ胸元を血で真っ赤に染めた
女がいきなり大暴れする「フレンチ仕立て」イメージ 4
に一瞬だけ心が躍ったが、その後はお決ま
りのハウスホラー。
ある独り身の初老女性の下に二人の少女が
里子としてやって来る。
初めはうまく行っていた。
が、やがて少女達は家の中に潜む「なにか」
の存在を感じ出す。
当世流行のジェームズワン式、ブラム式
オカルトホラーの定型テンプレートを
無邪気かつ無節操に継ぎ合わせた感。
よく歯車にペンを指してぐるぐる回すと
綺麗に絵が描ける子供用のお絵かき定規がイメージ 5
あるけども、あれでホラー映画のお絵かきを
した感じだ。

もちろんそんなツールは現実に存在はしない
わけだが、その役割を果たしているのが
周りにいる大人たちである。
監督から脚本、撮影、編集、特殊メイクと
ほとんどのポストに14歳のナタン・アンブロ
ジオーニ君の名がクレジットされているが、
製作者のファブリス・アンブロジオーニがイメージ 6
確証はないがナタン君の父親もしくは親類筋
と推察される。そしてそれなりに酔狂で使え
る資金力と、そこそこ映画製作のノウハウ、
人脈を持つ業界人でもある。
幼少期からホラー映画に並々ならぬ興味
を抱き、いっぱしの蘊蓄を言うようになった
ナタン君が
「ボクもホラーが撮りたい。アジャみたいな
映画監督になりたいんだ!」と
自分で言ったかどうか、それは分からない。イメージ 7
が、そんなナタン君の姿に目尻を下げ、
「おおそうかそうか!子供の夢をできる限り
サポートしてやるのが親の務め」とばかりに
後ろから手を添えるようにして撮り上げたの
がこの映画であろうかと。

ただやっぱりハッキリ申し上げて、
商業映画のレベルには到底達していない。
素人が趣味で作ったプライベートフィルムと
断じて差し支えない。イメージ 8
正直30分もしないうちに睡魔が襲ってくる
代物なのだけど、どうもそういうことを言い
難いのは相手が14歳だからである。
子供が描いた絵にヘタクソなどと大人げな
いことを言えるはずもない。
「あら!上手にかけまちたでちゅねー!」と
精いっぱい作り笑顔で褒めてやるのが大人
としての立ち振る舞いなわけで。
14歳の少年が映画を撮った。
そのチャレンジと、それを力いっぱい支えたイメージ 9
大人たちの頑張りは言うまでもなく素晴らし
いこと。でも、折角出来上がった作品を
「どうだウチの子が撮ったんだぞ!
スゲーだろ?天才だろ?」と想いが昂じて
一般公開に乗せてしまう親バカぶりと、
「14歳が撮った」をエクスキューズにして
しっかり稼いでしまおうという映画屋達の
節操のなさに思わず引いた。

もっとも、本作の製作から4年も過ぎ
ナタンくんは現在18歳。イメージ 10
2本目の長編"THERAPY"も撮り上げ、
コツコツとホラー映画の製作に打ち込んで
いる模様。
早熟ではないけども本物のマエストロが
いずれ羽ばたく日が来ることを楽しみに
待ちたいと思う。

次はスラッシャーですか。そうですか♪

映画『セブン・シスターズ』~月曜日はウンジャラゲ

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原題 WHAT HAPPENED TO MONDAY?イメージ 1
製作年度 2017年
製作国 イギリス、フランス、ベルギー
製作 ネクサス・ファクトリー
    ラファエラ・プロダクションズ
    ヴァンドーム・ピクチャーズ他
国内配給 コピアポア・フィルム
日本公開 2017年10月21日
上映時間 123分

監督 トミー・ウィルコラ
脚本 ケリー・ウィリアムスン
    マックス・ボトキン
製作総指揮 ガイ・ストーデル
    ティエリー・デスミシェル
製作 ラファエラ・デ・ラウレンティス
    ファブリス・ジャンフェルミ
    フィリップ・ルースレット他
撮影 ホセ・ダヴィド・モンテロ
音楽 クリスティアン・ワイブ
編集 マーティン・ストルツ
美術 ジョセフ・A・ホッジス
配役 ジリアン・ホウザー
    リリアナ・トーマ
衣装 オアナ・ポーネスキュイメージ 2
出演
ノオミ・ラパス:マンデー、チューズデー、
ウェンズデー、サーズデー、フライデー、
サタデー、サンデー、カレン・セットマン
グレン・クローズ:ケイマン
ウィレム・デフォー:テレンス
マルワン・ケンザーリ:エイドリアン
クリスティアン・ルーベック:ジョー
キャシー・クレア:ザキーア

鑑賞 2018年5月2日
Blu-ray(発売元:ハピネット)字幕
★★★★★

時は2073年。
世界人口が遂に100億を超え、
人類は逼迫する資源問題に直面していた。
先端バイオテクノロジーによる
遺伝子組み換えが為された作物で
食糧問題の解決を図ったものの、
その作物は逆に人体に影響を及ぼし、
極端な多胎妊娠が急増する結果を招く。
五つ子、六つ子も当たり前(大笑)
いよいよ拍車のかかった人口爆発を前に
ヨーロッパ連合はケイマン博士を中心にイメージ 3

「児童分配法」を施行、徹底的な人口の
管理体制を敷いた。
1家庭につき1児童。2人目以降の子供は
児童分配局に収容され、
「来たる食糧危機解決の日」まで
コールドスリープを施されることになる。
そんな中。

あるところに七つ子の女の子が産まれた。
母親は産んですぐ死亡。
唯一の身寄りはデフォーじいさん。
施設なんかに渡すもんか、絶対に。
じいさんはこの7つ子を全て自室に匿い
「1人しかいない」体で育てることにした。
1人目はマンデー。
2人目はチューズデー。
3人目はウェンズデー…
曜日に因んで名前を付け、
それぞれ自分の名前が付いた曜日に
外へ出ることができるのだ。
但し外の世界ではカレン・セットマンと
いう仮の人格を7人で装い、共有する。
それがこの世界で生きて行くための
「ルール」なのだから。イメージ 4

やがて30年が過ぎ。
もちろん姿形は似ていても、
性格が違う。ライフスタイルが違う。
「もうこんな暮らしまっぴら!」
時には溜まった鬱憤を吐き出す奴もいる。
それでもこうして生きて行くしかないんだ、
タダでさえこのところ当局に怪しまれてる
んだから…と、
奇妙な共同生活を続けていたある日。イメージ 5
最も「ルール」を重んじていた
長女のマンデーが会社に出かけたきり
消息を絶ってしまう。

「何がマンデーに起ったか?」

こ、これは!!
かなりな拾い物と言っていいのでは。
トレイラーを観た時からユニークな設定にイメージ 6
魅かれたが、いかにも設定ありきの
ハッタリでは決してなく。
巧みに練り込まれたストーリーと
辛辣なメッセージを備えた
近未来SF映画の逸品でありました。
近未来SFと言えば先んじては
ニール・ブロンカンプの『第9地区』、
『ブレードランナー2049』や
ダンカン・ジョーンズの『ミュート』等
一昔前の「ディストピア」をアップデート
したリアルな世界観を描き出していたが、
本作も同様。
ただ陰鬱なだけじゃない。
今、私たちが暮らす世界がボロボロに
使い古されたなれの果て。

聞けば本作の脚本は「ブラックリスト」
(※カードを滞納しちゃった人が載るアレ
ではなく、映画化されていない優れた脚本
の評価サイト)で上位にランクされていた
ものらしく。長いことどこの製作会社が
競り落とすのか注目されていたが、
「あの」Netflixがいつもの剛腕を振るってイメージ 7
スタートしたものらしい。
そんな企画の監督に抜擢されたのは
トミー・ウィルコラ。
ゾンビコメディ『処刑山』で一躍おバカな
ホラーマニアの喝采を浴びたノルウェーの
新鋭である。ハリウッドに招聘されての
『ヘンゼル&グレーテル』を観ても判る通り
北欧独特のヒネたユーモアを持ちつつも、
サム・ライミやピーター・ジャクソン同様
ハリウッドライクなエンタメ感覚を併せ持つ
「王道派」でもある。
今作においてはおバカなギャグはほぼ封印。
その代わりにメインストリームも裸足で逃げ
出すアクション演出の冴えに目を見張った。
正直、先日観たシャーリーズ・セロンの
『アトミック・ブロンド』よりも見応えは
遥かに上。
そしてなんと言っても主演ノオミ・ラパス
の素晴らしさ。本作の主役は当初「男」だっ
たらしいのだけど、「彼女しかいない」と
ウィルコラがラパスを推したのだとか。
7人のキャラを演じ分けた魅力たっぷりに
演じ分けた技量も去ることながら、
あれほど激しいアクションをかなりの部分
ノースタントでこなしたバカ役者っぷりにイメージ 8
ホレボレした。正直ブサイクなおばはん
程度にしか思ってなかったのだけど、
これ1本で大好きになっちゃったよ。

ウィルコラはぶっちゃけこれでスター監督
にブレイクするほどの作品をモノにしたと
言っていいと思うのだけど、
ネット配信(&日本では超限定公開)の
せいかさほど話題にはなってない模様。
まずはこれからの口コミでじわじわで評価
を上げて行くタイプの映画かと。
ウィルコラの今後のブレイクぶりが楽しみ
で仕方がないわけだが、ただその前に!
『処刑山2』のリリースは一体どうなって
おるのか??

映画『私はゾンビと歩いた!』~ジェシカに何が起ったか?

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原題 I WALKED WITH A ZOMBIEイメージ 1
製作年度 1943年
製作国 アメリカ
製作 RKO・ラジオ・ピクチャーズ 
公開 1943年8月30日
上映時間 69分
監督 ジャック・ターナー 
脚本 カート・シオドマク
    アーデル・レイ
原案 アイネズ・ウォーレス
製作 ヴァル・リュートン
撮影 J・ロイ・ハント
音楽 ロイ・ウェブ
編集 マーク・ロブソン
美術 アルバート・S・ダゴスティーノ
    ウォルター・E・ケラー
出演
フランシス・ディー:ベツィ
トム・コンウェイ:ポール
ジェームズ・エリスン:ウェズリー
エディス・バレット:ランド夫人
ジェームズ・ベル:マックスウェル医師
クリスティン・ゴードン:ジェシカ
ダービー・ジョーンズ:カラフォーイメージ 2

鑑賞 2018年5月10日
DVD「ホラー映画パーフェクトコレクション・ゾンビの世界」(発売元:コスミック出版)字幕
★★★★☆

ユニヴァーサルのクラシックモンスター
映画が10本収録で1800円(!)
という破格のDVDボックスをリリース
してくれたコスミック出版から
またまたこんなのが出ていたぞ。
「ホラー映画パーフェクトコレクション
<ゾンビの世界>」

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
を筆頭に、所謂「ロメロ以前」の
ゾンビ映画を10本収録。
ロメロ以前ということは当然肉は食わない
わけで、正直なかなか食指が伸びるもん
ではなかったのだけど、これもいい機会
かと思い、即買い。

まず題名だけは聞き覚えのあるこの1本。
『私はゾンビと歩いた!』イメージ 3

若きヤサグレ看護師のベツィは
「高時給!常夏の楽園でサクッと稼いじ
ゃおう♪」と職安の口車に乗せられて、
西インド諸島セントセバスチャン島で
就職をすることになる。
仕事はサトウキビの大農場主ホランド家の
奥方ジェシカのお世話係。
ジェシカは類稀な美貌の貴婦人だったが、
ある日熱病を患ってから中枢神経がイカ
レてしまい、自分の意思ではなにも出来
ない状態であった。
そんな環境もあってか、主人のポールは
どこか世を拗ねた風のアンニュイおやじ。
同居する異母弟ウェズリーも人はイイが
夜毎酒浸りの山口メンバー状態。
そして近隣で診療所を経営する
ランド夫人が姑モードバリバリで屋敷に
出入りしている。
なにか只ならぬ空気を感じながらも
甲斐甲斐しく夫人の世話を看るベツィで
あったが、ふとホランド家にまつわる
不穏な噂を耳にする―

『ブードゥリアン』なる珍妙な邦題でイメージ 4
リリースされていたこともあるこの映画、
正直こんなタイトルなんでユルめな
コメディの類いかと思っていたのだけど、
なかなかに趣深い詩情を感じさせる
本格ミステリーでありました。
やや火サスチックな愛憎ドラマを軸に
ヴードゥー伝承を絡めたミステリーは
シンプルながらも非常に良く練られていて、
「なにも知らないから美を感じることが
できる。夜の海が輝くのはプランクトン
の死骸が反射しているからだ」
セリフのひとつひとつに詩情や洒落が
効いている。
そして白衣の貴婦人の虚ろな佇まいや
ヴードゥーの儀式などホラー映画として
の魅力もしっかり備わっている。
殊にヴードゥーの門番カラフォーの異形っ
ぷりに戦慄至極。あの「目」はメイク?

プロデューサーのヴァル・リュートンは
前年にもジャック・ターナーと組んで
『キャットピープル』を製作したが、
この時期に彼がRKOで発表した作品群は
ホラーマニアのみならずお堅いシネフィルイメージ 5
連中にも総じて評価が高い。
そう言えばジョー・ダンテの近作
『ゾンビガール』で主人公とヒロインが出
会う劇場で掛かっていたのが本作だったが、
その趣旨がしっかりストーリーに落とし
込んであったことがこの原典を観てみて
よく分かった。
森の奥からボンボコ鳴り響く太鼓の音に、
『サンゲリア』がまさに本作を基にしてい
たと気付かされる。グログロなB級映画の
巨匠である一方で、クラシックな蘊蓄をイメージ 6
誇る理論派で
鳴らしたフルチ親分ならで
はかと。

まず。やはり「ロメロ以後」で育った身
としては、価値あるクラシックとは確かに
思うが心底面白かったとは言い難い。
ああ、肉食いてえ。

映画『レディ・プレイヤー1』~スピルバーグがやってみた!

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原題 READY PLAYER ONEイメージ 1
製作年度 2018年
製作国 アメリカ
製作 アンブリン・エンターテインメント
    ヴィレッジ・ロードショウ・ピクチャーズ
    ワーナー・ブラザース他
製作費 $175,000,000
日本公開 2018年4月20日
国内配給 ワーナー・ブラザース
上映時間 140分
監督、製作 スティーヴン・スピルバーグ
脚本、原作 アーネスト・クライン
脚本 ザック・ペン 
製作総指揮 ブルース・バーマン
    クリストファー・デファリア
    ダニエル・ルピ他
製作 ドナルド・デ・ライン
    ダン・ファラー
    クリスティ・マコスコ・クリーガー
撮影 ヤヌス・カミンスキー
音楽 アラン・シルベストリ
編集 マイケル・カーン
    サラ・ブロシャー
美術 アダム・ストックハウゼン
配役 ルーシー・ビヴァンイメージ 2
    ケイ・カワムラ他
衣装 カシア・ウォリッカ=メモーヌ
出演
タイ・シェリダン:パーシヴァル
オリヴィア・クック:アルテミス
ベン・メンデルソーン:ソレント
レナ・ウェイス:エイチ
T・J・ミラー:アイロック
サイモン・ペグ:オグデン
マーク・ライランス:ハリデー
森崎ウィン:ダイトー
フィリップ・ツァオ:ゾウ
ハナ・ジョン=ケイメン:フナール

鑑賞 2018年5月11日
仙台東宝シネマズ IMAX-3D 字幕
★★★★☆

いつの頃からか、スピルバーグの映画と
聞いてもまるで心が躍らなくなっていた。
昔は神同然の存在だったのに。
80年代はスピルバーグの天下であった。
例え自分が監督をしてなくとも、イメージ 3
いかにも子供だましの映画でも、
「スピルバーグがまたやった!」
その金看板だけで大ヒットを連発した。
私たち当時のボンクラたちはそんな
スピルバーグブランドをほぼ主食にして
育ったが、その頃はまだ「ヲタク」という
人種(?ライフスタイルと言うべきか)が
市民権を得ていなかった。
イイ年こいてアニメや怪獣の類いに夢中に
なるのは恥ずかしいことだった。
「好き」などと公言するのには、相応の
勇気が必要だったのだ。
スピルバーグの映画も志向としては
多分に「ガキくさい」ものであったが、
そこにディズニーという「良識」が介在
していたからこそ広く一般に支持をされた
のだと思う。またやがてオスカー狙いな
「ご立派」な作品に舵を切って行ったのも
こうした世間の目があったからかもしれない。

転じて現在。
日本のアニメーションを作中にフィーチャー
したタランティーノの『キル・ビル』。イメージ 4
ビデオゲームのテイストを演出に取り入れた
エドガー・ライトの『スコット・ピルグリム』。
ロボットと怪獣特撮へのオマージュに溢れた
ギレルモ・デル・トロの『パシフィック・リム』
といった作品が軒並みヒットを飛ばし、
ダンカン・ジョーンズや
ジョーダン・ヴォート・ロバーツなど
アニメ・ゲームの愛好者を公言する
若手クリエイターは後を絶たない。
現在のハリウッドで覇権を握っているのは
こうしたヲタクたちであると言っていい。
が、そんなヲタクたちの輪の中に
「ちょっとちょっと!
お前らそうやってグフグフ笑ってられんのは
いったい誰のお陰だと思ってんの?」と
御大スピルバーグが乗っかって来たのが
この『レディ・プレイヤー1』という映画で
あろうかと。

まずは、面白かった。
さすがはかつてのエンタメ王と、
お世辞や余計な色メガネ抜きでそう思う。
唯、「あの頃の」スピルバーグが帰って
きたとは私は全然思わない。イメージ 5
あの頃のスピルバーグ映画はこんな昔の
他人へのオマージュありきな映画なんかじゃ
なかった。あの頃のスピルバーグ映画は
確かにディズニーや西部劇などハリウッド
伝統のエンターテインメントに根差しては
いたものの、それ自体が燦然と光輝く
オリジナルであったはず。
こんな覇気のない、瑞々しさの欠片もない
映画はあの頃のスピルバーグなんかじゃ
決してない。
愛すべき80年代へのオマージュの数々に
自分と同年代あたりのファンはつい諸手を
挙げてしまいがちだが、自分はどうも妙な
違和感を拭いきれなかった。
なんだろ、冒頭に"JUMP"が流れたときの
サムい感じ。ガンダムが飛び出して来た時
の痛々しさ。絶えず画面の端端でフレディ
やらギャラクティカやらを一瞬だけ
チラ見せする刹那のお誂え感。
デルトロやバートンといった
ヲタ系クリエイターオマージュとは
何かが根本的に違っている。それが
年代の違いと言えばそうかもしれない。
寧ろ普段のヲタ監督だったら使えない
(そして使わない)クラスのキャラクター達イメージ 6
を、札束で顔を叩くようにして並べ立てる
オマージュぶりには軽く嫌悪すら感じる。
(唯、『ブレラン』の代替だったとは言え、
オーバールックホテルに3Dで踏み込む件は
至高の恐怖体験でありました)

そもそもこうした80sやヲタ文化が開花
した時期に、スピルバーグ自身は既に
エンターテインメントのメインストリーム
で名を馳せた成功者であったはず。
こうしたサブカルチャーへの造詣を否定は
しないが、この当時にスピルバーグが
毎夜クズ映画を見漁ったりクソゲーを
やり込んだりしたとは到底思えない。
J・J・エイブラムスが往年のスピルバーグに
オマージュを捧げた『スーパー8』があった
けども、つまりはそういうこと。
自らウンチクを語るんではなく、
既に語られるべき人なのだ。
デロリアンやTレックスの登場も
「あまりに手前味噌すぎて」
ホントは出したくなかったらしいけども、
むしろE.T.やらグレムリンやら、
インディやらジョーズやら、
それこそスピルバーグ映画の年度末棚卸し
みたいな映画だったら良かったのに。

映画『狼の血族』~やっぱり狼が好き

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原題 THE COMPANY OF WOLVESイメージ 1
製作年度 1984年
製作国 イギリス
製作 ITC
    パレス・ピクチャーズ
製作費 $2,000,000
日本配給 ヘラルド・エース
日本公開 1985年6月8日
上映時間 95分

監督、脚本 ニール・ジョーダン
脚本、原作 アンジェラ・カーター 
製作総指揮 ニック・パウエル
    スティーヴン・ウーリー
製作 クリス・ブラウン
撮影 ブライアン・ロフタス
音楽 ジョージ・フェントン
編集 ロドニー・ホーランド
美術 アントン・ファースト
配役 スージー・フィギス
衣装 エリザベス・ウォーラー
特殊メイク クリストファー・タッカー
出演
サラ・パターソン:ロザリン
アンジェラ・ランズベリー:おばあさんイメージ 2
デヴィッド・ワーナー:おとうさん
ミーシャ・バギース:狩人
トゥシー・シルバーグ:おかあさん
グレアム・クローデン:老牧師
シェーン・ジョンストン:マセガキ
ブライアン・グローヴァ―:マセガキの父
悪魔:テレンス・スタンプ

鑑賞 2018年5月17日
DVD(発売元:東北新社)字幕
★★★★★

世の中には所謂
「イヌ派」「ネコ派」というのがあって。
たかだか動物の好き嫌いでヒトを
真っ二つに区分けしてしまうのは
血液型よりも乱暴なこととは思うけども、
(どっちも好き、なんて人もいるだろうし)
それでも「イヌが好き」と言う人と
「ネコが好き」と言う人の間には
厳然たる差があるような気がする。
イヌは従順で人懐こい。
ネコは自由奔放で付かず離れず。
どちらもその人の暮らしぶりや人間関係のイメージ 3
志向性が反映されているように思う。
じゃあ、「狼」はどうなんだって話です。

さて本作『狼の血族』は84年の製作。
「赤ずきん」をモチーフに
「本当は恐ろしいグリム童話」宜しく
多分にエログロな解釈を盛り込んで
描かれたダーク・ファンタジー作品。
監督は『クライング・ゲーム』、
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』
のニール・ジョーダン。
趣たっぷりなストーリーテリングや
活き活きとした市井の人々の描きぶり、
独創的な画作りなど、監督第2作にして
後年の異才ぶりが十分に見て取れる。
殊に舞台となる山間の小さな集落と周辺に
広がる森の意匠がとにかく素晴らしく。
(プロダクションデザインは
バートン版『バットマン』でゴッサムシティ
を手掛けた天才アントン・ファーストだ)
当時『ハウリング』や『狼男アメリカン』に
列した「狼男映画」の括りで紹介されたが、
特殊メイクによる「変身シーン」がイメージ 4
大々的にフィーチャーされた。
正直今の目で見るとクオリティとしては
前2作より数段劣り、作品の雰囲気からも
浮いてしまっている感がなくもない。
ただこれは当時のハヤリに嫌々合わせたと
いうよりは、若かりしジョーダン監督なら
ではのサービス精神と言ったところかと。

現在でも難解な作品として口端に上がる
ことがある本作。
狼は「性衝動」。
赤いショールは「貞節」。
森の小道は「成長過程」。
比喩的な表現が多く、幾多のエピソードも
今一つ釈然としない「童話仕立て」なので、
自分も初鑑賞は高校生の頃だったが
さっぱり意味が分からなかった。
それでも蠱惑的なファンタジー世界と
主演サラ・パターソンの悪魔的
(※小悪魔ではない)魅力に惹かれ
幾度となく鑑賞を重ねてきたが、
その度毎にあれこれと新たな解釈が得られ、
物語の深みが増して行くのがまた面白い。
(そういう意味ではクローネンバーグのイメージ 5
『ヴィデオドローム』やキム・ジウンの
『箪笥』も同様である)

少女ロザリンにとっての狼は
性の気づきだけではなく、自分と言う
個のパーソナリティを見出した瞬間。
大人たちの言うとおりに
「イイ子」でなきゃいけないのに、
つい反抗してしまう。ハミ出してしまう。
道から外れてはいけないよ。
悪い狼に喰われてしまうから。
大人たちはなにかにつけてそう言うけど、
あたしはそうは思わない。
みんなが通る道から外に踏み出して、
森の奥や樹の上、そしてお山の向こうに
あたしの求めるものがきっとある。
"PISSED"(ハミダシ者)と後ろ指をさされ、
部屋に籠るのはもうやめよう。
狼だけが行くことのできる世界へ。
ぬいぐるみもアンティークの家具もなぎ倒し、
鬱蒼とした森の中を駆け抜ける狼の姿に
蓋し共感のため息が出た。

因みに自分はネコアレルギーのネコ派です。

映画『レイダース!』~俺たちに聖櫃(アーク)はない

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原題 RAIDERS! THE STORY OF THE GREATEST FUN FILM EVER MADE
製作年度 2015年イメージ 1
製作国 アメリカ
製作 ジェレミー・クーン・プロダクションズ
上映時間 106分
監督、脚本、製作 ジェレミー・クーン
    ティム・スカウゼン
原作 アラン・アイゼンシュトック
撮影 ティム・アーウィン
    エド・スティーヴンソン
音楽 アントン・サンコー
編集 バリー・ポルターマン他
衣装 トッド・ドイル
出演
クリス・ストロンポロス:本人
エリック・ザーラ:本人
ジェイソン・ラム:本人
アンジェラ・ロドリゲス:本人
アーネスト・クライン:本人
ハリー・J・ノウルズ:本人
イーライ・ロス:本人
ジョン・リス・デイヴィス:本人

鑑賞 2018年5月19日
ネット配信(ネットフリックス)字幕
★★★★★イメージ 2

『レイダース』の完全再現をした
ファンムービーがあることは聞いていた。
そしてそれがヤケに出来が良いということも。
ただなんだかんだ所詮はファンムービー。
お目にかかることなどないと思ってたし、
殊更観たいとも思っていなかった。

1981年の夏。
ミシシッピ州に住む2人の少年が
映画『レイダース 失われた聖櫃』に
夢中になり、これを自分達の手で
リメイクしようと思い立った。
当時2人は11歳。
金はない。技術もない。
並の子供なら1度真似をしただけでその
無謀を悟り、すぐに投げ出していたはず。
が、彼らはそうじゃなかった。
ビデオソフトもない時代に一度映画館で
見ただけの記憶から絵コンテを起こし、
なけなしの小遣いで小道具や衣装を買い
揃え家のあちこちにセットをこしらえ、
中で火を焚いてはボヤ騒ぎを起こしたりイメージ 3
カースタントの真似事で大怪我を負ったり
しながらも、1つ1つ。大好きなシーンを
フィルムに収めて行った。
目標は全てのシーンを完全再現すること。
それからずっと、彼らは青春の全てを
『レイダース』のリメイクに費やした。
彼らの熱意に周囲の家族や友人達も製作
に関わることとなり、撮影は延々と続いた。
ところが彼らの撮影は頓挫を迎える。
過酷な撮影の日々に疲れ果て、
また「こんなことになんの意味がある?」
長じて行くに従って生まれる当然の疑問。
そしてそれぞれの環境も変わって行き、
友情は次第に疎遠なものとなって行く。
とある事件がきっかけとなり、
彼らはフィルムを回すことを止めてしまう。

クリス・ストロンポロスと
エリック・ザーラの2人による
"RAIDERS! : THE ADAPTATION"は
1989年に1本のVHSに収められたが、
それは完成品ではなかった。
全てのシーンの完全再現を目指していたが、
あと1つのシーンが未撮影のままだった。
それがあの飛行場のシーン。イメージ 4
ぐるぐると回る輸送艇の下で
インディとナチの大男が大立ち回りを演じ、
激しい銃撃戦の果てに輸送艇が大爆発、
一面が火の海となる凄まじいシーンである。
複雑な構成に激しいアクション、
大掛かりな装置や危険な特殊効果を要し、
金も手間もとんでもなくかかる。
とても素人の自主映画で再現するのは
不可能と思われるシーンだ。

一度は袂を分かった2人だったが、イメージ 5
その情熱は全く冷めてはいなかった。
十数年後、不思議な縁に導かれ
彼らはまた冒険の世界に戻って来る。
本作はかつての少年たちが再びカメラを
執り、最後のシーンを撮り上げるまでの
姿を追ったドキュメンタリー作品。

もう、参りました。号泣モノです。
素人がなぜそこまでやる?
劣化版を作るのにいったい何の意味が?イメージ 6
そんな言われようはもっともかも知れない
けど、それでも撮影をやめようとしない、
この映画を最後まで作り上げるんだという
彼らの思いが一体どこから来るのかが
このドキュメンタリーで語られる。
それはただ好きだからとか楽しいからとか
言う次元ではない。
これをやらないではいられない。
これをやめたら自分じゃなくなる。
自分なりの理想とアイデンティティをイメージ 7
追い求める旅。それが2人にとっての
"ADAPTATION"だったんであろうかと。
大人になり、世知辛い現実に圧し潰されそう
になった2人だったが、その時彼らの夢は
もう彼らだけのものではなくなっていた。
独自のネットワークで"ADAPTATION"の
VHSを手にした世界中のヲタクたちが
「このままやめるなんて勿体ない!」
アツくその後押しをした。
そのヲタクの中にかのイーライ・ロスがイメージ 8
いたわけで(笑)ファンイベントや上映会に
このVHSを持ち込んでは製作資金を募った
りもしたのだとか。
うう、イーライ(涙)なんてイイ奴なんだ。
惚れちゃいそうだよ。
奥さんやお母さん、弟、同僚や上司たちの
あったかい気持ちも沁みることこの上なく。

かく言う自分も大学で映画研究会なるものイメージ 9
に入って自主映画を撮っていたのだけど、
まず最初に撮ったのは『レイダース』に
オマージュを捧げたトレジャーアドベンチャ
ーでありました。
正味30分ほどの8ミリ作品。
悲しいくらい金もセンスもなくて、
自転車のカーチェイスやら水鉄砲の銃撃戦
やら今見るとホントに赤面モノなのだけど、
その頃一緒に映画を撮っていた仲間たち。
撮影の場所や沢山の道具を快く貸してくれた
バイト先のオーナー、学校の職員さん。
製作費が足らず、仕送りを前倒しで(渋々)
送ってくれた母親殿。
悪天候に泣かされ、次々と壊れる小道具、
主演女優は部長とデキて途中から別人み
たいにケバくなっちゃうし、主演男優はやた
らと撮影をすっぽかす。
他の部員とケンカをしながらのアフレコ。
そして一人で黙々とこなす編集作業。
ホントにいろいろと大変なことの連続でイメージ 10
思い通りになることなんか殆どなかったけど、
それでも映画を作るのはとても楽しかった。
この上なく充実した日々だった。

こうなると"THE ADAPTATION"の
本編を是非とも観てみたいのだけど、
リリースはしないのかなあ。
スピルバーグがまた手掛けるとか言う噂の
「リブート」の方はどうでもいいからさ。

映画『スリーピングビューティー:眠り姫と悪魔の館』~接吻は破滅の味

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原題 THE CURSE OF SLEEPING BEAUTYイメージ 1
製作年度 2016年
製作国 アメリカ
製作 2Bフィルムズ
 ブライア・ローズ・プロダクションズ
 ネクサス・モーションピクチャー・カンパニー
国内配給 日活
日本公開 2017年12月13日(DVDスルー)
上映時間 89分

監督、脚本、製作 ピアリー・レジナルド・テオ 
脚本 ジョシュ・ナドラー
原作 エヴァレット・ハートソー(コミック)
原案 ジェイコブ&ウィルヘルム・グリム
製作総指揮 ニコラス・ドナマイヤー
    ダニー・A・アベッカイザー
    バリー・ゴードン他
製作 イハド・ブライバーグ他
撮影 クリストファー・C・ピアソン
音楽 スコット・グラスゴー
編集 ダミアン・ドラゴ
美術 アレッサンドロ・マルヴェリ
配役 ナンシー・メイヤー
衣装 ジャクリーン・ゴーナーイメージ 2
出演
イーサン・ペック:トマス
インディア・アイズリー:ブライア・ローズ
ナタリー・ホール:リンダ
ブルース・デイヴィソン:リチャード
ジェームズ・アダム・リム:ダニエル
スコット・アラン・スミス:ビリングス

鑑賞 2018年5月22日
DVD(発売元:インターフィルム)字幕
★★★☆☆

別にグリムつながりというわけじゃないの
だけど、「赤ずきん」の次に手に取ったのは
「眠れる森の美女」。
あんまり評判良くないのは知ってたけど、
なんとなく絵ヅラが気になってたので
鑑賞に至る。

主人公のトマス・カイザーはパッと見
スポーツ系の好青年なのだけど、
その実はネクラの引きこもり系。
パーティや合コンに誘われても全くノらず、
部屋で絵ばかり描いている。イメージ 3
このところトマスは妙な夢に悩まされていた。
どこかの砂漠に寝台が置かれてあり、
そこで神秘的な美女が眠っている。
近寄りキスをしようとした途端、
ぐおおと気味の悪い屋敷に引き寄せられ、
そこで目が覚める。
ちぇ、もうちょっとだったのに。
いつもこうなんだよな。

そんな折、トマスに思いもよらぬ遺産が
転がり込む。
会ったこともない叔父が自殺を遂げ、
その古い家を相続することになったのだ。
速攻売る気満々でカイザー邸へ向かう
トマスであったが、その家と言うのがあの
夢で見たオバケ屋敷だったんで超ビックリ。
遺言状に曰く、
「カイザーの血を引くお前にこの家を譲る。
が、頼むから地下室にだけは行くなよ。
ぜっったいに行くなよ!
えーそれってフリですよね(笑)
ということでトマスは鼻歌とか謳いながら
地下室へと降りて行く。

果たしてそこで見たものとは…??イメージ 6

原題は
"THE CURSE OF SLEEPING BEAUTY"
「眠り姫の呪い」。
なんだか大昔のホラー映画みたいだなあと
思ってたら案の定、
「眠り姫の正体」をミステリーに用いつつも
ハッタリとコケ脅しで場を繋ぐ、
凡百のオバケ屋敷ホラーでありました。
まずは評判通り、確かにあまり誉められた
出来ではない。
新作棚の下の方に一瞬だけ並んでは速攻
で消えて行くモックバスターの類いと言ってイメージ 7
差し支えないのだけど、それでもどこか嫌い
になれないダメさ加減、かなり指向性の強い
コダワリが感じられる一品でありました。

監督のピアリー・レジナルド・テオは
シンガポール出身の現在39歳。
近影→からは結構なコジらせっぷりが
窺えるが、そのフィルモグラフィーを眺める
『デビルバスターズ』、『SAW:レイザー』
『ウィッチヴィル深紅の女王と戦士たち』と
見事に地雷畑を耕して来たヒト。
ぶっちゃけこの方面からブレイクした人と
いうのは近年記憶にないけども、
それでもそこらのクズ映画屋と十羽一絡げ
に括ることのできない才気をそれなりに
持ち合わせているような気がする。イメージ 8
世界観はどこかデル・トロやロブ・ゾンビに
通じるものがあるし、同年代でマレーシアか
ら出てきたジェームズ・ワンにも意識をする
部分はあるでしょう。ここから実績を積んで、
優秀な製作者やスタッフに恵まれれば
化ける可能性もあり得るかと。

主演のイーサン・ペックはお察しの通り
名優グレゴリー・ペックの孫。
筋骨隆々としたナイスガイぶりから
お祖父さんの血は確かに窺えるが、イメージ 4
ちょっとこの役はミスキャストだったか。
アクション映画とかラブコメディあたりに
活路を見出すべきかと。
眠り姫に扮するインディア・アイズリーは
オリヴィア・ハッセーの娘さん
(でもパパは布施明に非ず)。
日本アニメの実写化『KITE』で鮮烈に脚光
を浴び、「世界の最も美しい顔100人」に
ランクもされたが、どうもクロエ・モレッツ
の二番煎じと言った感じでメジャーになり
切れない。本作に於いてもタイトルロールとイメージ 5
しての存在感を十分に示していたが、
誰ぞが言っていた「嬢メタルのPV」も
言い得て妙(笑)

口ポカン系のラストも割と好き。
王子様の口づけで美女が目覚めるという
のは太古より罷り通ってきたおとぎ話の
常道だが、やはり所詮は都合のいい作り話
でしかない。
どこかの知事やアイドル歌手のように
妙なカン違いをしてキスを迫ればその先に
とんでもない地獄が待っていたりする。
そう言ったバカな男の哀しさを、
実はこの映画は訴えて…たワケねえか。
ごめん。

映画『西遊記2~妖怪の逆襲~』~香港のスピルバーグとCGIの満漢全席

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原題 西遊2 伏妖篇イメージ 1
英語題 "JOURNEY TO THE WEST 2 :
THE DEMONS STRIKE BACK"
製作年度 2017年
製作国 中華人民共和国
製作 スター・オーバーシーズ
    アリババ・ピクチャーズ・グループ
    チャイナ・フィルム・グループ
製作予算 $63,000,000
公開 2017年9月8日
日本配給 日活
上映時間 109分

監督、編集 ツイ・ハーク 
脚本、製作 チャウ・シンチー
脚本 リー・シーチュン
撮影 チョ・スンファイ
音楽 レイモンド・ウォン
編集 リー・リン
    ジェイソン・ツェン
美術 赤塚 佳仁
衣装 リー・ピックワン
出演
クリス・ウー:三蔵法師
ケニー・リン:孫悟空イメージ 2
ヤオ・チェン:九宮真人
ジェリー・リン:小善
ヤン・イーウェイ:猪八戒
メンケ・バーテル:沙悟浄
クローディア・ウォン:蜘蛛女
バオ・ベイアル:比丘国王

鑑賞 2018年5月26日
Blu-ray(発売元:ハピネット)字幕
★★★★☆

『西遊記~はじまりのはじまり』は
中国映画界随一のヒットメイカー、
チャウ・シンチーの健在ぶりを示した
一本であったが、その昔のまた昔。
"ONCE UPON A TIME IN CHINA"
「香港のスピルバーグ」と呼ばれた男がいた。
その名はツイ・ハーク。
80年代の初頭から『蜀山奇傳』や
『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』
など中国古来の伝承譚を大掛かりなSFXで
映像化したファンタジー・アクションで
一世を風靡し、更には『スウォーズマン』、
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・イメージ 3
チャイナ』のシリーズ等で武侠時代劇
(古装片)というジャンルを打ち立てた。
またジョン・ウーの『男たちの挽歌』に
端を発する香港ノワールにも製作者として
大きく関与している。つまりは現在に至る
中国の娯楽映画のトレンドを悉く作り出し
て来た人と言っていい。

そんな香港のスピルバーグも
かつての朋友ジョン・ウーの後を追って
ハリウッドに渡るもまるで鳴かず飛ばず。
また香港返還に伴う映画産業の縮小傾向も
あってか暫く低迷を続けるが、
(元々出来不出来の極端な人ではあった)
'10年の『王朝の陰謀:判事ディーと人体
発火怪奇事件』で鮮烈な再ブレイク。
「判事ディー」はシリーズ化され、
久々ジェット・リーを主演に迎えた(和解?)
『ドラゴンゲート』も大ヒットを収め、
すっかり第一線に返り咲いた感。
そのカムバックを後押ししたのは他ならぬ、
CGIの普及にあったんじゃないかと私は思う。
中国人はとにかくケバケバしいのが大好き
である。
表現も笑っちゃうくらい大袈裟なものを好む。イメージ 4
だから『ウォークラフト』みたいな映画が
中国「だけで」ヒットを飛ばしたり、
『トランスフォーマー』のシリーズは
中国市場の「ためだけに」作られ続ける。
そんな中、かつてビカビカのSFXで
ホラとハッタリをてんこ盛りにしたような
ファンタジー活劇ばかりを作っていた
香港のスピルバーグにとって、
CGIの出現と言うのは恵みの雨どころか
天啓ですらあったかと。

思えばナンセンスなコメディに
大ボラじみたCG表現を組み入れることで
「ありえねー」面白さを生み出したのが
チャウ・シンチーの『少林サッカー』だった。
そんな大ボラ界新旧の巨匠が出会うのは
必然であったのかもしれない。
前作『~はじまりのはじまり』は
若手世代の筆頭株デレク・クォックの
新しい感性を取り入れながら、それでいて
全くブレのないシンチー節が全開の一本だっ
たけども、今回は完全にハーク師匠の映画。
派手で、アホらしくて、そして意味不明。
(↑どれも誉めてます)イメージ 5
中盤に至るストーリーの迷走ぶりについ
睡魔が襲ってくるが、それも毎度のこと。
クライマックスの想像を絶する大ボラの
盛りようにたまらず笑いが漏れる。
あ。これが「ありえねー!」を超えた
「おったまげー!」なワケか(笑)
幼い頃、絵本の「そんごくう」を初めて
手にした時の興奮がありありと蘇ってきた。
扇子の一振りで山一面が火の海と化す。
抜いた毛の一本一本が小さな猿になり、
地の果てと思われたがお釈迦様の
掌の上を飛んでいたに過ぎないという恐怖。
そしてこのイマジネーションの奔流こそが
中国娯楽の神髄なのだと思い知る。
願わくば今調子に乗ってるハーク師匠に
「ドラゴンボール」の
実写映画化を手掛けてもらえたら、
わしゃあもう死んでもいいかもしれない。
(ファンは怒るだろうけどさ)

映画『ブレード/刀』~男はなんのために刀を取る

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原題 刀イメージ 1
製作年度 1995年
製作国 香港
製作 ゴールデン・ハーヴェスト
公開 1998年1月24日
日本配給 K2エンターテインメント
上映時間 105分

監督、脚本、製作、編集 ツイ・ハーク  
脚本 ホイ・コアン
製作総指揮 レイモンド・チョウ
撮影 ケン・コクマン
    シン・ガム
音楽 レイモンド・ウォン
編集 カン・マ
美術 ウィリアム・チャン
    アルフレッド・ヤウ他
武術指導 ユン・ブン
    トン・ワイ他
出演
ウィン・ツァオ:テンゴン
ソニー・スー:リン
チャン・ホー:チュタオ
ウェイ・ティンチー:刀匠
ヴァレリー・チャウ:藤鞠の女イメージ 2
マイケル・ツェー:盗賊の頭目
シャン・シンシン:ルン

鑑賞 2018年5月31日
DVD(発売元:東芝デジタルフロンティア)
字幕
★★★★★

西遊記のついでに、
「香港のスピルバーグ」の映画をもう一本。

『刀』 1995年の作品。

むかしむかし。
高名な刀匠の下にテンゴンという若者がいた。
生まれてすぐ刀匠に拾われてから
ずっと実直に修行に励んでいたが、
ある日。実の父親がある男との戦いの果て
に無残な死を遂げたことを知る。
そのある男とは全身を刺青で飾った
剣の達人。空を飛び、凄まじい速さで
二本の刀を振るうのだと言う。イメージ 3
復讐の念を募らせるテンゴンであったが、
そんなテンゴンを刀匠は厳しく諫める。
刀鍛冶は刀を作るのみ。諍いはご法度。
が、闘志を抑えきれないテンゴンは
ヤクザな猟師の一団との抗争に巻き込まれ、
片手を失った挙句に崖の上から転落してし
まう。
辛くも一命を取り留め、身寄りのない
少女の家で静養をするテンゴンであったが、
その前にあの刺青の男が姿を現す―

なにかと微妙な評価の多い本作。
と言うのも、妙に意味不明なんである。
もっともストーリー展開がカオス気味なのは
ツイ・ハーク作品の特徴ではあったけども、
『ワンチャイ』や『スウォーズマン』の
ような「荒唐無稽」な娯楽活劇とは一線を
引いたかのような仕上がり。
アート寄りというかミニシアター風というか、
ツンと取り澄まして含みを持たせたような
語り口で、取っつきづらいことこの上ない。
思うに。ハーク師匠としては
「おまいらはまだホンマモンの武侠を知らん」
自らが再燃させた武侠映画のブームにイメージ 4
パイオニアならではの楔を打ち込んでおこう
とか、そんな思いがあったのかもしれない。
敬愛して止まない「武侠映画の祖」
キン・フー作品への回帰、もしくは
当時鮮烈に登場したウォン・カーウァイに
対する対抗心などもあったかもしれない。
ホントのところは分からないが、
かなりエンタメ性を無視した作りに当時
香港の観客には至って不評であったらしく、
かく言う自分も「ワンチャイの監督」と
いうことで手に取っただけに当初は
「ハズレを引いた」感がハンパなかった。

終始アンニュイなモノローグで物語を紡ぐ
ヒロインの電波ぶりには「こいつなんなの?」
と誰もが口を揃えるところ。
本作は元々は『片腕必殺剣』のリメイクで、
ヒロインのキャラもオリジナルに基づくもの
らしいのだけど、この「お嬢様」の存在が
この映画を「面白くない」方向に作用してい
るのは間違いない。
勝手な言動でストイックな剣士達を翻弄し
ては状況をややこしくかき回し、イメージ 5
挙句の果てに主人公は右腕を失ってしまう。

残されたのは左手一本と
半分に折れた刀、焼け焦げた剣の教則本。
なにもかにも中途半端な自分に
剣を持つ資格などない。
ましてや父の仇など、討てるはずもない。
すっかり戦う意思を失ってしまった剣士だが、
街で日銭を稼いでいた際に因縁の相手が
すぐ近くにいることを知る。
そして盗賊団に家が襲撃されたことを切欠に
再び剣を手に取ることになる。
このままじゃいけない。
戦いから逃げてばかりじゃなにも守れない。
暮らしも。大事な人も。そして自分自身も。
もがき苦しみながら、文字通り血の滲む修練
の果てに「片腕高速回転剣法」を会得する。
ずっぱり斬られた甕からざばざば流れる水。
「もしやオレ、やれんじゃねえの?」
自らの限りない「力」に気付いた瞬間。
ここにビリビリと来ない男はいない。

ここからまた暫し物語は右往左往するのだイメージ 6
ど、クライマックス「宿命の地」に至っての
ラストバトルは武侠映画史上でも一、二を
争う名剣撃シーン。
主演のウィン・ツァオ(チウ・マンチェク)は
元中国武術大会剣術部門のチャンピオンで、
ジェット・リーの後継として「ワンチャイ」
シリーズの黄飛鴻役に起用された男。
対する「刺青の男」に扮するは
『天地大乱』の大師や『鬼脚』でお馴染みの
名悪役ション・シンシン。役者だけではなく
アクション振付も手掛ける本格派。
名手二人によるタイマン勝負は中国武術
映画のまさに「華」と言っていい。
作品全体としては確かにバランスが悪く
途中途中ものすごく退屈してしまうのだけど、
それでもこの素晴らしい剣撃シーン見たさに
何度も手に取ってしまう。
と言うか、序盤中盤がえらく鬱屈として
イライラさせられるから、最後のブチかまし
っぷりが殊更映えるのだとも言える。

前にタランティーノはこの映画を
「ジャンル映画の詩的な美学を再構築した」
と高く評価していたけども、
確かにタランティーノのリベンジ劇とは
相通じるものがあるかもしれない。
つか、単に片腕好きという気もするが。
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